ベトナムEC4大プラットフォームが2025年に前年比34.4%増・116億ドル達成——TikTokショップ急成長でLazadaを脅かし、2026年も拡大継続

ベトナムのEC市場が急拡大している。Shopee・TikTok Shop・Lazada・Tikiの4大プラットフォームが2025年1〜9月(Q1〜Q3)に記録した合計売上は116億2,000万ドル(約1兆7,400億円)に達し、前年同期比34.4%増を記録した。この成長率は東南アジア主要国の中でも際立っており、ベトナムはフィリピンを抜いて東南アジア第3位のEC市場へと躍進している。2025年通年では260〜280億ドル規模への拡大が見込まれており、日本企業にとってもベトナムEC参入の検討が急務となっている。

目次

4大プラットフォームの勢力図が塗り替えられつつある

ベトナムECの競争環境は2025年に大きく変化した。最大の動きは、TikTok Shopの急成長によるLazadaへの追い上げだ。

プラットフォーム 特徴・主要ユーザー層 2025年の動向
Shopee ベトナム最大手。価格訴求・バウチャーに強い。幅広い年齢層 引き続きシェア首位を維持。物流ネットワーク強化
TikTok Shop ライブコマース・ショート動画連動。Gen Z・ミレニアル世代 急成長。取扱GMVでLazadaに迫る勢い。手数料を2026年4月に値上げ
Lazada Alibaba傘下。家電・ブランド品に強み TikTok Shopの台頭で相対的シェアが低下傾向
Tiki ベトナム国内資本。書籍・エレクトロニクス中心 ニッチ市場に特化し独自路線を維持

TikTok Shopの躍進は、ベトナム消費者の購買行動が「検索して買う」から「見て・楽しんで・その場で買う」ライブコマース型へシフトしていることを端的に示している。特に美容・コスメ・食品・ファッションカテゴリーでのTikTok Shop経由の売上成長が著しく、インフルエンサー(KOL/KOC)を活用したライブ配信販売がベトナムEC市場の主流チャネルとなりつつある。

なお、TikTok Shopは2026年4月1日から出店手数料を値上げしており、プラットフォーム側が売上規模の拡大に伴い本格的な収益化フェーズへ移行していることが分かる。

ベトナムEC急成長の構造的背景

人口・デモグラフィクスの優位性

ベトナムの人口は約1億人で、中央値年齢は約30歳とASEANの中でも若い国の一つだ。スマートフォン普及率が高く、モバイルファーストのEC利用が定着している。特に都市部(ホーチミン・ハノイ)の若年層はSNSと購買行動が完全に統合されており、TikTok Shopのようなソーシャルコマースとの相性が極めて良い。

中間所得層の拡大と可処分所得の上昇

ベトナムのGDP成長率は2024〜2025年にかけて6〜7%台を維持しており、中間所得層が急拡大している。可処分所得の増加に伴い、低価格品だけでなく品質重視・ブランド志向の消費も増えており、日本・韓国・欧米ブランドの越境EC参入機会が広がっている。

物流インフラの整備加速

EC成長を支える物流インフラの整備も急ピッチで進んでいる。GHNはTemasek主導のラウンドで約1億ドルを調達し、全国配送ネットワークの拡充を図っている。翌日配送・当日配送の対応エリアが拡大しており、ユーザーの利便性向上がさらなるEC利用を後押ししている。

フィンテック・決済インフラの成熟

VNLIFEが累計5億5,000万ドルを調達し、EC決済・デジタルウォレット・QRコード決済の普及を牽引している。現金払い比率が依然高いベトナム市場においても、コンビニ払い・QR決済・後払い(BNPL)の選択肢が増え、キャッシュレス化が着実に進展している。決済の多様化はECのチェックアウト離脱率低下に直結し、市場全体の成長を下支えしている。

東南アジア第3位への躍進が意味するもの

ベトナムがフィリピンを抜いてインドネシア・タイに次ぐ東南アジア第3位のEC市場となったことは、単なる市場規模の話にとどまらない。投資家・ブランド・物流事業者がベトナムを「次に押さえるべき重要市場」として再評価するシグナルとなっている。

