インドに赴任して最初につまずくのが、醤油と味噌をどこで買うかという問題です。デリーやグルガオンには日本食材の専門店がありますが、都市によって事情はまったく違います。日本語のブログを頼りに店へ行ったら閉店していた、というのもよくある話です。
この記事では、日本食材を手に入れる4つのルートを都市別に整理し、あわせて日本から持ち込む・送るときの制限をインド政府の規則にあたって確認しました。レストランで食べる話はインドの日本食レストラン都市別ガイドにまとめています。
入手方法は大きく4つに分かれます。どれか一つに頼るより、常備品はオンライン、生鮮は専門店、日本でしか買えないものは一時帰国、と組み合わせるのが現実的です。
| ルート | 向いているもの | 弱点 |
|---|---|---|
| 日本食材の専門店 | 生鮮・冷凍、豆腐、日本米、和食器 | デリーNCRに集中。他都市は選択肢が少ない |
| オンライン専門店 | 調味料、乾物、冷凍品のまとめ買い | 配送対象の都市が限られる |
| 大手ECと高級スーパー | 醤油、味噌、寿司米、そばなどよく使うもの | 品揃えが日によって変わる |
| 一時帰国・郵送 | 出汁パック、ふりかけ、菓子 | 牛肉を含む食品は禁止。肉・乳製品も持ち込めない(後述) |
最初の数週間で効いてくるのは、味の土台になるものです。醤油・味噌・出汁・米の4つが揃えば、あとは現地の野菜と肉で日常の食事が回ります。逆に、和食器や特殊な調味料は後回しにしても困りません。
優先順位を決めるうえで意識したいのが、切らしたときに代替が利くかどうかです。
注意したいのは、日本語で検索して出てくる情報が古いことです。ムンバイのPowaiにあった大型スーパーHaikoは閉店しており、高級食材店のFoodhallも2023年に全店を閉めています。以下は各店の公式情報と現地日本人会の現行リストで、2026年8月時点の状況を確認したものです。
インドで日本食材がもっとも手に入りやすいのがデリー首都圏です。日本人駐在員が集まるグルガオンのゴルフコースロード沿いに専門店が並んでいます。
| 店名 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| YAMATO-YA(大和屋) | デリー(Sainik Farm)/グルガオン(Sector 57) | 日本・韓国食材と冷凍の魚・肉。週末は手作りの寿司やパンも並ぶ |
| Sekai Ichiba(世界市場) | グルガオン South Point Mall(Sector 53) | 大根・しそ・ゆずなど生鮮の日本野菜、日本の菓子、和食器まで扱う |
| Kim’s Mart | グルガオン DT Mega Mall(DLF Phase 1) | 韓国食材が主体だが日本の調味料も。輸入の鮮魚・肉が強い |
| Iroha(いろは) | グルガオン M3M 65th Avenue(Sector 65) | 日本式ベーカリー。カレーパンやシュークリームのほか日本米・調味料も置く |
YAMATO-YAは公式サイトでデリーとグルガオンの2店舗を案内しています。ただしデリー店は以前のSafdarjung Enclaveから移転しており、古い情報を頼りにすると行き着けません。訪問前に電話で営業時間を確かめるのが確実です。
専門店ほどの品揃えはありませんが、輸入食品を置く高級スーパーでも基本的な調味料は見つかります。デリーのThe Chanakyaにあった高級食材店Foodhallは閉店し、現在その区画にはLe Marcheが運営するLe Gourmetが入っています。日本語の古い記事でFoodhallを目指すと空振りになります。
ムンバイは日本食レストランの数ではデリーに並びますが、日本食材の専門店という意味では選択肢が限られます。日本語のブログで名前が挙がるPowaiのHaiko Supermarketは閉店しており、この街では高級スーパーの輸入コーナーと卸・オンラインを組み合わせるのが現実的です。
| 店名 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| Freshpik | Powai(Hiranandani Gardens内) | リライアンス系の高級スーパー。日本・韓国・タイなどの食材コーナーがある |
