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セントラルがベトナムへ新規35億ドル、出店の重心はティア3・4都市に

2026.09.24

本記事は2026年9月24日時点で確認できたベトナム現地の公的資料・報道をもとに作成しています。ベトナムは税制・規制や行政区画の改正が頻繁で、記載内容がその後変更されている場合があります。実際の事業判断にあたっては、所管省庁・現地の専門家など一次情報源で最新の内容をご確認ください。

タイの流通・不動産コングロマリット、セントラル・グループ(Central Group)が、今後10年でベトナムへ約35億ドルを追加投資する計画を明らかにした。2012年の参入以降に投じてきた約15億ドルと合わせ、累計は約50億ドルになる。発表は9月17日、バンコクで開かれた「Vietnamese Week in Thailand」第10回の開幕に合わせた記者説明会で、グループ社長のWallaya Chirathivat氏と、Central Retail VietnamのCEOオリビエ・ラングレ(Olivier Langlet)氏が説明した。

欧州中央銀行の参照レートから算出した2026年9月23日の1ドル=157.92円で換算すると、新規35億ドルは約5,500億円、累計50億ドルは約7,900億円にあたる。日本企業の読み筋を変えるのは総額ではなく配分と行き先だ。小売に15億ドル、不動産・ホテルに20億ドル。出店の重心としてラングレ氏が名指ししたのは、ハノイ・ホーチミンではなくティア3・ティア4都市だった。

新規35億ドルの内訳は小売15億ドルと不動産・ホテル20億ドル

今回の発表で新しいのは、Central Retail Corporation(CRC、小売)、Central Pattana(CPN、不動産開発)、Centara Hotels & Resorts(ホテル)の3社ぶんをひとつの金額にまとめた点だ。The Nationは、グループがこの3社を束ねた単一の投資額を示したのは初めてだと書いている。配分は2本立てで、小売のCRCが自己資本で15億ドル、残る20億ドルが不動産・ホテル側だ。The Nationは20億ドルを合弁プログラムとして組む前提で、セントラルと現地パートナーがそれぞれ案件の半分を出す想定だと報じた。パートナー候補にはベトナムのSun Groupの名前がChirathivat氏から挙がっている。ただし20億ドルがセントラル側の負担額なのか案件総額なのかは、3紙の記述からは判別できない。

投資の受け皿 金額 時間軸 中身
Central Retail Corporation(小売) 15億ドル(約2,370億円) 3〜5年。The Investorは今後10年 既存300店超に約50店追加。GO!ハイパーマーケットと小型スーパーmini go!が中心
Central Pattana / Centara Hotels & Resorts 20億ドル(約3,160億円) 10〜15年 まず商業・複合開発(The Nation。Bangkok Postはモール・オフィス・ホテルを対象に含めると書く)。合弁を検討、候補にSun Group
新規投資の合計 35億ドル(約5,500億円) 今後10年 累計は約50億ドルに

数字の扱いには注意が要る。The Investorは不動産・ホテル枠を「さらに15億ドル」と記しており、その足し方では小売15億ドルと合わせて30億ドルにとどまり、同紙が掲げる総額35億ドルと5億ドル合わない。Bangkok PostはWallaya氏の説明として20億ドル、The Nationも20億ドルと書いている。本記事は2紙が一致する20億ドルを採った。なお20億ドルの中身も2紙で揃っていない。The NationはWallaya氏の説明として「主に商業・複合開発」でオフィスとホテルは将来の可能性としたが、Bangkok Postは同氏の説明として20億ドルの対象を「モール、オフィス、ホテルといったCPNの物件」と書いている。

ラングレCEOが名指ししたのはティア3・ティア4都市、候補地は約200ヵ所

出店の行き先について、ラングレ氏はこう述べている。「約15年前にベトナムへ入ったときは、当然ながらティア1都市、つまりハノイとホーチミンが中心だった。時間が経つなかで、ティア3・ティア4都市の消費者がより多くの価値と機会を生み出しているのを見てきた」(原文は tier-one/tier-three/tier-four cities)。The Investorは、ハノイやホーチミンといった主要市場が飽和に近づいていることをこの転換の背景に挙げている。

開発チームが洗い出した候補地は4つの都市ティアをまたいで約200ヵ所あり、直近で具体化を進めているのは上位50〜70ヵ所だ。業態は単一ではない。The Nationは「マルチフォーマット」として、ショッピングモール、ハイパーマーケット、路面店、スーパーを立地に応じて使い分けると書いている。同社が現在ベトナムで持つ売場は、食品系のGO!ハイパーマーケット、Tops Market、mini go!、Lan Chi Martと、スポーツ・ファッションのSupersports、GO!モールの複合売場(Bangkok Post)。展開範囲はベトナムの34の省・市のうち26で、単純に引けば未進出は8。省の統合が地方の商圏をどう組み替えたかはダクラク省への5拠点投資の記事で触れた。

