半導体・自動化装置の平田機工が2026年9月、SEMICON India直前にインド市場へ本格参入した。現地のATS Indiaを独占販売パートナーに据え、EFEM(装置フロントエンドモジュール)やウェハ搬送ロボットなどを供給する。同社幹部は「2〜3年でインドメーカーの装置調達のあり方を変え得る」と語る。日本の装置・自動化勢が印半導体の裾野(搬送・後工程)に食い込む先行事例だ。
平田機工はATS Indiaをインドでの独占販売パートナーに指名し、標準的な半導体自動化・搬送装置の提供から始める。市場の成熟に合わせ、用途ごとにカスタマイズした装置へ広げる計画だ。供給するのはEFEM、FOPLP(ファンアウト・パネルレベル・パッケージ)向けロードポート、PLP(パネルレベル・パッケージ)向けパネル搬送ロボット、高性能ウェハ搬送ロボットなど。米法人幹部のジョン・ダージー氏は、この提携が「2〜3年でインドメーカーが先端半導体装置技術にアクセスする方法を根本的に変え得る」と述べた。
平田機工の参入は、SEMICON Indiaを控えて装置・材料メーカーがインドでの足場を固める流れの一環だ。同じ報道では、ラム・リサーチがシリコン部品の製造に1,000億ルピー(₹10,000 crore=1,000億ルピー、2026年9月時点・₹1≈¥1.66換算で約1,660億円)を投じる計画や、テラダインがベンガルールにインド初の半導体テスト拠点を開く動きも紹介された。前工程の製造だけでなく、搬送・検査・後工程といった裾野に各社が同時に張り始めている。
半導体の国産化というと巨大なファブ(前工程工場)に目が行きがちだが、実際に数と裾野が広いのは搬送・パッケージング・検査といった周辺工程だ。EFEMやウェハ搬送ロボットは、どのラインにも必要になる汎用性の高い装置で、標準品から入って現地要件に合わせて広げやすい。平田機工が販売代理店を通じて標準装置から始める段取りは、いきなり大型設備を売るより現地に根を張りやすい。日本勢が持つ搬送・自動化の蓄積は、インドが手薄な領域とちょうど噛み合う。
報道は、平田機工の参入をSEMICON前の装置勢の布石の一つとして扱い、ラム・リサーチやテラダインの動きと並べて紹介している。平田機工の案件は販売提携が中心で、工場新設のような大型投資額は公表されていない。ここでは提携の枠組みと供給する装置の種類という確認できた範囲にとどめ、投資規模の推測はしない。
平田機工の入り方が示すのは、半導体でインドに関わる糸口が巨大ファブだけではない、ということだ。搬送・後工程の装置、そして材料(フォトレジスト等の川上部材)にこそ日本勢の強みがある。EMSでカガ電子が印Syrmaと組んだ動きや、逆にインド企業が日本の車載チップ組立を受注する逆流と併せて読むと、日印の半導体分業は工程ごとに細かく噛み合い始めている。装置・部材メーカーは、完成品の国産化を待つより、工程装置と材料で先に入るほうが接点をつくりやすい。
装置に続いて重みを増すのが材料だ。フォトレジストやCMPスラリーといった川上部材は、日本の化学メーカーが中国からインドへ投資をシフトする動きと地続きにある。半導体の裾野が現地に育つほど、装置・材料・自動化の日本勢に供給網へ入る余地が開く。
平田機工のインド参入は、搬送・後工程という裾野から半導体に入る現実的な型を見せた。次に薦めたいのは、自社の装置・部材のうちインドのラインで汎用的に使われるものを絞り込み、現地の販売代理店やインテグレーターとの提携を先に固めること。大型ファブの立ち上がりを待つより、標準工程の装置・材料で足場を作るほうが、量産期の採用に間に合う。