東南アジアのECプラットフォームLazadaが9月のセール「Siêu Sale Thương Hiệu 9.9(9.9ブランド・スーパーセール)」の結果を公表し、ベトナムのVnExpressが2026年9月23日に伝えた。見出しに並ぶのは「10倍」「ほぼ2倍」だが、対越販売を考える日本企業が持ち帰る数字は別にある。ベトナムでは100ドル超の注文がキャンペーンのGMV(流通取引総額)の42%を占め、アフィリエイト(成果報酬型の紹介)経由が全プラットフォームGMVの45%に達した。高い商品が動く場所であり、プラットフォーム全体の流通額の半分近くがクリエイターの紹介リンクを通っている。この2点が出店の予算配分を動かす。
これはLazadaが自社キャンペーンについて公表した数値で、第三者機関の市場調査ではない。GMVの金額そのものは示されず、公表は比率と倍率が中心だ。比較の土台が箇所ごとに違うので、そのまま社内資料に転記すると誤解を招く。
記事に並ぶ2つの数字は別々の物差しで測られている。分けずに読むと、セール効果を実力の伸びと取り違える。
ベトナムのLazMall(正規ブランドが出店する区画)のGMVは、平常日と比べて917%増と書かれ、「10倍超」とも併記されている。917%増は10.17倍(本記事の計算)で、原文の「10倍超」と一致する。注文件数は402%増で5.02倍。GMVの伸びが件数の伸びを上回るので、1件あたりの金額も上がった計算になる。基準はいずれも平常日で、前年の9.9ではない。
一方、平均注文額(AOV)の「ほぼ2倍」は前年同期との比較で、対象は「プラットフォーム上」とだけ書かれ、ベトナム限定か域内全体かは特定できない。前年2025年の9.9についてLazadaが出した英文リリースでは、域内LazMallのAOVの伸びは前年比30%近くだった。範囲が違うので直接は比べられない。
| 指標 | 発表値 | 比較の土台 | 範囲 |
|---|---|---|---|
| LazMallのGMV | 917%増(10倍超) | 平常日 | ベトナム |
| LazMallの注文件数 | 402%増(5倍超) | 平常日 | ベトナム |
| 平均注文額(AOV) | ほぼ2倍 | 前年同期 | 原文は「プラットフォーム上」とのみ記載 |
| 100ドル超の注文の比率 | 42% | キャンペーンのGMV | ベトナム |
| 100ドル以上の注文の比率 | 60%近く | キャンペーンのGMV | 東南アジア全体 |
| アフィリエイト経由の比率 | 45% | 同期間の全プラットフォームGMV | ベトナム |
| アフィリエイト経由の比率 | 30%近く | 同期間のGMV | 東南アジア全体 |
| Tmall・Gmarket商品のGMV | 872%増 | 平常日 | ベトナム |
高単価帯の比率は、ベトナムが域内で突出しているわけではない。むしろ逆だ。
記事がドン建てで示すのは「100ドル=およそ260万ドン」の1か所だけで、割り戻すと1ドル=26,000ドンちょうどになる。ベトコムバンクが2026年9月25日に掲示した電信買相場は1円=159.64ドン、1ドル=25,800ドン。260万ドン÷159.64=1万6,287円で、約1万6,300円が高単価帯の入口になる。同レートなら100ドルは1万6,161円で、記事の丸めとの差は130円ほどだ。
東南アジア全体では100ドル以上の注文がキャンペーンGMVの60%近くを占めたのに対し、ベトナムの100ドル超は42%にとどまる。差は15ポイント以上ある。域内の他国と同じ価格帯の品揃えをそのまま並べれば、ベトナムでは上位帯が売れ残りやすい。同じLazadaでも国ごとに売価を組み直す必要がある。なお42%を、記事は前半で「キャンペーンのGMV」、後半で「ベトナムの総GMV」と書き分けている。狭い前者で読むほうが安全だ。
実務にいちばん効くのはこの比率だ。
