Tissot、インド公式EC直販サイトを4月20日に立ち上げ——Swatch Group初のインドDTC、新作Gentlemanコレクション同時投入

スイスの時計ブランドTissotが2026年4月20日、インドの公式EC直販サイトを立ち上げた。同社CEOのシルヴァン・ドラ(Sylvain Dolla)は「インドの顧客との関係をより深めるために、ダイレクトでシームレスなTissot体験を提供する」とコメント。Swatch Group傘下ブランドとしてはインド国内で初の自社EC運営となる。

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立ち上げの中身

新ECサイトでは、Tissotの全コレクションをブランド公式チャネルから直接購入できる。商品はインド国内の自社倉庫から発送され、第三者を介さない流通になる。これによりTissotは正規品保証の徹底と、購入後カスタマーサービスの直接提供を実現する設計を取った。

項目内容
サイト立ち上げ日2026年4月20日
運営主体Tissot India(Swatch Group傘下)
位置づけSwatch Group初のインドDTC
物流インド国内倉庫から直接出荷
同時投入新作Tissot Gentleman コレクション
既存販路全国400店舗超のオフライン取扱店、主要ラグジュアリーEC

なぜインドが「世界第3位」になるのか

Tissotはインドを2026年に世界第3位市場に押し上がると見込んでいる。背景には、20代後半〜40代前半のテック・金融セクター所得層の購買力上昇、自社時計をステータスシンボルとして所有する文化の定着、そして既存400店舗以上のオフライン流通網による認知の厚みがある。

2020年のオンライン販売開始以降、ECチャネル経由の売上は継続的に伸長しており、2026年時点で「自社直販ECを持たないこと」が機会損失と判断されたことが今回のローンチに繋がった。

Tissotインド事業の主要数値

  • オフライン取扱店:インド全土で400店舗超
  • オンライン取扱:主要ラグジュアリーEC(Ethos等)も継続。今回の自社ECはこれと並走
  • 同時投入:Tissot Gentlemanコレクション(Powermatic 80搭載モデルとSwissmaticモデル)
  • 市場順位目標:2026年に世界第3位市場(中国・米国に次ぐ位置)

Gentleman新作と価格帯

EC立ち上げと同時に投入された「Tissot Gentleman」は、スイスメイドのPowermatic 80ムーブメントを搭載した自動巻きモデルが核となる。インド市場における主要モデルの価格帯は以下の通り(2026年MRP、GST込み)。

モデル価格帯(INR)USD換算JPY換算
PR 100 Quartz 34mm(エントリー)約₹22,000〜約260USD〜約3.9万円〜
Gentleman Swissmatic₹50,000未満約600USD未満約9万円未満
PRX Quartz 40mm₹28,000〜30,000約335-360USD約5.0〜5.4万円
PRX Powermatic 80 Auto₹33,000〜40,000約395-480USD約5.9〜7.2万円
PRX Powermatic 80 Green Dial約₹57,000約680USD約10.2万円
PRX Titanium 38mm約₹78,000約935USD約14.0万円

※換算は1INR=約1.8円、1USD=約150円、1USD=約83INRで概算。インドのラグジュアリー時計購入層が「2万〜10万円台」に厚い層を持つことを示す価格設計だ。

Swatch Group全体としての位置づけ

Tissotは、Swatch Groupが保有するOmega、Longines、Hamilton、Rado、Tissot、Swatchなどのブランド群の中でも、ミドルレンジ(量産可能なスイスメイド)として最大の販売台数を担うブランドだ。今回の自社EC立ち上げは「Swatch Group全体のDTC戦略の最初の一手」として設計されている。

つまり、Omega・Longines等の上位ブランドのインドDTCを後続させるためのテストマーケットとして、最も販売台数の多いTissotから先行投入したと読める。インドのラグジュアリーEC市場で「ブランド公式直販」のポジションを確保することで、グレーマーケット流通や偽物対策の主導権を取りに行く動きでもある。

CEOコメントから読むDTC戦略

シルヴァン・ドラCEOは「お客様により近づき、ダイレクトでシームレスかつ信頼できる方法でTissotの世界観を体験してもらう」と表明している。Whalesbookの分析では、この発言は単なるEC立ち上げのPR文ではなく、「中間流通からのデータ取得」と「カスタマーリレーション直接管理」を狙うDTC戦略の宣言と解釈される。

日本ブランドへの示唆

  • インドのDTC立ち上げは「既存オフライン流通網との並走」が前提。Tissotの400店舗ベースに自社ECを乗せる構成は、日本のラグジュアリー・プレミアムブランドのインド進出モデルとしてそのまま参考になる
  • 価格帯設計はインド市場の購買力分布に合わせる必要がある。2万〜10万円のスイートスポットを抑えることで、ECの単月売上が立ちやすい
  • 自社倉庫からの直送はGSTや関税の整理が必要。流通改革には現地法人化が前提になるケースが多い
  • Swatch Groupのように「グループ内最大販売ブランド」から先行してDTCを立ち上げ、上位ブランドへ展開する順序は再現性が高い戦略

関連する直近の動き

インドのラグジュアリー消費は、ベンガルールに進出したOff-Whiteのフラッグシップ出店(Off-Whiteインド出店記事)に象徴されるように、メトロ集中から地方有力都市分散の段階に入っている。Tissotが自社ECを立ち上げる狙いは、この地方都市分散の流れと整合する——既存400店舗網だけでは届かない都市・町の購買層を直販で取りに行く設計だ。

D2C・直販志向は、コーセーがインドD2Cスキンケアfoxtaleに3,000万ドル出資した動きとも軌を一にする(コーセー×foxtale記事)。海外ブランドが直販/戦略出資の両面でインド市場の主導権を取りに動いている2026年春のトレンドの一つに、Tissotのインド自社EC立ち上げは位置付けられる。

まとめ

TissotのインドDTCは、Swatch Group全体のインド戦略を占う試金石になる。価格帯設計、Gentleman新作の同時投入、自社倉庫直送という3点セットは、ミドルレンジ・ラグジュアリーがインドDTCで成立する条件を示している。日本の時計・アクセサリブランドがインド進出を検討するなら、Tissotの月次EC売上推移を2026年下期にウォッチしたい。

引用元・参考リンク

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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