2026年9月21日、ハイフォン市で第7回地域物流フォーラムが開かれた。ホー・クオック・ズン副首相は優先整備すべき玄関口港としてラックフェン、ナムドーソン(ともにハイフォン市)、カイメップ-チーバイ(ホーチミン市)を名指しし、市党委書記レー・ゴック・チャウ氏は同市の戦略インフラとしてラオカイ〜ハノイ〜ハイフォン鉄道や、バクニン省のザービン国際空港へつながる高速道路網を挙げた。
北部に工場を置く日本企業には、輸出ルートを港・鉄道・空路で組み替える話に見える。ただし並んだ固有名は、稼働中のものと書類が動いているだけのものが混在する。混ぜたまま来期の計画を立てると、使えない能力を前提に見積もりを取る。
ズン副首相は3港について、行政手続の改革と国際トランシップ設備への投資を進め、主要船社や国際ターミナル運営者、多国籍企業の配送センターを呼び込むよう求めた。呼び込みを求める段階であって、誰がいくら出すかは示されていない。参加者は600人近く(同市発表)。VCCIのホー・シー・フン会長は政治局決議27-NQ/TW(2026年8月28日)が紅河デルタを一つの発展空間と位置づけたと説明した。
発表で副首相が役割を割り当てた地方はハノイ市・バクニン省・フンイエン省・ニンビン省・クアンニン省・ハイフォン市の6つだった。起点の英文報道は同じ地域を「11の省・市、人口約2,300万人、GDPの29%超」と紹介する。この数字を引くなら、どの時点の行政区画かを確かめたい。
チャウ書記が挙げたうち空港に関わるのは「つながる高速道路網」で、空港本体はバクニン省側の事業だ。並記されると同一主体が整備するように読めるが、発注先も許認可の窓口も別だ。副首相が挙げた制約も具体的で、倉庫用地の不足と中小倉庫の分散、ICDと港の統合の遅れ、鉄道接続の未完が並んだ。南部では上組が自前の冷凍冷蔵倉庫を計画しているが、あちらはホーチミン市で着工が2027年4月、竣工が2028年9月の予定だ。北部の倉庫事情がそこで解決するわけではない。
2026年9月15日付の報道によれば、同港区は3社が6バースを運営し、総延長は2.4kmである。1・2番の運営者について、本稿で参照した資料は社名に触れていない。金額は1 tỷ=10億ドンで換算し、円は同年9月25日のexchangerate-api.comのレート(1円=約163.5ドン)による。
| バース | 投資・運営 | 2026年9月時点の段階 |
|---|---|---|
| 3・4番 | ハイフォン港湾(Cảng Hải Phòng) | 2025年5月13日落成。約7兆ドン(約428億円)、延長750m、水深マイナス16m |
| 5・6番 | ハテコ(HHIT) | 2025年4月に商業運航開始。敷地73ha、主要バース900m |
| 7・8番 | タンカン・サイゴン | 14兆7,660億ドン(約903億円)。年末までに着手し得る段階 |
| 9〜12番 | ラックフェン港投資社 | 146.2ha、24兆8,460億ドン(約1,519億円)。年内着工を目指し手続き中。9・10番は2030年まで、11・12番は2031〜2035年 |
計画値ではなく実績値を持つのが5・6番だ。運営会社HHITが2026年1月19日に公表したところでは、11か月分として80.8万TEUを扱い、月間ピークは108,430TEU、これをSTSクレーン5基体制による第1期の設計能力の130%超と説明している。公表資料は11か月の起点を書いておらず、5・6番の供用開始を2025年4月とする報道とは月数が合わない。トラック予約システム利用率100%、トラックの滞留時間16分(同社の示す市場平均35分)も併記された。自己申告だが、桁と期間が明示されており交渉に使える。
優先港に挙がったナムドーソンは、ビングループが2025年11月に環境影響評価報告書を意見聴取のため公開した段階にある。調査面積4,300ha超、うち港区1,134haに21バース、総投資373兆8,400億ドン(報告書では約142億ドル)。第1期(2030年まで)は29兆1,000億ドンで、係船岸2基・延長900m・物流センター535haにとどまる。
