インドの乳製品大手Milky Mistが2026年9月、タミルナードゥ州ペルンドゥライの統合工場に約40クロー(4億ルピー、約6.6億円/2026年9月時点、₹1≈¥1.66換算)を投じ、Skyr(スキール)とギリシャヨーグルトの新ラインを稼働させた。限外ろ過(ウルトラフィルトレーション)を使うこの設備で、同社の高たんぱくヨーグルトの生産能力は日産約20トンから150トンへ、7.5倍に拡張される。CEOのK Rathnam氏は「高たんぱく栄養はニッチな嗜好から主流の消費トレンドへ移りつつある」と述べており、乳加工の技術やOEMを狙う日本勢にとって、どこに需要が動いているかを示す一手になる。
Milky Mistはペルンドゥライの統合製造拠点で、約40クロー(4億ルピー、約6.6億円)を投じたSkyr・ギリシャヨーグルトの新設備を商用稼働させた。生産能力は日産150トン。2022年に導入した多品種ヨーグルト設備が日産約20トンだったため、能力は7.5倍に増える。同社の品揃えは2026年6月時点で22カテゴリー・640SKU超に広がっている。
今回の設備が使う限外ろ過は、乳成分を膜で濃縮する加工技術だ。ホエイなどの水分を抜いてたんぱく質を高める工程を工業規模で回せるため、Skyrやギリシャヨーグルトのような濃厚・高たんぱくの製品を安定して作れる。テクスチャーや栄養プロファイルの作り分けもしやすい。2022年の設備導入以降、このカテゴリーの年間需要は50%超伸び、直近では高たんぱくヨーグルトの引き合いが倍以上になったと同社は説明する。
同社のFY26売上は3,138.36クロー(313.8億ルピー、約521億円)で、FY24からの年平均成長率は31.26%とされる。伸びる需要を外部委託で捌くのではなく、限外ろ過という設備投資で自社の川上を握りにいった点が今回の要点だ。原料乳の確保から加工技術までを内製化する垂直統合は、価格と品質の両方を自社で設計できる強みにつながる。日産150トンという規模は、高たんぱく乳製品を一過性のブームでなく基幹カテゴリーとして扱う判断を示す。
Rathnam氏の「主流の消費トレンドへ移りつつある」というコメントは、需要側の変化を供給側が確信し始めたことを表す。報道の範囲では、Milky Mistは高たんぱくを軸に商品数とカテゴリーを増やし、ヨーグルトの生産能力を大幅に前倒しで積み増している。インドの都市中間層でたんぱく質を意識した食習慣が広がるなか、乳加工の設備競争がその受け皿になっている。
限外ろ過のような膜技術や、Skyr・ギリシャヨーグルトの製造ノウハウは、日本の乳業・機械・素材メーカーが強みを持つ領域だ。インド側が高たんぱくの量産へ設備を積み増している局面は、装置・膜・スターター培養・OEM受託を持ち込む窓口になる。インドの乳製品市場は構造転換の途中にあり、大手も原料構成を見直している(Kwality Wall’sのパーム油全廃と乳製品シフト)。高たんぱく需要そのものは乳製品にとどまらず、スポーツ栄養D2Cにも波及している(BeastLifeの栄養ブランド急成長)。日系の飲料・乳製品では、自社工場を建てずに現地委託で入る選択もある(カルピスがインド初上陸で工場を建てなかった理由)。
高たんぱくの引き合いが倍増するなか、産地直結で規模を伸ばす乳製品D2Cも育っている(Desi Farmsの売上8倍成長)。設備で量産に賭ける大手と、鮮度と物語で攻めるD2Cが、同じ需要を別の入口から取りにいっている。
Milky Mistの投資は、インドの乳加工が高たんぱくを量産段階に進めたことを示す。日本の乳業・機械メーカーがまず取れる一手は、膜・培養・製造受託の中から、現地が設備を積み増している高たんぱくヨーグルトの量産課題に的を絞って提案を持ち込むことだ。汎用の設備売りではなく、Skyrやギリシャヨーグルトの歩留まりと食感という具体の困りごとに答える形なら、現地の投資意欲と噛み合う。