インドネシアが人口2億7,000万人という圧倒的な規模で首位を維持する一方、タイ・ベトナムはより高い購買力と都市集中型の消費構造を持つ。ベトナムはホーチミン・ハノイの二大都市圏への経済集中度が高く、ターゲットを絞った市場参入が比較的しやすい環境だ。

また、中国・美団のベトナム参入に代表されるように、グローバルのテックジャイアントがベトナムをアジア展開の重要拠点として位置づけており、競争環境が急速に高まっている。日本企業がこの市場に参入するなら、早期の戦略的意思決定が求められる局面だ。

カテゴリー別の消費トレンド:何が売れているのか

ベトナムのEC市場で特に成長が著しいカテゴリーを整理すると、以下のような傾向が見えてくる。

  • 美容・コスメ・スキンケア:K-Beauty・J-Beautyへの関心が高い。TikTok Shop経由のライブコマースで韓国・日本ブランドの認知拡大が加速。
  • ファッション・アパレル:中国製低価格品とグローバルブランドの二極化。Gen Zを中心にサステナブルファッションへの関心も芽生えつつある。
  • 食品・飲料:健康志向の高まりでオーガニック・機能性食品への関心増大。日本の抹茶・和菓子・だし系食品の需要が都市部で拡大。
  • 家電・スマートホーム:中間所得層の生活水準向上に伴い、ロボット掃除機・空気清浄機・スマートウォッチなどの需要が増加。
  • 母子・ベビー用品:日本ブランドへの信頼度が高く、ベビーフード・オムツ・スキンケアで強い需要がある。

日本企業がベトナムEC市場に参入する際のポイント

116億ドル市場・34.4%成長という数字は魅力的だが、参入にあたっては市場特性を正確に理解したうえでの戦略が必要だ。

TikTok Shopのライブコマースを起点にする

ベトナムではTikTok Shopのライブ配信が最も費用対効果の高い売上チャネルの一つになっている。現地のKOL(Key Opinion Leader)・KOC(Key Opinion Consumer)との連携が成否を分ける鍵であり、インフルエンサーマーケティングに一定の予算を確保することが事実上必須となっている。

ローカルパートナーとの連携

ベトナムの消費者は「地元に根ざしたブランドストーリー」に共感しやすい。現地ディストリビューター・EC代行エージェントとの連携を通じて、商品説明・カスタマーサポートのベトナム語対応、現地の祝日・季節性に合わせたプロモーション設計が求められる。

越境ECと現地法人設立の比較検討

初期フェーズでは越境ECで市場テストを行い、売上規模が見えてきた段階で現地法人設立・倉庫設置を検討するというステップアップが現実的だ。ただし、外資規制・関税・食品衛生規制などの法規制は事前に詳細確認が必要であり、専門家への相談を強く推奨する。

2026年以降のベトナムEC:注目すべき変数

2026年以降のベトナムEC市場を左右する変数としては、以下が挙げられる。

  • TikTok Shopの手数料政策:2026年4月の値上げ後も成長を維持できるか、出店者のShopeeへの回帰が起きるかが注目点。
  • Lazadaのリストラクチャリング:親会社AlibabaのEC事業再編の影響がベトナムに波及するリスク。
  • 越境ECの規制強化:ベトナム政府は海外からの小口通販への課税強化を検討しており、規制動向の注視が必要。
  • AIパーソナライゼーション:ShopeeやTikTok Shopが強化しているAIレコメンデーション機能が、ロングテール商品の売上を大幅に変える可能性がある。

まとめ

ベトナムEC市場の2025年Q1〜Q3における前年比34.4%増・116億ドル達成は、同国が東南アジアの主要EC市場として完全に確立されたことを示すマイルストーンだ。TikTok Shopの急成長、物流・フィンテックインフラの整備、中間所得層の拡大という三つの追い風が重なり、2026年以降も高成長が続くと見られている。

日本企業にとっては、ベトナムGen Z世代の抹茶・梅酒人気に代表されるような、日本食品・飲料・コスメへの高い親和性を生かした参入戦略が特に有効だ。市場の成長スピードに乗り遅れないよう、今すぐ参入戦略の具体化を検討する時期に来ている。

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この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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