インドのホテル大手レモンツリー・ホテルズが、マハラシュトラ州ナシクで3日のうちに2軒の開業を発表した。9月23日に市内ガンガプール通りの「Keys Prima by Lemon Tree Hotels, Nashik」(48室)、9月25日にガンガプール・ダム湖畔の「Lemon Tree Resort, Nashik」(71室)である。前者は同グループのナシク市内初進出で州内15軒目、後者で州内16軒目になった。2軒とも自社保有ではなく、完全子会社カーネーション・ホテルズによる運営受託だ。ホテルが1軒開くたびに、朝食と宴会の食材、客室アメニティ、厨房什器の発注口が生まれる。インドで供給先を探す日本企業には、どの街にどの看板が立ったかが商談先の地図になる。
1軒目はアショク・スタンブ近くのKeys Prima by Lemon Tree Hotels, Nashikで、48室の客室・スイートを持つ。9月23日付の発表文は、同グループのナシク市内への初出店であり、州内15軒目の稼働ホテルだと位置づけた。同じ発表文は、州内にほかに16軒のパイプラインがあり、うち2軒はナシクの案件だとも説明する。
2軒目のLemon Tree Resort, Nashikは、ギルナレ地区のガンガプール・ダム背水域に面する71室のリゾートで、2日後の9月25日に発表された。NSE(国立証券取引所)への開示をもとにした報道では、同社プレジデントのヴィシュヴァプリート・シン・チーマ氏が「ナシクは事業・巡礼・ワイン観光という既存の強みに加えて、レジャーと祝祭の目的地として立ち上がってきた」と述べ、「今週初めのKeys Primaでの市内デビューに続く形で、この土地に根ざした提案を重ねられる」と説明した。
同じ週に開いた2軒は役割が分かれている。市内型は商業地区とサトプール/アンバドの工業団地、寺院への動線に近く、空港・駅・バスのいずれも湖畔型より近い。湖畔型は市街から離れ、景観と屋外会場を売りにする。出張者が1〜2泊する部屋と、婚礼や合宿で数日まとめて押さえる部屋を、同じ都市で別の建物に分けた。
客室仕様は、市内のKeys Primaがデラックスツインが35.02平方メートル、湖畔のリゾートはデラックスツイン/ダブルが28.3平方メートル。最上位は前者のデラックススイート52.39平方メートル、後者のレイクビュー付きエグゼクティブスイート56.1平方メートルとなる。公式のブランド体系ではKeys Primaがアッパーミッドスケール、Lemon Tree Hotelsがミッドスケールだが、開業の発表文はこの物件を「現代的なミッドスケールの提案」と呼んでおり、呼び名は揺れている。等級より、婚礼と連泊をどれだけ束ねられるかが単価を決めており、表示料金は湖畔が3倍を超える。
| 項目 | Keys Prima(市内) | Lemon Tree Resort(湖畔) |
|---|---|---|
| 開業発表 | 2026年9月23日 | 2026年9月25日 |
| 客室数 | 48室 | 71室 |
| 所在 | Gangapur Road, Ashok Stambh, Nashik 422001 | Post Girnare, Near Gangapur Dam, Nashik 422203 |
| 空港/駅/バス | 約21km/約10km/約1.5km | 約33km/約28km/約19km |
| 飲食 | Keys Café、Unlock Bar、Keys Patio | Citrus Café、Slounge |
| 宴会・会議 | Grand Chamber、Chamber、会議室 | Grand Tangerine、Tangerine、屋外芝生 |
| 表示上の最低料金 | 1泊4,500ルピー(約7,500円)から | 1泊15,000ルピー(約24,800円)から |
料金は公式サイトのナシク一覧に出ている下限で、2026年9月25日に確認。円換算は1ルピー=1.656円(同日レート)による。
ナシクの2軒は、いずれも完全子会社カーネーション・ホテルズ・プライベート・リミテッドが運営を受託する形で開いた。建物と土地は同社の資産ではない。自社資本で建てるのではなく、地元オーナーの物件にブランドと運営を載せる。だから同じ週に2軒の速度が出る。
