インド市場に食品を輸出する際、最初の関門となるのがFSSAI認可です。FSSAI(Food Safety and Standards Authority of India)は、インド食品安全基準局の略称で、インドにおけるすべての食品ビジネスを規制する政府機関です。
14.6億人を超える巨大市場であるインドで食品ビジネスを展開するためには、このFSSAI認可の取得が法的に義務付けられています。FSSAI認可は単なる許可証ではありません。インド国内で食品の製造、販売、輸入を行うための「パスポート」とも言える重要な資格なのです。

2025年現在、インド政府はFSSAI認可プロセスをオンライン化し、以前より取得しやすくなりました。しかし、日本企業にとっては言語や制度の違いから、依然としてハードルが高いのが現状です。
この記事では、日本の食品メーカーがインド市場に参入するために必要なFSSAI認可取得の最新プロセスを、実務経験に基づいて詳しく解説します。
FSSAI認可の種類と選び方
FSSAI認可には主に3つの種類があり、ビジネスの規模や性質によって申請すべき種類が異なります。適切な種類を選ばないと、余計な費用や時間がかかるため、最初に自社に合った認可タイプを見極めることが重要です。
インドの食品安全基準法によると、FSSAI認可は以下の3種類に分類されます。
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FSSAI基本登録(Basic Registration):年間売上高が120万ルピー(12 lakh)未満の小規模食品事業者向け
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FSSAI州ライセンス(State License):年間売上高が120万ルピー以上、2,000万ルピー(20 crore)未満の中規模食品事業者向け
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FSSAIセントラルライセンス(Central License):年間売上高が2,000万ルピー以上の大規模食品事業者、複数州で事業を行う企業、または食品輸入業者向け
日本から食品を輸出する企業は、原則として「FSSAIセントラルライセンス」の取得が必要となります。これは、輸入食品を扱う場合は売上規模に関わらず中央ライセンスが要求されるためです。
ただし、インド国内に現地法人や支店を設立し、そこから輸入・販売を行う場合は、その法人の売上規模や事業範囲によって州ライセンスで済むケースもあります。
特に注意すべきは、複数の州にまたがってビジネスを展開する場合や輸入食品を扱う場合は、売上規模に関係なくセントラルライセンスが必要になる点です。実際に、私が支援した日本の中小食品メーカーも、当初は州ライセンスでの申請を検討していましたが、輸入食品を扱うためセントラルライセンスへの変更を余儀なくされ、申請をやり直すことになりました。

FSSAI認可取得の具体的な手続きフロー
FSSAI認可取得の流れは複雑ですが、基本的なステップを押さえておけば迷うことはありません。ここでは、2025年現在の最新プロセスを、実際の手続き順に沿って解説します。
Step 1: オンライン申請アカウントの作成
まず、FSSAIの公式システム「FoSCoS(Food Safety Compliance System)」でアカウントを作成します。会社情報、代表者情報、連絡先を入力し、認証コードを受信するためのメールアドレスと携帯電話番号を登録します。これらはログインや公式通知の受け取りに必須となるため、確実に管理できるものを設定しましょう。
Step 2: 必要書類の準備と提出
次に、申請に必要な書類を揃えてオンライン提出します。2025年現在、セントラルライセンス(輸入業者向け)で一般的に求められる主な書類は以下の通りです。
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会社の登記証明書(Certificate of Incorporation、日本の登記簿謄本に相当)
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取締役/パートナー/所有者のIDと住所証明(パスポートや運転免許証など)
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事業所の所在地証明(賃貸契約書や電気料金明細など)
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食品カテゴリーに関する詳細情報(FSSAI規定のカテゴリーコードに沿った記載が必須)
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製造プロセスのフロー図(自社製造の場合)
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水質検査報告書(飲料水・製造用水を使用する場合)
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地方自治体からの許可証やNOC(No Objection Certificate)
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食品安全管理計画(Food Safety Management System、HACCP等が望ましい)
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日本から輸入する食品の場合:原産国での認証や検査証明書(ISO 17025準拠の成分分析結果など)
提出書類はすべて英語またはヒンディー語で作成する必要があり、日本語の書類は公式翻訳を経て添付します。

Step 3: 申請料の支払い
書類準備が完了したら、オンラインポータル(FoSCoS)から申請料を支払います。2025年現在、FSSAIセントラルライセンスの申請料は食品カテゴリーや事業規模にもよりますが、基本的に7,500ルピーに設定されています(例:乳製品や肉製品などカテゴリーごとに異なる)。
支払いはクレジットカード、デビットカード、ネットバンキングなどで行えます。支払い完了後に発行される申請番号(Application ID)は、進捗確認や問い合わせ時に必須となるため、大切に保管しておきましょう。
Step 4: 書類審査と追加情報の提供
申請後、FSSAI当局による一次書類審査が行われます。不備や追加資料が必要な場合は、登録したメールアドレスやポータルを通じて通知が届きます。
この段階での対応スピードが、認可取得までの所要期間に大きく影響します。遅れると審査が差し戻しとなり、数週間〜数か月の遅延につながることもあるため、通知があった場合は迅速に対応することが重要です。
Step 5: 現地検査(必要な場合)
書類審査に問題がなければ、FSSAI担当官による現地検査(Inspection)が行われることがあります。
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インド国内で製造を行う場合:製造施設に立ち入り、衛生状態・食品安全管理システムを確認。
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輸入食品のみを扱う場合:主に倉庫や保管施設が対象となり、保管条件や物流体制がチェックされます。
検査結果に基づいて改善指示が出る場合もあるため、事前にHACCPやISO 22000等の衛生管理基準を整備しておくことが望まれます。
Step 6: 認可の発行
すべての要件を満たしていると判断されれば、FSSAIライセンスが発行されます。ライセンスはオンラインポータルからダウンロード可能で、登録住所へ郵送される場合もあります。
有効期間は1〜5年から選択可能で、期限満了前に更新手続きを行う必要があります。更新を怠ると無効扱いとなり、再申請が必要になるため注意が必要です。

