インドのスパイスブランドZOFF Foods(運営はAsquare Food & Beverages、本拠はチャッティースガル州ライプル)が、9月中旬に立ち上げた企画「Know The Brand」の第2弾を出した。ブランドアンバサダーのシルパ・シェティが出演する動画で、業界紙の掲載は2026年9月23日。買う側に求めているのは、価格や見慣れたパッケージの先にある調達・加工・検査の中身を問うことだ。インドで食品を売る日本企業には、広告表現ではなく「聞かれたときに出す資料があるか」の問題として跳ね返ってくる。起点のCampaign Indiaは本文がサインイン制のため、事実はMediaBrief・medianews4uの同一発表とZOFF公式で確認した。
「Know The Brand」は祭事シーズン前の消費者啓発として9月中旬に発表され、業界紙の掲載はMediaBrief 9月15日、medianews4u 9月19日。いずれも「啓発として始まり、クイックコマース起点のデジタル企画に育った」と書く。第1弾は調達・加工・品質をめぐるデジタル上の会話で、同社のデジタルアンバサダーであるシェフ、ナターシャ・ガンディーが広げた。9月23日のシェティ出演動画は第1弾の問いを引き継ぎ、認知から売り場での検討へ進める位置づけとされ、両紙が参照先に挙げたのはInstagramのリール投稿だ。
シェティの起用自体は新しくない。2023年2月20日の発表で、同社は彼女をブランドアンバサダーに3年契約で迎えたと伝えられている。一方2026年4月の発表では「9年連続でブランドアンバサダーを務めている」と説明されており、共同創業者が語る「2018年のカテゴリー参入」とも年数が噛み合わない。どちらが正しいかは同社の説明だけでは決まらないので、両方を置く。確実なのは、9月23日が新規契約ではなく既存アンバサダーを新訴求の第2弾に投入した動きだという点だ。共同創業者のアカーシュ・アグラワラ氏も、彼女の参加は「このメッセージに規模と露出をさらに足す」と到達範囲の話として述べている。デジタル側のガンディー氏とは別枠だ。
発表文が見るよう促したのは、袋の外側に印刷されていない工程だ。どこで調達されたか、原料がどう選別されたか、どう洗浄・加工・検査され、どう保管・包装されたか。第1弾の発表文はこれを「馴染みや約束だけに頼らない」と書いた。アグラワラ氏はさらに踏み込む。「どこで調達したのか。どう洗浄し加工したのか。何を検査したのか。この問いは購買判断の一部であるべきだ」とした上で、「我々の言葉も信じるな。質問してくれ、我々にも(Sawaal karo! Humse bhi!)」と自社を対象に含めた。
英語の原文は look beyond price and packaging で、価格や見慣れた袋そのものを否定していない。「価格を見るな」と訳すと値段で選ぶ層を切り捨てる広告に読めてしまう。対象はホールスパイス(現地語で khadey masale)が中心で、訴求の台は「Khadey Masale Matlab ZOFF」だとインタビューで述べている。
同社サイトには Factory Locater という案内ページがある(9月26日確認)。袋のロット番号の括弧内2文字を読み、対応する製造・包装工場の住所とFSSAI(インド食品安全基準局)ライセンス番号を引く手順だ。
| Products | コード | Manufacturing |
|---|---|---|
| 全スパイス・乾果 | AF | Asquare(ライプル、自社工場) |
| グレービー・マリネ | IF | Itiadi Food Products(プネ) |
| 生姜ニンニクペースト | GG | Kapil Anand Agro(UP州ハトラス) |
| ヒング | HH | Hindustan Hing Supplying(ナディアード) |
| サフラン | KS | Kushi Agro(インドール) |
| ソヤチャンク | AA〜AE | 外部4社(AB〜AEの包装はAsquare) |
各コードにライセンス番号が併記され、自社包装のライプル工場(Urla Industrial Area)は10017037000283と記載されている。
工程を見ろと言う広告は、見に来た人が突き当たる先がないと空振りに終わる。ZOFFはロット番号から工場とライセンス番号に届く経路を先に持っていた。ただし同日時点で、フッターの「Quality Assurance」のリンク先は取引先募集のフォームページになっている。
2023年2月の発表では、同社がShark Tank India シーズン2でboAt共同創業者のアマン・グプタ氏から1 crore ルピーを調達したと伝えられている。1 croreは1,000万ルピーで、1ルピー=1.645円(2026年9月25日の為替)なら約1,650万円だ。2026年3月10日には、JM Financial Private EquityがJM Financial India Growth Fund IIIを通じて主導し、既存投資家のグプタ氏が参加した200万米ドルのプレシリーズBを発表。medianews4uはこれを同社にとって2回目の投資と書いた。用途はオフライン流通の強化とクイックコマース拡大、一般小売網の拡張とされる。
売上は、2026年5月のインタビューでアグラワラ氏が「FY26で約200 crore ルピーを目標に掲げていると公に話してきた」と述べている。200 croreは20億ルピーで、同じ1.645円換算なら約33億円。目標値であり、達成の報告は確認できていない。同じ場でUP州・ビハール州・チャッティースガル州と北部近隣での流通構築を挙げている。
「我々にも質問しろ」と言った瞬間、問い合わせは自社に返ってくる。ZOFFはその受け皿を先に置いていた。インド向けに同じ組み方を試すなら、動画より前に、ロット単位で製造所と許認可番号に届くページを用意する順番になる。自社工場を持たず委託で回している場合はここが最初に詰まる。ZOFF側はスパイスは自社、レトルトや調味ペースト、ヒング、サフランは外部と書き分けた。混ぜ物への不安が一次関心の売り場では、委託を明かす不利より、書いていないことのほうが疑いの種になりやすい。
この企画がクイックコマース起点だという説明は読み落とせない。アプリの商品カードで買う側が見るのは写真と価格と内容量で、工程の話を置く枠はほとんどない。だから動画とハッシュタグで、買う前に一段止まる習慣のほうを作りに行っている。同じ売り場に入るなら、プラットフォームの商品情報にどこまで検査項目や製造所を入力できるかを先に確認する順番だ。音源と映像で入口を作った例(ネスカフェ印がSpotifyと組んだ件)と違い、こちらは売り場の直前で判断を止めさせる位置に素材を置いている。
下記は2026年9月26日時点の自社EC表示価格。畑先渡しや卸の建値ではなくブランド自身のD2C小売価格で、円は1ルピー=1.645円で換算した参考値だ。
| Products | 内容量 | D2C表示価格(INR) | 参考(円) |
|---|---|---|---|
| クミンシード | 100g | 65 | 約107円 |
| 黒胡椒(ホール) | 50g | 105 | 約173円 |
| グリーンカルダモン | 25g | 220 | 約362円 |
| 乾燥赤唐辛子 | 100g | 70 | 約115円 |
| ホールガラムマサラ | 50g | 84 | 約138円 |
菓子のチタレ・バンドゥがテンドルカール起用で原材料を押した件(チタレ・バンドゥの新CM3本)や、俳優を出資者に迎えた例(Peep Beautyの組み方)と並べると、ZOFFは既存契約に企画を載せる形を選んでおり、契約を作り直さずに動かせる分だけ速い。次に手を動かすなら、自社商品のロット番号から製造所と許認可番号までを買う側が3クリック以内で辿れるか、いまのサイトで試すところからで足りる。辿れないなら、広告よりそのページを先に作る。
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