ベトナムのD2C(Direct-to-Consumer)美容市場が2026年に急拡大している。TikTokショップを中心としたソーシャルコマースが購買チャネルの主軸となり、国内外のブランドがベトナムの若い消費者へのリーチを競っている。インドのMarico社が3月にベトナムD2C美容ブランド「Candid」の75%株式を約58億円で取得したことは、この市場の成長ポテンシャルを象徴する出来事だ。
ベトナム美容市場の現状:規模と成長率
ベトナムの美容・パーソナルケア市場は2026年に約40億ドル規模に達する見込みで、年率12-15%の成長を続けている。消費の中心は18-35歳の都市部女性で、スキンケア・カラーコスメ・ヘアケアの順に支出が多い。
| セグメント | 市場規模(推定) | 主要購買チャネル |
|---|---|---|
| スキンケア | 約15億ドル | TikTokショップ・Shopee |
| カラーコスメ | 約8億ドル | TikTokショップ・実店舗 |
| ヘアケア | 約7億ドル | Lazada・実店舗 |
| フレグランス | 約5億ドル | 百貨店・オンライン |
TikTokショップが覇権:ライブ配信で衝動買いを生む
ベトナムのD2C美容市場を変えた最大の要因がTikTokショップだ。美容インフルエンサー(KOL)によるライブ配信と即時購入機能の組み合わせが、従来のECサイトには出せない購買体験を生んでいる。
ただし4月1日からTikTokショップが手数料を最大14.5%に引き上げたことで、ブランド側のコスト構造が変化している。高い手数料を払ってでも入手したいプレミアムチャネルとしての地位を維持できるかどうかが問われている。
参入する外資ブランドの戦略
韓国・インド・日本のブランドがベトナム市場への参入を加速している:
- 韓国ブランド:SNS発信・アイドルとのコラボを通じて若い女性に圧倒的な人気。INNISFREE・SOME BY MIなど
- インドブランド(Marico/Candid):現地D2Cブランドのスケールを取り込む戦略
- 日本ブランド:「JK系」コスメや機能性スキンケアが静かな人気。越境ECでの流入も増加
ベトナム消費者の美容意識の変化
「素肌をきれいに見せる」ナチュラルメイク志向が2026年のキートレンドだ。成分重視・クリーンビューティーへの関心も高まっており、「パラベンフリー」「ヴィーガン認証」などの訴求が購買意欲に直結している。
ベトナムのSNSでは「#skincare」「#KBeauty」「#skincareroutine」タグがコンスタントに上位トレンドに入っており、美容コンテンツの消費量は全ジャンル中トップクラスだ。
日本ブランドが参入するなら今:独自分析
ベトナムのD2C美容市場に日本ブランドが参入するうえで最大の課題は「認知度の低さ」だ。韓国コスメのような明確な国家ブランドイメージがないため、個別ブランドごとの地道なコンテンツマーケティングが必要になる。
一方、チャンスも大きい。ベトナムの消費者は「日本製品=品質が高い・安全」というイメージを強く持っており、スキンケア分野では特にこの評価が購買行動に直結しやすい。TikTokショップを起点に、ライブコマースとコンテンツマーケティングを組み合わせたアプローチが最も費用対効果が高い参入方法だと分析する。
ベトナムEC市場全体では2025年に前年比34.4%増・116億ドルを達成しており、D2C美容カテゴリはその中でも最も伸びが大きいセグメントのひとつだ。
引用元:Inc42: D2C Brands India 2026 / Indian Retailer: D2C Trends 2025-26