| Food Square | Santacruz West(Linking Road)/Worli | 旧Foodhall旗艦店の跡地にできた大型グルメ店。チーズやベーカリーが充実 |
| Vedant Food Solutions | Lower Parel(Creative Industrial Estate) | 日本食材の卸・小売。とんかつソース、マヨネーズ、そば、海苔、寿司の材料 |
Vedant Food Solutionsは飲食店向けの卸が本業ですが、日本食材のラインナップを公式サイトで公開しており、FSSAIのライセンス番号も明記しています。まとまった量を継続的に確保したい場合に選択肢になります。
南インドと西インドでは、実店舗型の日本食材専門店はほとんど見つかりません。バンガロールは日本食レストランが十数軒ある街ですが、バンガロール日本人会の生活ガイドにも食材店の項目はなく、オンラインの専門店が主な入手経路になります。
日本食材のオンライン店MAIN DISHは、次の7都市に支店を置いています。公式サイトに各支店の住所・電話番号に加えてGST番号とFSSAIライセンス番号まで掲載しており、素性がはっきりしている点が安心材料です。
チェンナイは日本人会が食材店とレストランの一覧を公開しています。個人ブログより更新が保たれており、閉店した店に足を運ぶ失敗を避けられます。
プネで日本食材を確保する経路は2つです。
実店舗が少ない都市ではオンラインが主力になります。ただし配送できる範囲は事業者ごとに違うので、自分の都市が対象かを先に確認してください。
意外に頼りになるのがAmazon Indiaです。キッコーマンはインドに現地法人を構えて直販サイトも運営しており、よく使う調味料が現地で流通する体制はできつつあります。
一方で、大手ECは同じ商品が急に切れることがあります。切らしたくない調味料は専門店で、価格重視の乾物はECで、と分けておくと安定します。
ここが最も誤解の多いところです。「個人用なら何でも持ち込める」と考えていると、空港で没収されます。食品衛生の規則と動物検疫の規則は別立てで、後者が実質的な壁になります。
インドの食品輸入規則(Food Safety and Standards (Import) Regulations, 2017)第7条は、個人使用のために食品を持ち込む場合、税関が認める金額の範囲内であれば規則を適用しないと定めています。この場合は個人消費に限り国内で販売しない旨を申告するFORM-7の提出が求められます。常温・未開封の加工食品であれば、この枠内で現実的に持ち込めます。
畜産物はまったく別の扱いです。インド畜産酪農省は、畜産物の輸入には出荷前に取得した衛生輸入許可証(Sanitary Import Permit)が必要とし、通関できる港もデリー・ムンバイ・コルカタ・チェンナイ・バンガロール・ハイデラバードの動物検疫がある拠点に限定しています。個人が手荷物や国際郵便でこの許可証を持っているはずがないため、肉製品・乳製品は没収対象と考えるべきです。
| 区分 | 該当するもの | 根拠 |
|---|---|---|
| 個人使用枠で申告して持ち込める | 醤油、味噌、乾麺、出汁パック、ふりかけ、菓子(いずれも肉・乳成分を含まないもの) | 個人使用は税関の許容額内なら輸入規則の適用外。FORM-7を提出する |
| 法令上禁止 | 牛肉および牛肉を含む食品。ビーフエキス入りのカレールー・即席麺・スープも該当する | 牛肉は輸入そのものが全面的に禁止されている |
| 許可証が必要で個人には困難 | 肉製品、乳製品全般 | 出荷前の衛生輸入許可証が必要で、通関地も動物検疫のある拠点に限られる |
同じ食品でも、自分で運ぶか送るかで通りやすさが変わります。手荷物は入国時に個人使用として申告できますが、国際郵便や宅配便で送った荷物は差出人と受取人が別に扱われ、内容によっては商用とみなされることがあります。家族に送ってもらう場合は、少量に分けて食品の種類と数量を明記してもらうほうが通関で止まりにくくなります。
| 手荷物・預け荷物 | 国際郵便・宅配便 | |
