日本の総合商社である双日が、ベトナムの空港サービス会社Taseco Air Services(Taseco Airs、ホーチミン証券取引所〈HOSE〉: AST)の株式27.64%を取得した。取得日は2026年9月14日、取引額は約1兆500億ドン(約4,050万ドル)。親会社Taseco Groupが持つ51%に次ぐ、第2位株主になった。
Taseco Airsは空港ターミナル内の商業サービスを運営する会社だ。工場でも工業団地でもなく、空港の中で回っている事業に、日系商社が3割弱の持ち分で入った。
双日の届け出は、Taseco Airs株1,492.7万株の取得。取引額は The Investor、DealStreetAsia とも約1兆500億ドン(約4,050万ドル)としている。DealStreetAsiaはこれとは別に市場データも引いており、9月14日に相対取引で動いたAST株は約1,493万株、金額は1兆530億ドン弱と書いている。DealStreetAsiaでは、ファンド2社の売却額と市場集計の金額が併記されている形だ。
1株あたりの単価は、The Investorが70,500ドン超(2.7ドル)、DealStreetAsiaが約70,500ドンとしている。1,492.7万株に70,500ドンを掛けると1兆523億ドンで、単価が「70,500ドン超」ならその積は1兆523億ドンを上回り、DealStreetAsiaの市場データ「1兆530億ドン弱」の内側に収まる。
ドル換算の基準は報道全体で約26,000ドン/ドルに揃っている。純利益2,210億ドン=850万ドル、第2四半期売上4,790億ドン=1,840万ドルがいずれも約26,000ドン/ドル。取引額の約1兆500億ドン÷4,050万ドル=約25,900ドン/ドルも、丸めの範囲で同じ水準だ。
| 取得企業 | 双日(Sojitz Corporation) |
| 対象企業 | Taseco Air Services JSC(Taseco Airs) |
| 上場市場・ティッカー | ホーチミン証券取引所(HOSE)・AST |
| 取得株数 | 1,492.7万株 |
| 取得比率 | 27.64% |
| 取引額 | 約1兆500億ドン(約4,050万ドル) |
| 1株あたり単価 | The Investor: 70,500ドン超(2.7ドル)/DealStreetAsia: 約70,500ドン |
| 取引日 | 2026年9月14日 |
| 取引形態 | 相対取引 |
| 取引後の位置 | Taseco Group(51%)に次ぐ第2位株主 |
| 公開買付け | 株主が双日の実施義務を免除 |
双日が取得した27.64%は、2つの外資ファンドが手放した持ち分とちょうど一致する。PENM IV Germany GmbH & Co. KGが保有していた952.7万株(17.64%)の全量と、STIC Pan-Asia 4th Industry Growth Private Equity Fundが持っていた540万株(10%)の全量だ。DealStreetAsiaによると、PENM IVは2017年から、STICは2019年からTaseco Airsの株主だった。
952.7万株+540万株=1,492.7万株、17.64%+10%=27.64%。株数も比率も取得分と売却分が一致する。DealStreetAsiaは金額の内訳も示しており、PENM IV分が約6,720億ドン、STIC分が約3,810億ドン。足すと1兆530億ドンで、丸めた取引額の約1兆500億ドンと同じ水準に収まる。
| 売り手 | 売却株数 | 比率 | 金額 |
|---|---|---|---|
| PENM IV Germany GmbH & Co. KG | 952.7万株 | 17.64% | 約6,720億ドン(2,580万ドル) |
| STIC Pan-Asia 4th Industry Growth Private Equity Fund | 540万株 | 10% | 約3,810億ドン(1,460万ドル) |
| 合計 | 1,492.7万株 | 27.64% | 約1兆500億ドン(約4,050万ドル) |
DealStreetAsiaによると、Taseco Airsの株主は9月に入ってから2ファンドの持ち分を双日へ譲渡することを承認し、あわせて双日が公開買付け(TOB)を実施する義務を免除した。免除の根拠は報道されていない。
同じ2026年に日系企業がHOSE上場企業の株式を買った案件と並べると、手続きの差が分かる。コクヨはベトナム文具最大手Thien Long Group(HOSE: TLG)の65.01%を約1.9億ドルで取得する計画で、筆頭株主から46.82%を買い、残る18.19%は一般株主から10月から11月にかけてTOBで集める予定を公表している。双日の場合は、株主が譲渡を承認した際にTOB実施義務が免除されている。
家電量販ディエンマイサインのIPOと並べると、会社に資金が入るかどうかが違う。DMXは新株発行で13.315兆ドンが会社に払い込まれ、上場後もMWGが約86%を保有した。今回はファンド2社から双日への既存株の譲渡で、Taseco Airsに資金は入っていない。親会社が過半を握ったまま外部の大株主が入る点だけが共通する。Taseco Groupの51%と双日の27.64%を合わせると78.64%になる。
Taseco Airsは2005年に設立され、2018年にホーチミン証券取引所へ上場した。事業は非航空系(non-aviation)の空港内商業サービスで、報道が列挙するのは空港内小売、免税店、飲食、ビジネスラウンジ、広告、航空ロジスティクス、機内食だ。
展開空港は、The Investorがノイバイ、タンソンニャット、ダナン、フーコックの4空港を例示し、DealStreetAsiaはこれにフーバイとカムランを加えた6空港を例示している。どちらも「〜を含む」という書き方で、網羅リストではない。
2026年上期のTaseco Airsの連結売上高は1兆400億ドン超(3,981万ドル)で前年同期比33%増、純利益は2,210億ドン(850万ドル)で45%増。第2四半期の売上高は4,790億ドン(1,840万ドル)で22%増だった。
伸びの差が大きいのはラウンジだ。VIPラウンジの売上が67%増、レストラン・ファストフード・免税店の売上が15%増と報じられている。上期の1兆400億ドンから第2四半期の4,790億ドンを引くと第1四半期は約5,610億ドン。上期全体が33%増で第2四半期が22%増なので、計算すると第1四半期の伸び率は33%を上回る。伸びの山は上期の前半に寄っていた。
売り手の2ファンドは、売上と利益が2桁で伸びている局面で全量を手放した。今回の2本の記事に、双日側のコメントは載っていない。
双日のベトナム事業は1986年に始まっている。The Investorが挙げる主な持ち分は次のとおりだ。
工業団地はLong Thanh Golf Investment and Trading(GLT)と2023年に覚書を結び、Long Duc 3への拡大も準備している。低温物流では上組が2026年に冷凍冷蔵倉庫の新設とCLK COLD STORAGE持分50%の取得を発表しており、日系の投資が重なる領域になっている。