ユニクロ、インド事業を10倍規模へ拡大目標

この記事の要約
ファーストリテイリング傘下ユニクロが2026年3月、インド事業を現状から10倍規模に拡大する目標を発表。FY2026売上は前年比44%増見込みで1,000Cr突破予定。現在18店舗展開。調達比率を15〜16%から30%へ引き上げる計画。

ファーストリテイリング傘下のユニクロは2026年3月、インド事業を現状から10倍規模に拡大する目標を発表した。FY2026(2025年9月期)は前年比44%増の売上成長を見込んでおり、インドを「グループにとって極めて重要な市場」と位置づけている。販売の急拡大と並行して、インドをグローバル調達の拠点に育てるという二軸戦略が、同社のインド事業の全体像だ。

目次

急成長するユニクロのインド事業——売上1,000クローレ突破へ

ユニクロはインドで現在18店舗を展開しており、年間約3店舗のペースで着実に出店を続けてきた。2026年3月にはムンバイと新デリーで2店舗を新規オープンし、今後はこの出店ペースをさらに加速させる方針だ。今期の売上高は1,000クローレ(約170億円)を突破する見通しで、インドにおける日系アパレルブランドとして最大級の存在感を示している。

この成長速度は際立っている。ユニクロのインド進出は2019年で、当初はデリーNCRの1店舗からスタートした。わずか7年で売上高1,000クローレを達成するペースは、ファーストリテイリングの全グローバル市場の中でも突出している。進出以来のCAGR(複合年成長率)は60%超に達しており、南アジア市場の潜在力を証明する数字だ。

インドをグローバル調達の拠点へ——調達比率30%の目標

販売拡大と並行して、ユニクロはインドでの調達比率を現在の15〜16%から30%へと引き上げることを目指している。インド南部の温暖な州での供給網を拡充しながら、リネン素材の衣料品やAIRism(吸湿速乾)ラインなど、インドの高温多湿な気候に適した商品の現地調達・開発を強化する計画だ。

インドは世界第2位の繊維輸出国であり、特にコットン、リネン、シルクなどの天然繊維において質の高いサプライチェーンを有している。ユニクロがインドからの調達を倍増させる計画は、中国依存の軽減というリスク管理と、インドの繊維産業のコスト競争力を活用するという二つの目的を同時に達成するものだ。

注目すべきは、この調達拡大がインド向け商品の生産だけでなく、第三国(東南アジア、中東、欧州)への輸出も視野に入れている点だ。インドで生産し、インドで販売し、さらに世界に輸出するという三層構造は、為替リスクの分散と利益率の最適化を実現するモデルとなる。

商品ローカライズの実態——暑さ対策と色彩の現地化

ユニクロのインド戦略を支えるのが、徹底した商品ローカライズだ。インドの気候は年間の大半が高温多湿であり、日本で冬季の主力であるHeatTech製品の需要は限定的だ。代わりにユニクロがインドで推すのは、AIRism(吸湿速乾)やドライEXなどの暑さ対策製品群である。

さらに、色彩戦略にもインド特有の対応がなされている。インドの消費者は鮮やかな色合いを好む傾向があり、ユニクロは日本市場よりもカラフルなラインナップを展開している。ディワリやホーリーなどの祝祭シーズンに合わせた限定商品の投入も行っており、グローバルブランドでありながらインドの文化に寄り添う姿勢を鮮明にしている。

出店戦略——量より質の「少数精鋭」モデル

ユニクロのインド出店戦略で注目すべきは、「量より質」のアプローチだ。ZaraやH&Mが30店舗以上を展開する中、ユニクロは18店舗という相対的に少ない店舗数で同等以上の成長率を達成している。1店舗あたりの売上生産性を極限まで高め、確実に利益を出せる立地にのみ出店するという戦略だ。

出店先はデリーNCR(現在7店舗)、ムンバイ、バンガロール、プネーの4都市圏に集中している。いずれもインドの中でも一人当たり所得が高く、グローバルブランドへの受容性が高いティア1都市だ。今後は南インドのチェンナイやハイデラバードへの進出も視野に入れており、2026年度中に28〜30店舗まで拡大する計画を明らかにしている。

競合環境——Zara、H&Mとのポジショニングの違い

インドのファストファッション市場では、Zara(Inditex)とH&Mが先行して都市部に浸透している。しかし、ユニクロのポジショニングは両社とは明確に異なる。Zaraがトレンド追従型、H&Mが低価格大量販売型であるのに対し、ユニクロは「LifeWear」というコンセプトのもと、ベーシックでありながら機能性に優れた衣料を提供する。

この差別化はインド市場で特に有効だ。インドの暑い気候では、トレンド性よりも着心地と機能性が重視されやすい。AIRismの吸湿速乾性やUVカット機能は、インドの消費者にとって実用的な価値として訴求しやすく、リピート購入につながる。

10倍成長の実現可能性——課題と展望

ユニクロが掲げる「10倍成長」は、現在の売上高約1,000クローレから1万クローレ(約1,700億円)への到達を意味する。この目標を達成するには、店舗数の大幅拡大(100店舗以上)、EC(電子商取引)チャネルの強化、そしてティア2都市(ジャイプール、アーメダバード、コーチなど)への展開が不可欠だ。

EC戦略は特に重要だ。インドではMyntraやAjioなどのファッションECプラットフォームがアパレル購買の主要チャネルとなっており、オンライン販売の比率はアパレル市場全体の25〜30%に達している。ユニクロがこれらのプラットフォームとどう連携するか、あるいは自社ECを軸にするかで、成長速度が大きく変わる。

もう一つの課題は、ティア2・ティア3都市の消費者へのアプローチだ。これらの都市では価格感度がティア1都市よりも高く、ユニクロの現在の価格帯では浸透が難しい可能性がある。インド専用の低価格ラインの投入や、アウトレット戦略の検討が必要になるかもしれない。

日系企業への示唆

ユニクロのインド事業の成功は、日系ブランドがインドで戦えることの証明だ。しかし同時に、その成功は綿密なローカライズ、機能性という明確な差別化要因、そして「量より質」の出店哲学に裏打ちされたものであることを見逃してはならない。インド進出を検討する日系企業にとって、ユニクロモデルは最も参考になるケーススタディの一つである。

インド市場でのブランド展開やマーケティング戦略にお悩みの方は、SoJapanへお気軽にご相談くださいユニクロの10倍成長宣言の全容や、日系化学メーカーのインドシフトもご参照ください。

参考情報

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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