2026年8月7日開示の2027年度第1四半期(2026年4〜6月)資料に、この構造が出ている。ホテル網全体の売上576クロー・ルピー(1クロー=1,000万ルピー、約95億円)のうち、運営受託・フランチャイズ分が256クロー(約42億円)を占め、構成比は前年同期の40%から44%へ上がった。金額でも198クローから256クローへ29%増え、保有ホテル分の300クローから320クローへ6%増を大きく上回る。第三者オーナーから受け取る運営・フランチャイズ手数料は16.1クロー(約2.7億円)から22.8クロー(約3.8億円)へ42%増えた。同社は資産保有を担うフルール・ホテルズと運営を担うレモンツリーを分ける再編を進め、レモンツリー側を資産を持たない運営・ブランド事業として立たせる方針だ。
| 区分(2026年6月30日時点) | ホテル数 | 客室数 |
|---|---|---|
| 保有(借地上を含む) | 34 | 5,186 |
| 賃借 | 7 | 573 |
| 運営受託・フランチャイズ | 94 | 6,187 |
| 稼働合計 | 135 | 11,946 |
| パイプライン | 144 | 11,435 |
パイプラインは稼働数をすでに超えている。同四半期の連結総売上は346.8クロー(約57億円)で前年同期比9%増、税引後利益は57.3クロー(約9.5億円)で19%増、平均客室単価は6,361ルピー(約1万500円)、稼働率は75.7%だった。
ナシク県の公式サイトによれば、同市はムンバイの北約190kmにあり、インドのブドウ畑とワイナリーの半分が集まる「インドのワインの都」だ。ゴーダーヴァリー川の源流トリンバケシュワルには12あるジョーティルリンガの1つが立ち、12年に一度のシンハスタ・クンブメーラを開く4都市でもある。宗教都市の滞在需要を宿で受け止めた例に、Essentia Residencyがティルパティで1〜3ベッドルームのレジデンス型を開き、巡礼者の連泊を狙った動きがある。ナシクではそこに工業団地の商用とワイナリー観光が重なる。
市内48室はKeys Caféの朝食と3区画の宴会場が回転の中心になる。湖畔71室は屋外芝生を使う婚礼・社内合宿が単価を押し上げる。乾燥野菜や即席の惣菜素材、菜食に対応した調味料は、朝食ビュッフェと大量調理の両方で数量が読める。供給提案の入り方は2通りで、Accorがジャイプル近郊アチロルで150室のNovotelを開発する契約に署名し、開業を2031年に見込んでいる案件のように建設前から会場仕様に入る型と、チェンナイのRadisson Blu GRTが着席750名・立食1,250名の無柱宴会場を新設して婚礼需要を取りにいった動きのように既存棟の増強局面で入る型がある。ナシクの2軒は開業済みで、狙いは後者に近く、取引先もまだ固まっていない。
受託運営の物件でまず確かめたいのは、食材とアメニティの発注権限がオーナー側か、運営を担うカーネーション・ホテルズ側かだ。標準仕様が効く品目と支配人の裁量で決まる品目は分かれるので、両館の総支配人と本部調達の双方に当たりたい。
投資家向け資料の第1四半期の署名13件・合計1,020室のうち、マハラシュトラ州は3件ある。
| 署名案件(2026年4〜6月) | 所在 | 客室数 |
|---|---|---|
| Lemon Tree Hotel, Ahilyanagar | アヒリャナガル | 95 |
| Lemon Tree Resort, Igatpuri | イガトプリ | 90 |
| Lemon Tree Resort, Tadgaon | タドガオン | 110 |
イガトプリはナシク県の15あるタルカ(郡)の1つで、ムンバイ―ナシク間の西ガーツ山中にある。リゾート名義の署名が続くことから、同社がこの一帯で見ているのは出張需要よりも週末と祝祭の滞在だと読める。
現実的な次の一手は、ナシクの2軒に同じ提案書を2通出すのではなく、市内型には朝食向けの素材、湖畔型には婚礼・宴会向けの大量調理素材と、用途を分けた仕様書を用意することだ。あとは四半期ごとの投資家向け資料で、州内のどこが次に署名されたかを拾う。第1四半期に開業した受託・フランチャイズ6軒(334室)は平均30か月前の署名だと同社が開示しており、署名の公表から厨房が動くまでの準備期間は十分にある。