インドの都市部では、注文から10分前後で食品や日用品が届くサービスが日常になりました。その裏にあるのがダークストアです。店舗ではなく、配送のためだけの小さな倉庫が街中に置かれています。
日本のメーカーから見ると、ここは「棚」のひとつです。ただ、スーパーの棚とも個人商店の棚とも条件が違います。この記事では、ダークストアに商品を置くとは実際に何をすることなのか、誰と何を決める必要があるのかを整理します。市場の全体像はインドのクイックコマース(10分配達)にまとめています。
ダークストアは一般の客が入れません。注文が入ると、中のスタッフが商品を集めて配達員に渡します。立地は住宅地の中で、面積は小さく、扱える品目の数は限られます。近くに多く置くほど配達が速くなるので、各社は密度を競っています。
上場2社は四半期ごとに、Zeptoは上場申請書類で店舗数を開示しています。基準日が違う点に注意してください。
| 事業者 | ダークストア数 | 時点 |
|---|---|---|
| Blinkit(Eternal) | 2,443店(四半期で純増200店) | 2026年4〜6月期 |
| Swiggy Instamart | 1,171店・131都市(四半期で純増28店) | 2026年4〜6月期 |
| Zepto | 1,139店 | 2026年3月末(更新版の上場申請書類での開示) |
Swiggyは2026年7〜9月期にInstamartのダークストアを約75店増やす計画を示しています。
インドでは、外資が過半を保有する、または外資に支配されている事業者が、在庫を保有して消費者に直接売ること(在庫保有型EC)を認められていません。マーケットプレイス型なら100%外資でも可能です。この線引きを定めているのが2018年のPress Note 2です。「外資が入っているかどうか」ではなく「過半を握られているかどうか」が判定基準なので、各社が自社で在庫を持てるかは資本構成に左右されます。
Blinkitの親会社であるEternalは、外資の保有比率に上限を設けることでインド資本が支配する会社(IOCC)になりました。外資が入っていないという意味ではなく、過半を握られていない状態にしたということです。これによりBlinkitは在庫を保有しても外資規制に抵触しなくなりました。
移行は2025年4〜6月期から始まり、出品者には同年7月30日までの切り替えが求められ、9月1日に新方式へ移りました。買い取り後は、Blinkitがブランドから商品を仕入れて自社のダークストアに置いて売る形です。ただし完全に切り替わったわけではなく、Eternalはマーケットプレイス型との併用を続けると説明しています。
Zeptoは外資が過半を保有する会社に当たるため、在庫保有型を自社では取れません。2024年にマーケットプレイス型の法人を立てて対応しています。在庫保有型に移るにはインド資本による支配が前提になるため、国内投資家が出資比率を高める動きが続いているのは、この制約が背景にあります。
| 事業者 | 資本構成と在庫 | 公開されている範囲 |
|---|---|---|
| Blinkit(Eternal) | 外資の保有比率に上限を設けてインド資本支配の会社に。2025年から在庫保有型とマーケットプレイス型を併用 | ダークストア数を四半期開示 |
| Swiggy Instamart | 公開情報では確定できない | ダークストア数と都市数を四半期開示 |
| Zepto | 外資が過半のため、マーケットプレイス型の法人で対応 | 更新版の上場申請書類で店舗数を開示 |
在庫を誰が持つかは契約の形に直結します。Instamart については公開情報だけでは確定できないので、商談の最初に確認する項目です。
在庫を持つのが誰かで、日本企業の立場が変わります。
前者なら在庫リスクは相手に移りますが、買ってもらえる量は相手が決めます。後者なら自分で在庫を管理する必要があります。どちらの形なのかを最初に確認してください。
出品の前提として、インド側に次のものが要ります。
これらはインドで登記した事業者でないと持てないものです。日本の本社が自前でそろえることはできないため、輸入者または現地の販売会社が出品の主体になります。輸入・ライセンスの支援で、誰が輸入者になるかを含めて整理しています。
各社が指定する様式で商品情報を提出します。求められるのは商品名、説明文、画像、MRP、供給価格、EANバーコード、賞味期限、HSNコードといった項目です。日本語のパッケージ情報をそのまま出すことはできません。
手数料は公開されていません。料率はブランドごと、カテゴリーごとの交渉で決まります。見積もりを取るときは、次の要素が別々に積み上がることを前提に聞いてください。