能力は2030年に年200万TEU、2035年に2,400万TEU、2040年に4,200万TEUとされる。ベトナム港湾協会の集計では2023年の国内港湾全体が1,920万TEU超で、2035年の計画値だけで当時の全国の約1.25倍、2040年は約2.2倍にあたる。3年前の実績を分母にした比率なので、目安として見ておきたい。南部で全長約14kmの海上横断路を着工済みのビングループの計画とはいえ、着工前の構想と進行中の工事は荷主にとって意味が違う。
ザービン国際空港は2025年12月の国会決議256/2025/QH15で投資方針が承認され、施工が進む。面積1,900ha超、総投資約196兆ドン(約1兆2,000億円)、ICAO 4F級。2026年9月14日時点で1,800ha超(計画の94%超)の用地取得が済み、滑走路・誘導路は用地100%で路床工事に入った。残りはバクニン省が収用と補償を続けており、引き渡しの完了は2026年内が目標とされている。事業主体はマスタライズ・アビエーション社。
第1期で優先されるのは飛行場区域・VIP来賓棟・管制塔で、狙いは2027年APEC首脳会議の特別機・国際代表団への対応にある。商業運航はその後の仕上げ工事を経てからだ。2030年の計画能力は年間旅客3,000万人・貨物160万トン。参考として専門家が示した2025年のベトナム航空市場は旅客約8,350万人・貨物150万トンだが、こちらは全国の実績で、1空港の6年先の計画値と同じ土俵の数字ではない。バクニン省の電子部品サプライチェーンが厚い地域でも、計画能力が便数や運賃に直結するわけではない。
この鉄道は2025年2月の国会決議で総額203兆2,310億ドン(当時83.7億ドル)、本線391km近く・支線27.9kmとして動き出した。2026年8月24日、国会が投資方針の調整を可決し、総額は289兆3,390億ドン(約1兆7,700億円)へ、差額86兆1,080億ドン(約5,266億円)が積み増された。本線は約363kmへ26km短縮、支線は約63kmへ35km増えた。荷主に効くのはバクホン駅〜ナムハイフォン駅を当初から複線で造る22兆8,000億ドンだ。段階整備案と比べると約12兆5,000億ドン安く済み、この区間の運行速度は時速95kmから120kmへ上がる見込みだと政府は説明する。いま走っている線が速くなるという話ではない。完成は遅くとも2030年の基本完成を目指す努力目標として示されている。
港湾に接続する支線は当初ディーゼル機関車を使い、のちにクリーンエネルギー機関車へ替える方針が示されている。輸送モード別に排出量を報告している企業は、鉄道に替えた区間の係数が当面ディーゼル前提になる点を織り込みたい。
2025年2月の決議は通過先をラオカイ、イエンバイ、フート、ビンフック、ハノイ、バクニン、フンイエン、ハイズオン、ハイフォンの9つと挙げていた。2026年8月の決議が挙げるのは6つで、イエンバイ・ビンフック・ハイズオンの名は挙がっていない。路線の26km短縮と行政単位の変更が同時に起きており、原因をひとつに決めつけることはできない。HHIT公式サイトの所在地も「カットハイ特区」で、2025年5月の報道の「カットハイ県」と違う。
同じ資料に稼働中の6バース、手続き中の6バース、意見聴取中の新港、施工中の空港が同じ濃度で並ぶ。分けて聞く項目を挙げる。
| 確かめること | 聞く相手 | 確かめないと起きること |
|---|---|---|
| 現在荷役中のバースか、計画か | 港湾運営会社の営業窓口 | 使えない岸壁を前提に計画を組む |
| 能力の測り方(設計値か実績か) | 同上 | 月間ピークを年間能力と取り違える |
| 鉄道支線の牽引方式と供用時期 | 建設省・鉄道事業の所管窓口 | 排出量報告の前提が崩れる |
| 空港の第1期で供用される機能 | バクニン省の投資窓口 | 公用機向けの整備を商業貨物の開始と読む |
| 契約書・許認可の省名の現行表記 | 所管の行政窓口 | 書類の差し戻しや住所不一致 |
ザービン空港の商業貨物の開始時期を示す日付は、今回の発表からは読み取れない。空路に高付加価値品を載せている企業ほど、既存ルートを維持したまま貨物ターミナル運営者が決まった時点で見直す二段構えが安全だ。バクニン省の2026年上半期の輸出入額は約1,064億ドル見込みで需要は厚いが、厚い需要と使える設備は別の話である。
今週動かせるのは商談ではなく棚卸しだ。船積書類・立地証明・倉庫契約の省名と区分を一覧にし、2025年以降に表記が変わったものへ印をつける。ここが揃わないと、どの港を使うかの話の前に書類で止まる。