日産自動車が2026年9月1日、インドのチェンナイ工場で生産する新型SUV「テクトン」の輸出を開始し、初回として1,300台超を南アフリカ・ブータン・ネパールへ送り出した。インドを日系ブランドの完成車輸出ハブとして使う動きで、現地生産→周辺国供給という型が一段はっきりした。インドで作って外へ売る設計を考える日本企業に、実際の第一歩を見せる事例だ。
日産は9月1日、チェンナイのルノー・日産工場で生産するテクトンの海外出荷を始め、初回分1,300台超を南アフリカ・ブータン・ネパールへ発送した。テクトンはルノー・ダスターと車台(CMF-Bプラットフォーム)を共有するモデルで、インドでは2026年7月に発売されたばかり。日産は「生産の増加に伴い、より多くの海外市場がテクトンを受け取る見込み」としており、輸出先を段階的に広げる構えだ。インドでの価格はグレードにより10.49ラーク〜18.59ラークルピー(=約105万〜186万ルピー、2026年9月時点・₹1≈¥1.66換算で約174万〜309万円)。
日産はグローバル再建策「Re:Nissan」を進めるなかで、インドを生産・輸出の要衝に位置づけている。チェンナイの工場はルノーとの合弁で長年培った生産基盤があり、量産と品質の実績がある。テクトンの輸出開始は、国内で売れ筋を確立しつつ、同じ工場から周辺国・新興国へ流す「一工場・多市場」の運用を実際に回し始めたことを意味する。8月のインド国内販売は3,426台(前年同月比147%増)と伸びており、内需の立ち上がりと輸出開始が重なった局面だ。
初回の送り先が南アフリカ・ブータン・ネパールという組み合わせは示唆に富む。いずれもインドから物流距離が近いか、右ハンドルや道路事情がインド仕様と親和的な市場だ。まず近隣・類似市場で少量を流し、生産が増えるにつれ供給先を足していく——この段階的な広げ方は、いきなり多市場へ張らずに稼働と品質を固める堅実な打ち方だ。完成車の輸出は、部品の現地調達比率や物流設計と一体で決まるため、サプライヤー側にも「どの市場向けにどの部材が要るか」を読む視点が要る。
報道では、テクトンの輸出開始が日産のインド活用を象徴する動きとして扱われ、今後の輸出先拡大に含みが残された。一方で、対象となる海外市場の総数や各国への配分台数までは公表されていない。ここでは確認できた初回1,300台超・三カ国という事実に絞り、裏の取れない市場数は断定しない。
テクトンの事例が投げかけるのは、インドを国内販売の場としてだけでなく、周辺国・そして日本本国への供給起点として設計できるか、という問いだ。半導体の後工程でインド企業が日本の車載チップ組立を受注する逆流や、ユニクロがインドを調達ハブに育てる方針と重ねると、インドは「売る市場」であると同時に「作って外へ出す拠点」に変わりつつある。日系メーカーは、現地生産の投資判断を国内需要だけで測らず、輸出込みの稼働率で評価する必要がある。
印発の完成車輸出が定着すれば、車載部品や物流、検査・保証の裾野が厚くなる。二輪では日本勢が印EVスクーターで苦戦する一方、四輪では現地生産と輸出で存在感を保つ構図があり、カテゴリーごとに勝ち筋が分かれている。完成車の輸出増は、そのまま部材・輸送・アフターの需要に波及する。
テクトンの輸出開始は、インドを対外供給の起点に使う具体例だ。次に薦めたいのは、インド進出の採算を国内販売だけで見積もらず、周辺国・本国向け輸出を織り込んだ稼働率で投資判断を組み直すこと。輸出前提なら、立地は港湾・幹線への近さ、部材は輸出先の規格適合まで含めて詰める必要がある。