半導体製造装置大手のApplied Materialsが2026年9月17日、ニューデリーで開かれたSEMICON India 2026で、今後10年にわたりインドの半導体エコシステムへ50億ドル(約7,750億円。2026年9月時点、$1≈¥155換算)を投じると表明した。柱はインド国内の研究開発の深化、供給網の拡大、人材育成の3つで、140エーカーの先端半導体研究拠点の新設を含む。装置・材料で川上を担う日本のメーカーにとって、インドの半導体現地化がどこまで本気かを測る具体的な物差しになる。
同社の半導体製品部門プレジデントPrabhu Raja氏がSEMICON India 2026の会場(ヤショブーミ)で発表した。投資は「Applied Materials India Vision 2035」の一環で、クリーンルームを備えた140エーカーの先端半導体研究拠点を新設し、インドを起点とする供給網の能力を2035年までに10倍へ引き上げる目標を掲げる。金額は50億ドル、インド・ルピー換算で約4万7,980.8クロー(約4,798億ルピー)とされ、期間は今後10年である。
発表はインド政府の半導体育成策ISM 2.0(Semicon 2.0)の始動と時期が重なる。政府プログラムの後押しを受け、装置・材料の世界大手が相次いで対印コミットを打ち出す局面にある。富士フイルムがSEMICON直前に半導体材料の新工場を発表したのと同じ流れで、川上のプレイヤーがインドの製造基盤に自社の位置を確保しにいく動きが続いている。
Applied Materialsが示した使途は輪郭が明確だ。第一に140エーカーの研究拠点で、クリーンルームを備え装置・プロセスの開発を現地で回す。第二に供給網で、インドを起点とする調達能力を2035年までに10倍へ拡大する。第三に人材育成で、現地エンジニアの層を厚くする。研究と供給網を同時に置く設計は、装置を「売る」だけでなく「作る土台」をインドに移す意思を示している。
Inc42の報道の範囲では、今回のコミットはSEMICON India 2026で示された一連の投資表明のなかでも規模が大きいものとして扱われた。政府のISM 2.0は総額1.28ラークルピー(約1兆2,800億ルピー)規模の枠組みとされ、複数企業からの投資コミットと雇用創出が紹介されている。Applied単独の雇用計画やインド内の具体的な立地は、報道時点では明示されていない。
装置大手が現地に研究拠点と供給網を置くと、その周辺にはフォトレジストやスラリー、ガス、部材、精密部品の需要が集まる。ここは日本の化学・部材勢が強い領域だ。中国からインドへ生産をずらす動きは化学業界で先行しており、三井化学・住友化学の脱中国とインド重視や、日本の化学メーカーの投資シフトと地続きで読める。後工程ではインド企業が日本の車載チップ組立を受注する逆流も起きており、川上・川下の双方で日本の技術が入る隙間が開いている。
装置の現地化は、材料調達と人材の現地化を連れてくる。金融面でも対印投資は積み上がっており、三菱UFJのインド金融大手への大型投資のように、資金の裏づけが現地化を後押しする構図が見える。日本の部材メーカーには、研究拠点の立ち上げに合わせた評価サンプルの持ち込みが現実的な入口になる。
Applied Materialsは10年で50億ドル、140エーカーの研究拠点という規模を明示した。日本の材料・部材メーカーの次の一手は、拠点の立地とクリーンルーム稼働の時期が公表され次第、評価サンプルの供給と共同開発の窓口を早めに叩くことだ。供給網を10倍にする過程で調達先が固まる前に接点を持てるかが分かれ目になる。