ソニー・ピクチャーズ・ネットワークス・インディア(SPNI)が2026年9月25日、サッカーのインド代表による国際親善試合3連戦に合わせたキャンペーン「India Ki Sabse Badi Party(インド最大のパーティー)」を打ち出した。顔に据えたのは俳優パンカジ・トリパティで、65秒のヒーロー映像をヒンディー語・タミル語・テルグ語・カンナダ語で出す。中心は10月3日にコルカタで行われるブラジル戦だ。クリケット以外の競技を短期間で全国の行事に仕立て直す実例として、インドで販促を組む日本企業には手口が転用できる。
発表文によれば、ヒーロー映像はトリパティが10月3日の祝いの席への謎めいた招待状を差し出す場面から始まり、その正体がワールドカップ5度優勝のブラジルとの一戦だと後から明かされる。試合の告知ではなく、日付への招待という形だ。SPNIはブラジル戦を中心に据えながら、9月25日のパナマ戦と10月6日のウルグアイ戦を含む期間全体を一つの祝祭として売っている。
ヒーロー映像1本で終わらせていない。各地のファンを地元言語で撮る「India Ki Sabse Badi Party x Fan Edition」、トリパティがサッカーを題材にした短尺の授業シリーズ「Tripathi Ji Ki Tuition」、代表主将グルプリート・シング・サンドゥら選手と絡むSNS先行の企画が並ぶ。3試合の放送・配信はSony Sports Network、Sony AATH、Sony LIVで、9月25日から独占扱いだ。
初戦は9月25日、ベンガルールのスリー・カンティーラヴァ競技場で19時30分(インド標準時)に始まった。インドサッカー連盟(AIFF)の発表では、パナマはFIFAランキング44位でインドより94位上にいる。引き算すればインドは138位だ。試合はライアン・ウィリアムズが41分に先制し、ハーフタイムで投入されたオマル・バレンシアが68分に決めて1-1。AIFFは、インドが長い時間にわたってむしろ優勢で、勝利まで22分のところまで迫ったと書いている。
AIFFによると、パナマはインドが対戦する2026年ワールドカップ出場3チームの1番目で、ブラジルとウルグアイはコルカタで10月3日と6日に続く。パナマは予選10試合を7勝3分けの無敗で通過し、本大会ではガーナ、クロアチア、イングランドに敗れて得点なし、失点4だった。インド側は直前まで4試合勝ちがなく、最後の白星は3月31日のアジアカップ予選最終節、香港戦の2-1である。
| 相手 | 日付 | 会場 | 備考 |
|---|---|---|---|
| パナマ | 9月25日 | ベンガルール | 1-1で引き分け。FIFA44位 |
| ブラジル | 10月3日 | コルカタ | キャンペーンの中心。W杯5度優勝 |
| ウルグアイ | 10月6日 | コルカタ | 3連戦の最終戦 |
AIFFが公開した前日会見で、インドのハリド・ジャミール監督は「彼らのような実力のチームと戦えるのは我々の喜びだ」と述べ、戦い方は「守り続けることはできない。守備と攻撃を混ぜる」と話した。主将でゴールキーパーのサンドゥは「ワールドカップから戻ってきたチームと戦えるのは良い機会だ」と語り、パナマのトーマス・クリスチャンセン監督は「紙の上では我々が有利であることは認めざるを得ない」と話した。
発表文でSPNIの最高収益責任者兼スポーツ・国際事業責任者ラジェシュ・カウル氏は、3試合がインドサッカーにとって節目だとした上で、トリパティの幅広い訴求力を起用理由に挙げ、サッカーのコア層の外まで熱を広げて全国的な機会にしたいと述べている。トリパティ自身は、その熱量を楽しく親しみやすい形で祝いたいと話した。放映権を持つ側が競技の中の選手ではなく外から認知を借りた点が核心にある。ブランド側では、DP Worldがクリケットのサチン・テンドルカールを新しいフィルムの案内役に据えた例がある(DP Worldの新フィルムでテンドルカールが紅茶とスマホの旅を案内)。競技の中の名前を借りる型と、外の名前に競技そのものを紹介させる型では、測る指標が別になる。