2028年までの35〜37店は、6月に報じた33〜37店の計画と同じ範囲に収まる

近い期間の出店数はすでに公表されている。CRCは2028年までに35〜37店を追加し、GO!ハイパーマーケットとmini go!に振り分ける。当サイトが6月にタイグエン省フォーイエンでのGO!モール着工を報じた時点の計画は、2026〜2028年にGO!モール10〜12棟、mini GO!ストア23〜25店だった。足し上げると33〜37店で、今回の35〜37店はその上半分に収まる。近い期間の店数そのものは動いていない。The Nation自身、今回の発表は既に示していた拡大方針に確定的な金額とより長い滑走路を与えたものだと整理している。

割れているのは約50店ぶんの時間軸だ。The Investorは約50店を今後10年としており、Bangkok PostはWallaya氏の説明として「ハイパーマーケットなどを含む約50の新規店舗を3〜5年で開く」とし、The NationもCRCの15億ドルを3〜5年で投じる前提で書いた。3〜5年か10年かで、納入側が棚割り交渉を始める時期は変わる。Bangkok Postは3〜5年を社長発言として明示し、The Nationは資金の投下期間を3〜5年としている。The Investorだけが10年で、どちらが正かは3紙からは決められない。

現状は300店超・26省・売場130万㎡、ハイパーマーケットで約4割

投資が積み上がる土台の数字は次のとおり。

項目 数字
ベトナムの店舗数 300店超
展開範囲 34の省・市のうち26
総売場面積 130万平方メートル超
1日の来店客数 約50万人
従業員 約13,000人(うちベトナム国籍99.5%)
ハイパーマーケット市場シェア 約40%(同社の説明)
過去8年の累計売上 3,300億バーツ超(The Investorの換算で約99億ドル)
ベトナムの近代小売比率 小売全体の13%(ラングレ氏)

店舗数は3紙が揃って「300店超」とした数字を採った。当サイトの6月記事にある「44モール+330店舗」は今回の3紙で裏が取れないため併記していない。

ハイパーマーケットで約4割を握る一方、コンビニ・ミニスーパーでは地場が強い。The Nationはこの領域でWinMartのような国内チェーンが優位を保っていると書いている。マサン・グループ傘下のウィンコマースは2026年1〜4月に348店を純増させ、その86%が農村型のWinMart+だった。小型店の面は地場、大型のハイパーマーケットはセントラルという住み分けが数字に出ている。

ラングレCEOが挙げた障害は土地価格と法解釈の不透明さ

計画の速度について、ラングレ氏は制約を具体的に挙げた。「主な課題は規制に関するものだ。ベトナムは、かなり重かった書類手続きの簡素化で見事な仕事をした。しかし一部の法律は解釈の面で依然として不明確で、より速く成長するにはそれをよく理解する必要がある」。

もうひとつが土地だ。「ベトナムでは土地が非常に高い。だから株主に見合う投資回収を確保するには慎重に投資する必要がある。土地価格と土地の実勢価値の間に乖離があってはならない」。The Nationは、来年の新規開業は4つのティアすべてから出る見込みだとしつつ、そのペースは近代小売を早く通すかどうかという地方当局の姿勢にも左右されると書いている。

現地調達か輸入かで、日本ブランドの棚の取り方は変わる

売場が増えれば日本ブランドの棚も増える、と短絡する前に確認しておきたい数字がある。The Nationによれば、CRCは「Better for Vietnam」の枠組みで2,000社を超える国内サプライヤーと組み、ベトナムの店頭に並ぶ商品の90%超が現地調達だと説明している(同紙はこれを同社の主張として記している)。ただしここでいう現地調達は調達元の話で、ブランドの国籍ではない。ベトナム国内で製造する日系メーカーの商品も現地調達に含まれるため、この90%を「日本ブランドの棚が1割弱」と読み替えることはできない。効いてくるのは、現地に生産基盤を持つかどうかという線引きだ。

その1割弱に入る手がかりは、ラングレ氏がBangkok Postで語った消費者像にある。「ベトナムの消費者は購買判断において、価格の妥当性だけに目を向けるのではなく、品質、安全性、利便性、そして体験をより重視するようになっている」。品質と安全性で説明でき、かつ現地サプライヤーに代替が乏しいカテゴリーなら、9割の現地調達と競合しない場所が残る。現地サプライヤーが厚い生鮮や一次加工で正面からぶつけるのは条件が悪い。

販路の入口として、発表の舞台も見ておきたい。Vietnamese Week in Thailandは9月17〜20日にバンコクのcentralwOrldで開かれ、60社前後(The Nationは60社超)のベトナム企業がコーヒー、茶、魚醤、加工食品などを出展してセントラル・グループの小売部門との商談会に参加した。主催者によれば10年間の参加企業は1,000社超で、うち数社はタイとベトナム両国のセントラルの店舗に採用されている。ただしこれはベトナム企業の海外販路を支援する枠組みで、日本企業やベトナムに拠点を持つ日系企業のベトナム法人が同じ商談会に入れるかは、公表資料からは確認できなかった。

参照元

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