Amazonインドが、数分で届ける即配サービス「Amazon Now」をパンジャーブ州アムリトサルとラジャスタン州ジャイプルで案内した。発表は木曜の9月24日で、業界紙 indiaretailing が翌25日に報じている。生鮮を含む食品から日用品、小型家電までを分単位で届ける枠組みで、インド市場に商品を置く日本企業にとっては「どの都市のダークストアに自社の1品を載せるか」という配荷の設計が先に動き出した話になる。
Amazonの説明では、果物・野菜や冷凍食品を含む食料品、パーソナルケア、ファッション・ビューティー、小型家電、ホーム&キッチンまでを分単位で届ける。アムリトサルについては、日用品と並んで健康志向の主食系への需要が伸びており、パーソナルケア・ホームケア・健康栄養系の引きが強いと indiaretailing が伝えている。ただしこの都市別の傾向はAmazonの公式発表では裏が取れず、出所は同紙の報道1本に限られる。
同時に出ている数字の読み方には気をつけたい。Amazon Nowが超えたとされる10億ドルは、直近3か月の実績を年率換算した総流通額(gross sales)で、累計売上や確定した年間売上ではない。開始以来、受注が四半期ごとに倍増しているという説明と合わせて、伸びの勢いを示す指標として置かれている。
Amazonの公式発表によると、Amazon Nowは10週間足らずで対象都市を4倍に広げ、祭事期前に60を超える都市・町へ届くようになった。メトロ以外ではパドゥビドリ、ティルパティ、グントゥール、グルダースプル、ジャランダル、ヴェールール、ダールワード、ワランガル、ベラムプルなどが挙がっている。つまり今回のアムリトサルとジャイプルは「メトロ外への第一歩」ではなく、進行中の拡大リストへの追加という位置づけになる。
分単位の配送を成り立たせているのは、750か所を超えるマイクロフルフィルメントセンターとアーバンフルフィルメントセンターの網だ。Amazonインドのカントリーマネージャー、サミール・クマール氏はディワリまでに100都市へ広げる見通しを示し、北はグルダースプルとホシアルプル、南はヴェンバヤムとアラムコードまで届けると述べている。一方、indiaretailing が伝えたアムリトサル向けの発言は Everyday Essentials 部門のディレクター、シュリカント・シュリー・ラム氏のものだ。同じ「100都市」に触れていても発言者は別なので、引用するときは取り違えないようにしたい。
| 項目 | 発表値 | 出所・時点 |
|---|---|---|
| 年率換算の総流通額 | 10億ドル超(直近3か月の実績を年率換算) | Amazon公式/9月15日更新 |
| 受注の伸び | 開始以来、四半期ごとに倍増 | 同 |
| 提供都市・町 | 60超(10週間足らずで4倍) | 同 |
| 即配を支える拠点 | マイクロ/アーバンFC 750か所超 | 同 |
| ディワリまでの目標 | 100都市 | 同 |
| 6月に示した計画 | 300都市超 | Amazon公式/6月24日 |
| 祭事前の物流網追加 | FC20・ソートセンター6・ラストマイル拠点150(118都市) | Amazon公式/9月14日 |
| 保管容量 | 6,400万立方フィート(+50%) | 同 |
| 2026年の運用網投資 | 2,800クロー・ルピー=280億ルピー(Amazon併記で約3億ドル、1ドル157.59円で約473億円) | 同 |
| 祭事前の季節雇用 | 16万件超・400都市 | Amazon公式/9月18日 |
6月24日の発表文では、Amazon Nowが「ベンガルール、デリー首都圏、ムンバイ、プネー、ハイデラバード、アムリトサル、コチなど15都市超で5,000万人超の顧客に提供中」と書かれている。アムリトサルという同じ都市名が、3か月違いで「提供中」と「開始」の両方に出てくる。都市の数え方(市と町、提供開始と面の拡大)はリリースごとに動くので、配荷の判断に使うなら都市名の一覧ではなくピンコード単位のアプリ表示で確かめるほうが確実だ。なお、ルピー表記の換算は筆算しておきたい。2,800クロー=2,800×1,000万ルピーで280億ルピー、桁を1つ落として28億ルピーと書くと10分の1になる。
マイクロフルフィルメントセンターは通常の倉庫より小さく、置ける品目数が限られる。日本の食品ブランドが持ち込みがちな詰め合わせギフトや多品種の少量展開は、この棚と相性が良くない。アムリトサルで健康栄養系の引きが強いという説明を素直に受け取るなら、狙うのは「その都市で毎週回る1品」に絞った提案になる。販路を1本足す判断の進め方としては、350拠点に自社ECを1本足したトミー・ヒルフィガーの動きが比較しやすい。
9月14日の発表では、新設のソートセンター6か所すべてと新設FC20か所のうち7か所が非メトロに置かれ、ライプル・ランチー・ヴァラナシにはAmazonとして初のFCができた。ソートセンターはチッカバッラープル、ハッサン、メーラト、ラーマナガラ、ライプル、ヴァラナシの6都市で、仕分け面積は240万平方フィートから300万平方フィートへ25%広がる。棚交渉の順番を決めるなら、「ディワリまでに100都市」という目標値より、容量が実際に置かれた都市名のほうが使える。対象都市を既存拠点と重ねて選ぶ考え方は、対象9都市がSOCIALの店舗と重なったBOSS Burgerの例が分かりやすい。
Amazonインドはセール「Amazon Great Indian Festival」を10月8日に開始すると9月18日に告知しており、祭事前に400都市で16万件超の季節就業機会を作ったと説明している。プラットフォーム側の人手の積み方は規模で差が出ていて、季節雇用2万6000件を発表したMyntraと並べると桁が1つ違う。棚と配送枠の押さえ合いは、この人員が動き始める前に決着している。
6月の発表では、配送を担うアソシエイト向けの福利プログラム「Sammaan」が案内されている。子どもの奨学金、保険、休憩所「Ashray」を今年250か所へ広げる内容で、財源は運用と従業員支援に充てる約3億ドルの一部だ。分単位の配送はこの費用構造の上に立っているため、ブランド側に求められる販促負担や手数料の水準は今後動く可能性がある。取引条件は都市追加のニュースとは切り離して確認したい。
次の一手として現実的なのは、自社の主力1SKUについて、アムリトサル・ジャイプル・ヴァラナシの3都市に絞って現地のピンコードでAmazon Nowの稼働を確認し、同カテゴリの既存出品の価格帯とレビュー数を並べるところまでをやってみることだ。ここまでは費用がほとんどかからず、しかも「100都市」という発表値では見えない実際の棚の埋まり方が出てくる。祭事期の締切は10月8日で動いているので、今シーズンに間に合わせるのではなく、祭事後の入れ替えを狙って準備するほうが確度が高い。