料金表も規約も公開されていないため、外から構造を断定することはできません。品目ごとの登録費用を求められたという報道はありますが、単位が州なのか都市なのかも交渉次第とされています。だからこそ、見積もりは項目ごとに分けて出してもらってください。最初は都市と品目を絞るのが現実的です。
各社は店舗の大型化と品揃えの拡大を進めており、扱う品目数は増えています。それでも面積あたりの制約は残り、回転しない商品が外れる点はどの売り場とも同じです。採用と削除の基準は各社とも公開していないので、契約の前に「何週間の実績で判断するのか」を聞いてください。
回転の速さが前提になるので、単価が高く購入頻度の低い輸入品は不利になりやすいと考えられます。逆に、日常的に繰り返し買われる価格帯まで持ってこられる商品なら、配荷の速さは大きな武器になります。
2026年8月13日、マハラシュトラ州の食品医薬品管理局(FDA)がオンライン販売に関わる86のダークストアに立入検査を行い、14施設のライセンスを停止しました。内訳はBlinkitが5件、Zeptoが5件、Instamartが2件、ほか2件です。改善命令は60件出され、1施設には一時的な営業停止が命じられました。
指摘された内容は、温度管理の不備、照明、食品の保管方法、衛生設備、清掃状態などです。ムンバイのある施設では食品の包装が床に直置きされ、保管スペースの不足と商品の過密が記録されています。
消費財ディストリビューターの業界団体AICPDFも、ダークストアの保管基準を設けるよう保健当局に求めています。既存流通側の立場からの要望ではありますが、行政と業界の双方から基準づくりの圧力がかかっている状況です。
温度管理が必要な商品を扱う場合、この点は自社の商品品質に直結します。契約の前に、保管条件をどう担保するかを確認しておくべき項目です。
向いている条件と、向いていない条件を分けると次のようになります。
まずスーパーで価格と回転の数字を取ってから、クイックコマースに広げる順番が安全です。売り場ごとの違いはインドの販路開拓はどこから?に、個人商店側の流通はインドの定番、キラナショップに卸販売は可能なのか?にまとめています。
そのまま質問として使える形で並べます。
反応を先に確かめたい場合は、試食会やイベントで試す方法もあります。試食会・イベントでご案内しています。
実務上は困難です。プラットフォーム側がインドで登記された事業者であることを求めます。出品にはGST登録、PAN、FSSAIライセンス、インドの銀行口座が必要で、日本の本社がこれらをそろえるのは現実的ではありません。輸入者または現地の販売会社が出品の主体になり、日本側はその相手に売る形になります。
一般の客が入れない、配送専用の小さな倉庫です。注文が入るとスタッフが商品を集めて配達員に渡します。住宅地の中に密に配置することで配達時間を短くしており、面積が小さいぶん扱える品目の数は限られます。店頭に並べて見せる売り場ではないので、パッケージで手に取ってもらう売り方は効きません。アプリ上の商品画像と説明文が棚の代わりになります。
Blinkit(Eternal)が2,443店、Swiggy Instamartが1,171店・131都市です(いずれも2026年4〜6月期)。Zeptoは更新版の上場申請書類で2026年3月末時点1,139店を開示しています。基準日が違うので単純比較はできません。
外資規制が理由です。インドでは外資が過半を保有する、または外資に支配されている事業者が、在庫を保有して消費者に直接売ることを認められていません。Blinkitは親会社のEternalが外資比率に上限を設けてインド資本支配の会社になったことで、2025年から在庫保有型を併用できるようになりました。Zeptoは外資が過半のため、マーケットプレイス型の法人で対応しています。在庫を持つのが誰かで、ブランドが「売る」のか「置かせてもらう」のかが変わります。
公開されていません。料金表も規約も外部に出ておらず、カテゴリーとブランドごとの交渉で決まります。見積もりを取るときは、販売手数料、配送費、入庫の作業費、保管費、品目の登録費用を別々に出してもらってください。登録費用を求められたという報道はありますが、その単位も交渉次第とされています。
条件によります。ダークストアは回転の速さが前提なので、単価が高く購入頻度の低い商品は不利になりやすいと考えられます。繰り返し買われる価格帯まで持ってこられるなら、配荷の速さは武器になります。まずスーパーで価格と回転の数字を取ってから広げる順番が安全です。
行政の締め付けが始まっています。2026年8月13日にマハラシュトラ州のFDAが86のダークストアに立入検査を行い、14施設のライセンスを停止しました。温度管理、保管方法、清掃状態などの不備が指摘されています。温度管理が必要な商品を扱う場合は、契約の前に保管条件をどう担保するかを確認してください。