ヒーロー映像の言語はヒンディー語・タミル語・テルグ語・カンナダ語の4つだ。目玉のブラジル戦は西ベンガル州のコルカタで行われるが、発表文はベンガル語版に触れていない。ファン版も地元言語で撮ると書かれているだけで、対象言語は列挙されていない。言語の割り当てが会場ではなく視聴者数の大きい市場に寄っている。日本企業が言語版を決めるときも、開催地ではなく自社の配荷がどこにあるかを基準にした方が費用が効く。
インドでサッカー代表戦に乗るとき、観戦の習慣が付いた人口をそのまま買えるわけではない。SPNIがやっているのは、10月3日という日付を全国の予定表に押し込む作業だ。協賛や連動企画を検討する側は、競技の既存ファンに届ける話と、その日を口実に人が集まる場を作る話を分けて見積もる必要がある。前者なら熱量の高い都市に絞る方が単価が合い、後者なら家庭内の共同視聴を前提にした素材が要る。
SPNIが同時に走らせるのは、ヒーロー映像・ファン版・授業シリーズ・SNS企画の4系統だ。1本の映像を作って出稿枠を買う発想では、この密度に届かない。派生の型と本数を企画段階で決め、撮影を1回にまとめる前提で予算を切る方が現実的だ。コンテンツ自体を媒体にする型としては、ネスカフェのインド法人がSpotifyと組んで楽曲を作った例がある(ネスカフェ印がSpotifyと組みラップ1曲、映像は8月から公開)。
公表は9月25日、中心のブラジル戦は10月3日で、間は8日しかない。棚替えやPOP配布のような物流を伴う施策は間に合わず、今回に限れば配信・SNS・ECの側に寄せるのが筋になる。都市を絞って屋外に置く型は準備の性格が違い、ハムダードのSafiが4都市の屋外約30面で世代を絞った例が比較しやすい(ハムダードのSafi、4都市の屋外約30面でZ世代に語り直す)。
会場のあるコルカタでは試合そのものが生活の話題になる。映像が用意された南インド3言語の市場では、試合は配信画面の中の出来事だ。同じ素材を全国に流すより、コルカタは来場と周辺の動線、南インドは自宅視聴と食品・飲料の買い置きに寄せた方が当たりやすい。以下は今回確認できた事実の一覧だ。
| 項目 | 確認できた内容 |
|---|---|
| 名称 | India Ki Sabse Badi Party(SPNI) |
| 構成 | 65秒ヒーロー映像/ファン版/授業シリーズ/SNS先行企画 |
| 言語 | ヒンディー語・タミル語・テルグ語・カンナダ語 |
| 起用 | 俳優パンカジ・トリパティ、代表主将サンドゥら |
| 放送・配信 | Sony Sports Network、Sony AATH、Sony LIV(9月25日から独占) |
| 公表から中心試合まで | 9月25日公表、ブラジル戦は10月3日(8日間) |
初戦の結果は、キャンペーンの前提を後押しする形になった。AIFFは、ワールドカップ組と競えればと思って臨んだチームが、勝てたはずだと感じながら会場を去ったと書いている。広告費では買えない材料だが、これは結果が生んだもので、SPNIがそこまで見込んでいたと発表文に書かれているわけではない。乗る側は試合後48時間の話題の伸びを見てから追加の出稿を決める余地がある。
インドでスポーツに乗る話はクリケットの協賛費に流れがちだが、今回のSPNIの動きは、競技人気が薄い領域でも媒体側が行事を作りにくると示している。日本企業がとれる最初の一歩は単純だ。10月3日と6日のコルカタ2試合を社内の販促カレンダーに書き込み、当日と翌日のインド側SNSの反応量を自社ブランド名と並べて記録しておく。次に同じ規模の試合が来たとき、乗るか見送るかの判断材料がその記録から出る。今回は3試合とも国際親善試合で、大会ではない。