FSSAI認可取得の際によくある課題と解決策
FSSAI認可取得プロセスでは、多くの日本企業が共通の課題に直面します。これらの課題を事前に把握し、適切な対策を講じることで、スムーズな認可取得が可能になります。
言語の壁
申請書類やコミュニケーションは主に英語またはヒンディー語で行われるため、言語の壁が大きな障害となります。
この課題に対しては、インドビジネスに精通した翻訳者や代行サービスを利用することが効果的です。SoJapanのようなインド専門の支援会社を活用することで、言語面での障壁を大幅に軽減できます。
書類の不備・不足
必要書類の理解不足や準備不足により、申請が差し戻されるケースが非常に多いです。
対策としては、申請前に専門家によるプレチェックを受けることをお勧めします。また、インド当局とのやり取りの際は、常に提出書類のリストと提出状況を管理する担当者を決めておくことが重要です。

申請後の対応遅延
FSSAI当局からの追加情報要求や質問に対する対応が遅れると、認可プロセス全体が大幅に遅延します。
これを防ぐには、申請後も定期的にオンラインポータルをチェックし、登録したメールアドレスを毎日確認する習慣をつけましょう。また、インド現地に信頼できる担当者やパートナーを置くことで、迅速な対応が可能になります。
製品ラベルの要件対応
インドの食品ラベル表示規制は非常に厳格で、日本の基準とは異なる点が多々あります。
対策としては、申請前にインドの食品ラベル規制に詳しい専門家にラベルデザインの確認を依頼することをお勧めします。特に原材料表示、栄養成分表示、アレルギー情報などは重点的にチェックが必要です。
更新手続きの遅延
FSSAI認可の有効期限切れに気づかず、更新手続きが遅れるケースも少なくありません。
これを防ぐには、認可取得後すぐに更新時期をカレンダーに登録し、期限の3ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。更新手続きは新規申請よりも簡略化されていますが、十分な余裕を持って対応することが重要です。
2025年最新のFSSAI規制動向と注意点
インドの食品規制は頻繁に更新されるため、最新動向を把握しておくことが重要です。2025年現在の注目すべき規制動向と日本企業が特に注意すべきポイントを紹介します。
オンライン申請プロセスの完全デジタル化
2025年現在、オンライン申請システムが整備されており、書類提出から認可取得までオンラインで完結することができます。これにより申請から認可取得までの期間が大幅に短縮されています。
ただし、システムの不具合や一時的なダウンタイムも報告されているため、申請期限に余裕を持って対応することをお勧めします。
健康・機能性食品に対する規制強化
健康食品、サプリメント、機能性食品に対する規制が強化されています。特に「健康効果」を謳う製品については、科学的根拠の提出が厳格化されました。
日本の機能性表示食品やトクホ製品をインドに輸出する場合は、表示内容の見直しや追加試験データの準備が必要になる可能性があります。
包装材に関する新規制
プラスチック包装材の使用制限や環境に配慮した包装材の使用促進など、食品包装に関する規制が強化されています。
日本から輸出する際は、インドの最新包装規制に適合しているか確認し、必要に応じて包装材の変更や適合証明書の準備が必要です。
輸入食品の検査強化
2025年からインド各主要港での輸入食品検査が強化され、特に初回輸入時の検査が厳格化されています。
初回輸入時には検査に時間がかかることを想定し、納期設定に余裕を持たせることが重要です。また、事前に日本国内で検査を行い、その結果を提出することで、インドでの検査がスムーズになる場合もあります。
まとめ:FSSAI認可取得を成功させるためのポイント
FSSAI認可取得は、インド市場への参入において避けて通れない重要なステップです。本記事で解説した内容を踏まえ、成功のための重要ポイントをまとめます。
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自社のビジネスモデルに適したFSSAI認可の種類を正確に選択する
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必要書類を漏れなく準備し、英語またはヒンディー語に適切に翻訳する
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申請後の追加情報要求に迅速に対応できる体制を整える
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インドの食品ラベル規制に完全に準拠したラベルデザインを用意する
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認可の更新時期を管理し、期限切れを防止する
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最新の規制動向に常に注意を払い、必要に応じて対応策を講じる
14.6億人を超えるインド市場は、日本の食品メーカーにとって大きな可能性を秘めています。FSSAI認可取得という最初の関門を適切に乗り越え、インド市場での成功を実現しましょう。
弊社のようなインド市場進出に特化した専門サービスを活用することで、複雑なFSSAI認可取得プロセスをスムーズに進めることができます。インドビジネスの成功は、最初の一歩を確実に踏み出すことから始まります。

【参考・出典】
本記事の内容は以下の公開情報を基に作成しています。
・TaxGuru「FSSAI License Registration in India: Types, Process and Fees」
・IndiaFilings「FSSAI Registration vs FSSAI License」
・Shauryam Solutions「Criteria of Identification for Licensing Jurisdiction under FSSAI」