|---|---|---|
| 個人使用の申告 | 入国時に本人が申告できる | 差出人と受取人が別扱いになり、商用とみなされることがある |
| 液体 | 機内持ち込みは量に制限。醤油・みりんは預け荷物へ | 制限は受けないが破損対策の梱包が要る |
| 通りやすくする工夫 | 未開封のまま、原材料表示を残す | 少量に分け、食品の種類と数量を明記してもらう |
見落としやすいのが、日本のカレールーや即席麺です。ビーフエキスを含む商品は珍しくなく、牛肉は加工品に含まれる形でも輸入が禁じられています。小売用の包装食品には牛肉を含まない旨の表示が求められるほどで、原材料表示を確認せずに箱で送ると、まとめて止められることがあります。持ち込む前に原材料欄で肉・乳成分の有無を確かめてください。
ここまでは駐在員の目線ですが、裏を返せば供給がまだ追いついていないということでもあります。デリーNCR以外の都市では実店舗の選択肢がほとんどなく、オンラインの数社が需要を受け止めている状態です。
商品を継続的に売るとなると、個人使用の枠は使えません。輸入者側に輸入事業者コード(IEC)とFSSAIの輸入ライセンスが必要になり、ラベルには英語かヒンディー語でベジ・ノンベジのマーク、FSSAIのロゴとライセンス番号、原産国などの表示が義務づけられます。
実務で効いてくるのが賞味期限のルールです。包装された輸入食品は、通関の時点で有効保存期間の6割、または3か月のいずれか短いほうが残っている必要があります。海上輸送に4〜6週間かかることを踏まえると、賞味期限の短い商品は設計段階から成立しません。関税や通関の詳細はインドへの食品輸入と関税で解説しています。
すでにインドへ展開している日本の食品メーカーの動きは日系食品メーカーのインド展開比較にまとめています。
デリー首都圏です。とくにグルガオンのゴルフコースロード周辺にYAMATO-YAやSekai Ichibaなどの専門店が集まっており、生鮮の日本野菜まで手に入ります。他の都市は実店舗が少なく、オンラインの専門店が中心になります。
日本食材の専門店は限られます。かつてPowaiにあったHaiko Supermarketは閉店しました。現在は同じPowaiの高級スーパーFreshpikの輸入食品コーナー、Santacruz WestのFood Square、Lower Parelの卸Vedant Food Solutions、そしてオンラインのMAIN DISHを組み合わせるのが現実的です。
実店舗の日本食材専門店は見当たらず、バンガロール日本人会の生活ガイドにも食材店の項目はありません。オンライン専門店MAIN DISHのバンガロール支店が主な入手経路になります。
個人使用の食品は、税関が認める金額の範囲内であればインドの食品輸入規則の適用外とされ、FORM-7という申告書を提出する扱いです。常温・未開封の加工食品であれば現実的に持ち込めます。ただし肉製品と乳製品は別扱いで、出荷前の衛生輸入許可証がなければ通せません。
持ち込めません。インドでは牛肉および牛肉を含む食品の輸入が全面的に禁止されており、加工品に含まれる形でも対象になります。カレールー、即席麺、スープ、スナックは原材料表示を確認してください。
輸入者側に輸入事業者コード(IEC)とFSSAIの輸入ライセンスが必要です。ラベルにはベジ・ノンベジのマーク、FSSAIのロゴとライセンス番号、原産国などの表示が義務づけられます。加えて、通関時点で賞味期限の6割または3か月の短いほうが残っている必要があるため、賞味期限の短い商品は輸送日数を踏まえた設計が要ります。
日本食材の入手しやすさは、デリー首都圏とそれ以外で大きく差があります。グルガオンなら専門店を回れば生鮮まで揃いますが、ムンバイやバンガロールではオンラインを軸に組み立てることになります。そして日本語で見つかる店情報は閉店していることがあるので、公式サイトか現地日本人会の一覧で確かめてから動くのが確実です。
持ち込みについては、常温の加工食品と肉・乳製品の間に明確な線があります。この線を知らずに送ると荷物ごと止められます。食べる場所を探している場合はインドの日本食レストラン都市別ガイドもあわせてご覧ください。