ベトナムでは9.9期間の全プラットフォームGMVの45%がアフィリエイト経由だった。東南アジア全体は30%近くだから、1.5倍前後の水準にある。制度側の動きも裏にある。Lazadaは2025年5月、アフィリエイトプログラムに年間1億ドルを投じると発表し、手数料率の引き上げと成果連動のインセンティブ、専用ダッシュボードを打ち出した。9.9・11.11・12.12の大型セール期にボーナスと高率手数料を上乗せする枠組みも同時に示している。45%は、この枠組みが適用される期間の数字だ。
日本ブランドへの含意は単純で、ベトナムのLazada予算は広告費というより紹介手数料の原資になる。原価にセール値引きと紹介手数料を重ねて残る粗利を、セール前に一度は試算しておきたい。クリエイター経由が重くなる流れはLazadaに限らず、Shopeeが外部SNSと紹介リンクをつなぐ動きはShopeeがInstagramで反撃──日本ブランドの越境ECはどう動くかで、動画側からの流入はTikTok Shop、年間GMV約100億ドルでShopeeに肉薄で扱った。
ベトナムの買い手から見ると、LazMallの棚には国内出店と越境の商品が混ざっている。
LazMall上のTmall・Gmarket発の商品群は、ベトナムでGMVが872%増、注文件数は5倍超だった。872%増は9.72倍にあたる(この倍率は本記事の計算で、記事はGMVを%でのみ示している)。Gmarketとの接続は2025年9月29日の発表で、韓国セラーの2,000万点をベトナムを含む5市場で直接買えるようにした。シンセゲグループとアリババグループの合弁を受けた提携で、化粧品ブランドが目玉に挙がっている。
越境商品には配送サービスと30日間の返品が付く。競っているのは値段だけでなく、正規品であることの見せ方と返品条件でもある。記事にはベトナムのLazMallで注文の4件に3件が正規品チャネル経由とあり、公式旗艦店と海外パートナー経由の取引額は平常時の10倍に伸びた。安さで韓国コスメと殴り合うより、正規流通の証明と返品対応の明示に投じるほうが効く。ベトナムECの上位が絞られてきた流れはSendo Farm撤退で読む、ベトナムECの「2強」時代の歩き方で整理している。
本番の1か月前に決め切れないと、結局は値引き額だけの勝負になる。
今回伸びが大きかったのは、いずれもLazMall・公式旗艦店・海外パートナーという正規側の枠だ。一般出店のままでは発表された比率が自社に当てはまらない。域内でGMV100万ドル以上に届いたブランド数は今年の6.6比で8%増え、10万ドル・50万ドルの段も伸びたとある。まず10万ドルの段を目標に置くと出店形態を決めやすい。
Lazadaを傘下に持つアリババグループは2026年4〜6月期から新しいセグメント区分に移った。Lazadaが属したAIDC(アリババ国際デジタル商業)は中国のEC事業やフーマなどと統合され、「Alibaba E-commerce Group」という1つのセグメントになっている。同四半期の決算資料で新グループの調整後EBITAは前年同期比1%減、資料は横ばいと説明している。AIDCは独立したセグメントとして扱われていない。決算からLazada単体の数字を追うのは難しくなった。
| 確認する項目 | 2026年9月25日時点で確認できた内容 |
|---|---|
| 高単価帯の入口 | 100ドル超=約260万ドン=約1万6,300円(1円=159.64ドンで換算) |
| 換算レート | ベトコムバンクの電信買相場、1ドル=25,800ドン/1円=159.64ドン(2026年9月25日) |
| 出店形態 | 発表値の多くはLazMall・公式旗艦店・海外パートナーが対象 |
| 紹介手数料 | 9.9・11.11・12.12はボーナスと高率手数料の期間とLazadaが説明 |
| 返品条件 | LazMallは30日返品。Tmall・Gmarket経由の越境商品にも同様の返品が付く |
| 数値の出所 | いずれもLazadaの自社発表で、第三者機関の計測ではない |
| 社内共有の書き方 | 「平常日比」と「前年比」を必ず分けて記載する |
次の一手は、自社商品のベトナム向け売価を260万ドンの線に当てて並べ直すことだ。単品で届かないなら2点セットやギフト箱で越える構成を作り、そこに紹介手数料と値引きを乗せた粗利を出す。42%と45%は、その作業をしたブランドにだけ意味を持つ。