インドのヘアケア家電ブランドIkonicが2026年8月、ハイデラバードのInorbit Mallに入るShoppers Stop内に、同市で初めての売り場を設けた。運営はSSIZ International Pvt. Ltd。オンライン販売を軸に伸びてきたブランドが、消費者に実機を触らせる接点を都市の百貨店に置いた動きで、インドで美容・ヘアケア家電を売る日本企業にとって、売り場の作り方を考える材料になる。
SSIZ Internationalが展開するIkonicは、ヘアドライヤー・ストレートナー・カーラー・クリンパーといったヘアスタイリング家電とグルーミング機器を扱う。今回開いたのはハイデラバードのInorbit Mallに入るShoppers Stop店内の売り場で、同社にとってハイデラバードでの初めての実店舗接点となる。同社ディレクターのRayed Merchant氏は、デジタルの外でブランドを体験してもらうための出店だと述べ、オンラインと店頭を組み合わせる方針を示した。
ヘアドライヤーやストレートナーは、握った重さ・風量・熱の当たり方といった使用感が購入の決め手になりやすい。写真とスペック表だけでは伝わりにくい部分を、店頭で実機に触れて確かめてもらう。Ikonicが百貨店内の売り場を選んだのは、単独の路面店を構えるより、来店客の多いShoppers Stopの動線に相乗りするほうが、初めての都市で試用の機会を作りやすいという判断が働いている。
百貨店内の区画は面積が限られる。そこで効くのは、主力機種を実際に動かせる状態で並べ、風量や温度設定を客が自分で操作できるようにする見せ方だ。Ikonicのように機能で選ばれる家電は、店員の説明より客自身の手の感触が背中を押す。オンラインで価格とレビューを見てから店頭で最終確認する、という二段構えの購買が成り立つよう、店頭在庫と表示価格をオンラインとそろえておくことも欠かせない。今回の売り場はハイデラバードでの初めての実店舗接点であり、既存のデジタル販売を置き換えるのではなく補完する位置づけで足された点も、この二段構えの前提と重なる。
Rayed Merchant氏は今回の小売展開を「Ikonicをより身近な存在にし、デジタルの外でブランドを体験してもらう機会をつくるための取り組み」と位置づけた。売上拡大の拠点というより、消費者がブランドに触れる場として店頭を捉える説明で、デジタル販売を主軸に据えたまま、実店舗を補完的な接点として足していく方針が読み取れる。扱うのはヘアドライヤー・ストレートナー・カーラー・クリンパーといったスタイリング家電とグルーミング機器で、いずれも握った感触や仕上がりが評価を分ける品目にあたる。インドの美容・グルーミング家電では、オンライン先行で認知を作ったブランドが、百貨店や専門店の売り場で試用体験を足していく進め方が広がっている。
日本の美容・ヘアケア家電メーカーがインドに入る場合も、握って試せる場所の確保が入口になる。メンズグルーミングのD2Cが黒字を優先しながら売り場を広げる動きはインドのメンズD2C「Dapr.」の事例が示すとおりで、資金を絞りつつ店頭接点を選ぶ設計が読み取れる。D2Cブランドがオンラインから店頭併売へ舵を切る流れは民族衣装Koskiiの逆オムニチャネルにも通じ、インドでのチャネル設計を組み立てる際の下敷きになる。
美容カテゴリでは、D2Cで立ち上げたブランドが即配や百貨店へと販路を足す動きが続く。美容大手が健康領域まで広げる動きはマミーアース親会社Honasaの買収にも表れており、単一チャネルに頼らない売り場づくりがインドの消費財では標準になりつつある。
Ikonicの出店は、来店客の多い百貨店の区画を借りて試用の機会を作る、という現実的な一手だった。インドで美容・ヘアケア家電を検討する日本企業がまず取れる次の行動は、ハイデラバードやベンガルールなど購買力のある一都市を選び、百貨店内の小さな区画で実機を触らせる売り場を試験的に置き、オンラインの価格・在庫と連動させて反応を測ることだ。単独路面店の投資判断は、その手応えを見てからでも遅くない。