英カジュアルダイニングのPizzaExpressが2026年9月、ベンガルール5店目をForum South Bengaluruに開き、インドの店舗数を40に伸ばした。全国にまばらに散らすのではなく、一つの主要都市を深掘りしてから広げる——この密度重視の出店順は、外資チェーンがインドで根を張るときの定石を示す。日本の外食・食ブランドが「まず何店で1都市を固めるか」を考えるときの参照点になる。
Restaurant Indiaの2026年9月17日の報道によると、PizzaExpressはベンガルールのForum South Bengaluruに市内5店目を開業し、インド全体の店舗数が40に達した。ベンガルール市内ではインディラナガル、オリオンモール、Phoenix Mall of Asiaなどに既存店を構える。看板はシグネチャーのドウボール、生地が薄く大ぶりでパリッとしたロマーナピザ、手打ちパスタなど。2人向けのグルメピザは495ルピー(2026年9月時点、₹1≈¥1.66換算で約820円)から。営業は毎日11時30分から23時30分まで、店内飲食とデリバリーに対応する。
PizzaExpressは1965年にロンドンのウォードー・ストリートで生まれ、英国内に330店超を構え、13カ国で展開する老舗チェーンだ。素材は、イタリア・パルマ産サンマルツァーノトマトのパッサータや、ミシュラン星付きシェフが手がけたカラブレーゼピザなど、品質を前面に押し出す。インド事業を統括する運営元GIHGのグループCEOロハン・ペウェカール氏は、ベンガルールが同社にとって戦略的に重要な市場だと述べ、ブランドCEOのクマール・アシット氏は、すべては良質な素材と丁寧な手仕事から始まると強調している。
全国40店のうち5店を単一都市ベンガルールに集める構成は、面を薄く広げるのではなく、一つの都市の商圏を厚く押さえてから次へ進む密度戦略を意味する。同一都市に複数店があると、認知・配送効率・食材の供給ロットの面で規模の経済が働き、ブランド体験の均質化もしやすい。インディラナガルやモールといった集客力のある立地を都市内で選び分け、住宅地・商業地の双方から客を拾う——この都市内の立地の使い分けが、密度戦略の実務的な中身になる。
Restaurant Indiaは今回の出店を、ベンガルール5店目でインド40店に到達した節目として報じ、運営元GIHGの両CEOのコメントを紹介している。報道の範囲では、インド進出の開始年や今回の投資額は明かされていない。ブランド側は、ベンガルールの戦略的重要性と素材・手仕事の品質を前面に出しており、単なる出店数の追求ではなく、都市を選んで密度を上げる姿勢を示している。
インドで外食を広げるとき、全国に散発的に出すより、まず1都市に必要な店数を集めて密度を作るほうが供給・認知の効率がよい。海外ピザチェーンがインドで再上陸し店舗網を組み直す動き(Papa John’s、ギーロースト・ピザでインド再上陸)や、外資QSRがフランチャイズで本格参入する型(German Doner Kebab、インド1号店をバンガロールに出店)と並べると、都市の選び方と密度の作り方がブランドごとに違うのが分かる。日本の外食・食ブランドは、進出初期に「どの都市を、何店で固めるか」を先に決めておくと、供給網と人員の設計がぶれない。
同一都市に店が集まるほど、同じ食材・資材を反復して調達する必要が生まれる。中華QSRが50都市規模へ密度を上げる展開(中華QSR「Chinese Wok」が50都市目に到達)のように、多店化は原料・包材の安定供給を求める。イタリア産トマトのように品質の要となる素材を扱う日本の食品事業者にとって、都市密度の高いチェーンは反復受注の入り口になり得る。
PizzaExpressの全国40店・ベンガルール5店という構成は、面より先に密度を作る出店順を具体的に見せた。インド進出を検討する日本の外食・食ブランドにとって、示唆は明快だ。次の一手として、全国の総店舗目標だけでなく「1都市あたり何店で固めるか」という密度の目標を出店計画に組み込み、最初に攻める都市の中で住宅地・モールといった立地を使い分ける設計をおすすめする。