2026年2月、インドの二輪EV市場に日本の大手3社がついに出そろった。しかしその結果は衝撃的だった。ホンダ・スズキ・ヤマハの合計販売台数はわずか824台。同月にインドの地場ブランドが販売した台数は8万378台。約97倍の差がついた。日本の二輪メーカーは、かつて圧倒的な強さを誇ったインド市場で、EVシフトという新たな戦場で完全に出遅れている。
衝撃の数字——日本3社合計824台の現実
業界団体SIAM(インド自動車工業会)の2026年2月データによると、日本の二輪大手3社の電動スクーター出荷台数の合計は824台にとどまった。個別に見ると状況はさらに深刻だ。
ヤマハは2026年2月に「EC-06」でインドEV市場に参入したが、初月の出荷はわずか92台だった。スズキは2026年1月に「e-Access」で参入し、2カ月合計でも1,435台にとどまっている。そして最も衝撃的なのがホンダだ。2025年2月にActiva Eを投入した業界最大手が、2026年2月には電動スクーターを1台も出荷しなかった。過去11カ月の累計でも2,783台と、月平均250台程度という極めて低い水準に甘んじている。
圧倒するインド地場メーカーの勢い
対照的に、インドの地場メーカーは電動スクーター市場を完全に掌握している。TVS Motor一社だけで2025年度に年間40万台規模を販売し、iQubeシリーズでインドEVスクーター市場のトップシェアを堅持している。バジャジ・オートのChetakも月間1万台以上のペースで成長を続けており、TVSとバジャジの2社で市場全体の約46%を占める支配的な地位を築いている。
さらにアザー・エナジー(Hero MotoCorp出資)やOla Electricなどの新興メーカーも存在感を示しており、インドのEVスクーター市場は地場メーカー主導で急拡大している。2025年度のインドEVスクーター市場全体の販売台数は年間100万台を超える規模に成長しており、2030年には年間500万台に達するとの予測もある。
なぜ日本メーカーはここまで出遅れたのか
日本の二輪メーカーがインドのEVスクーター市場で苦戦する原因は複合的だ。第一に、参入タイミングの遅さがある。TVSは2022年にiQubeを本格展開し、バジャジも2020年からChetakを販売している。一方、ホンダのActiva Eは2025年2月、スズキのe-Accessは2026年1月、ヤマハのEC-06は2026年2月と、地場メーカーに2〜4年の先行を許した。
第二に、価格競争力の問題がある。インドのEVスクーター市場はFAME II補助金(2024年終了)とそれに続くPM E-Drive制度によって形成されてきたが、地場メーカーはこれらの補助金を最大限に活用した価格設定を早期から実現していた。日本メーカーは補助金制度への対応が遅れ、消費者に訴求する価格帯を提示できていない。
第三に、製品コンセプトの問題だ。日本メーカーのEVスクーターは、既存のガソリンスクーターの車体をベースに電動化したモデルが中心で、インドの消費者が求める航続距離(100km以上)やスマートフォン連携などの先進機能で地場メーカーに劣る面がある。TVSのiQubeやアザーの450シリーズは、最初からEV専用設計で開発されており、この設計思想の違いが性能差として表れている。
ガソリン車では依然として強い——しかし時間は限られている
注意すべきは、ガソリンスクーター市場では依然としてホンダが約38〜39%のシェアで首位を維持していることだ。Activa シリーズは月間20万台以上を販売し続けるインドの国民的スクーターであり、日本メーカーの二輪事業全体が危機に瀕しているわけではない。
しかし、インド政府は2030年までに二輪車販売の30%をEVにするという目標を掲げており、EV化の波は確実に加速している。ガソリンスクーターの市場が縮小するのは時間の問題であり、EV市場での巻き返しがなければ、日本メーカーはインド二輪市場全体でのプレゼンスを徐々に失っていくリスクがある。
巻き返しの可能性——日本メーカーに残された手札
日本の二輪メーカーにとって、インドEV市場での巻き返しは不可能ではない。ホンダは全固体電池を含む次世代バッテリー技術の開発を進めており、航続距離と充電速度で差別化を図る戦略を描いている。スズキはインドでの生産体制を強化し、コスト競争力のあるEVモデルの投入を計画中だ。
ただし、インドのEV市場は「今」動いている。消費者のブランドロイヤルティが形成されつつあるこの時期に、年間数百台規模の販売では存在感を示すことすらできない。販売網の再構築、価格競争力のある専用モデルの投入、そしてデジタルマーケティングの強化など、スピード感のある対応が求められている。
日系企業への示唆
ユニクロやローソンなど、インド市場で果敢に挑戦する日系企業がいる一方で、二輪EV市場では日本メーカーが後手に回っている。この対比は、インド市場攻略における「タイミング」の重要性を如実に示している。成長市場では、完璧な製品を準備してから参入するよりも、早期に市場に入って顧客と共に進化していくアプローチが有効な場合が多い。
インドの二輪EV市場の動向にご関心のある方は、SoJapanまでお問い合わせください。ユニクロのインド成長戦略や、三菱UFJのインド金融投資など、日系企業のインド展開に関する最新動向もご覧ください。