ジャイプル発のカフェチェーンNothing Before Coffee(NBC)が創業9年を迎え、45を超える都市・12州へ広げた実績を公表した。共同創業者はアクシャイ・ケディア氏。手頃な価格とGen Z向けの店づくりを武器に、FY27末までに170店超を目指す。メトロの一等地ではなくTier2・Tier3都市の大学クラスターを狙う出店の型は、地方の若年層を取りにいく日本の食品・飲料ブランドにとって具体的な手本になる。
業界メディアBusiness of Foodによると、Nothing Before Coffeeは2017年にジャイプルで創業し、2026年8月で9年を迎えた。現在は45を超える都市・12州に店を構える。売上はFY25の約59クロー(5.9億ルピー、約9.8億円。2026年9月時点、₹1≈¥1.66換算)からFY26に約90クロー(9億ルピー、約14.9億円)へと、前年比およそ52%伸びた。FY27末までに170店超への拡大を掲げる。9周年に合わせ、8月30〜31日に飲料を99ルピーで提供する記念施策も打った。地方都市の若年層に手頃な一杯で浸透する路線を鮮明にしている。
インドのカフェは大都市の高価格帯だけでなく、地方都市の手頃な価格帯でも客層が広がっている。NBCが狙うのはTier2・Tier3都市で、とりわけ大学クラスターを軸に店を置く。学生や若い社会人が日常的に通える価格に抑え、居心地のよい店内で滞在時間を伸ばす設計だ。メトロの一等地は家賃が高く競争も激しいが、地方都市の大学街なら固定客がつきやすく、口コミも回りやすい。手頃な単価で回転と来店頻度を稼ぐやり方で、9年かけて都市数を積み上げてきた。
FY25の約59クローからFY26の約90クローへおよそ52%伸びた成長が、170店計画の土台にある。売上の伸びが続くなら、出店ペースを上げても各店の負担を賄える計算が立つ。手頃な価格帯は一杯あたりの利益は薄いが、来店頻度と回転で補う構造だ。大学街という立地は客層が読みやすく、標準化した小型店を素早く複製しやすい。ただし価格を抑えた業態は原価と人件費の管理が甘くなると採算が崩れやすく、都市数を増やすほど供給と品質を揃える難度は上がる。数値は発表段階の値であり、今後変わり得る。
ケディア氏はBusiness of Food上で、「コーヒーはもはや単なる機能的な飲み物ではなく、手の届くライフスタイルの選択肢になりつつある」と、小さな市場での消費者心理について述べている。ここで確認できるのは、公表された都市数・州数・売上と成長率、そして170店という自社の出店目標までだ。個店ごとの採算や、目標達成の確度に関する数値はまだ示されていない。記念施策の99ルピー提供も、価格帯の狙いを映す一例として読める範囲にとどまる。
NBCの伸びは、地場のコーヒー・チャイ業態が手頃な価格で地方に浸透する流れの一部だ。地場コーヒー二強が同時に店を増やすThird Wave CoffeeとBlue Tokaiの拡大や、格安チャイで地方都市を制するChai Sutta Barの強さと並べて読むと、価格帯の使い分けが競争の焦点になっているのが見える。日本の飲料・製菓・シロップメーカーには、地方の格安カフェが使う原料や副材料の供給という入り口がある。高価格帯だけでなく、量を稼ぐ手頃な業態への提案も設計したい。
手頃な単価で店を増やす業態は、コーヒーに限らず広がっている。2年半で100店に届いたBoba Bhaiのように、若年層向けの飲料業態が短期間で店を積み上げる例が続く。こうしたチェーンは標準化した小型店を素早く複製するため、原料や資材の集中購買が進む。供給する側から見れば、拡大期のチェーンを早めに押さえるほど、店舗増に合わせて取引量も伸ばせる。地方の若年層を狙う業態の広がりは、卸先の裾野を地方へと押し広げていく。
NBCの拡大は、地方の格安カフェが着実に伸びる局面を映す。日本の飲料・製菓・原料メーカーがまずできるのは、高価格帯だけでなく、量を稼ぐ手頃な業態向けの原料や副材料の提案を一本用意することだ。地方展開型のチェーンは、価格を抑えつつ味を揃えるために原料を集中購買する。NBCのように大学街を軸に伸びるチェーンをリスト化し、どの原料でコスト面でも合う提案ができるかを一社ずつ詰めていきたい。