「抹茶×ヤシジュース」「梅酒」——ベトナムZ世代が日本の味をリミックスするブームが加速

この記事の要約
博報堂現地機関Hakuhodo Shopping Laboratory Vietnamの2024〜2025年調査で、抹茶×ヤシジュースがベトナムZ世代(18〜28歳)の飲料トレンド頂点に。一杯40,000〜70,000ドン(約240〜420円)。チョーヤ梅酒や奈良・梅乃宿酒造「あらごし梅酒」などがTikTok・Instagramで拡散、高島屋ホーチミンで品薄が続いている。

「抹茶×ヤシジュース」が今、ベトナムのZ世代の間で最も人気のある飲み物の一つとなっている。同時に、日本の梅酒がSNSを通じて急速に浸透し始めた。ベトナムの若者たちが「日本の味」を自分たちの感性でリミックスする動きは、日系食品・飲料メーカーにとって見逃せないビジネスチャンスを形成しつつある。

目次

Z世代ドリンクの頂点に立つ「抹茶×ヤシジュース」

博報堂の現地調査機関「Hakuhodo Shopping Laboratory Vietnam」が2024〜2025年にかけて実施した調査によると、ベトナムのZ世代(主に18〜28歳)の間で「抹茶×ヤシジュース」ブレンドが飲料トレンドの頂点に立っている。ヤシジュース(nuoc dua)のさっぱりとした甘みと、抹茶のクリーミーな深みが組み合わさることで、見た目の美しさと味の両方で若者の支持を集めている。

もともとこのドリンクは日本のカフェチェーンがベトナムで火をつけたものだが、今やホーチミンやハノイの街角のローカルカフェでも定番メニューとなっている。一杯あたり40,000〜70,000ドン(約240〜420円)の価格帯で提供されており、若い消費者が日常的に手を出せる範囲に収まっていることが普及の要因だ。

ベトナムでは健康意識が高まっており、抹茶は「健康的な飲料」として広く認知されている。抗酸化作用のあるカテキンが豊富で、L-テアニンによるストレス軽減効果や集中力向上効果も注目されている。ベトナムのZ世代にとって抹茶は「おしゃれで体にも良い」という二重の価値を提供しており、この認知がトレンドの持続力を支えている。

梅酒の急浮上——SNSが火をつけた「女性ウケ」するお酒

抹茶トレンドと並行して注目すべきなのが、日本産梅酒のベトナムでの急浮上だ。チョーヤ梅酒や奈良県の梅乃宿酒造の「あらごし梅酒」をはじめとする日本ブランドの梅酒が、TikTokやInstagramなどのSNSで「女性に人気のお酒」として口コミ拡散し、高島屋ホーチミンや輸入食品店での在庫が追いつかない状況が続いている。

ベトナムのZ世代女性を中心に、「甘くて飲みやすい」「パッケージがかわいい」「インスタ映えする」という3つの評価軸で梅酒は高い支持を得ている。ベトナムのアルコール市場ではビールが圧倒的なシェアを持つが、ビールとは全く異なる「甘い・おしゃれ・低アルコール」というカテゴリは、これまで空白地帯だった。梅酒はこのニッチを見事に開拓しつつある。

特に奈良県の梅乃宿酒造の「あらごし梅酒」は、日本の梅の香りと穏やかな甘みが特徴で、ベトナムの梅酒取扱店で頻繁に見かけるブランドとなっている。果肉入りのとろりとした食感がベトナムの消費者に「デザート感覚で飲める」と好評を博している。

なぜベトナムのZ世代は「日本の味」に惹かれるのか

ベトナムのZ世代が日本の食品・飲料に強い親和性を示す背景には、複合的な要因がある。第一に、日本のポップカルチャー(アニメ、マンガ、J-POP)への親しみだ。ベトナムは東南アジアの中でも日本文化の浸透度が高く、Z世代にとって「日本的なもの」は「クール」というポジティブなイメージと結びついている。

第二に、SNSの影響力だ。ベトナムのZ世代はSNSネイティブであり、飲食店選びやブランド選択においてTikTokやInstagramの影響が極めて大きい。抹茶ドリンクの緑のグラデーションや梅酒のピンク色は視覚的にSNS映えしやすく、口コミが自然発生的に拡散する仕組みが出来上がっている。

第三に、健康志向とプレミアム志向の共存だ。ベトナムのZ世代は親世代よりも健康に対する意識が高く、同時に「少し高くても品質の良いもの」への投資を厭わない傾向がある。日本産の抹茶や梅酒は、この二つの志向の交差点にちょうど位置している。

日系食品・飲料メーカーへの示唆

ベトナムで起きている「日本味リミックス」現象は、日系食品・飲料メーカーにとって極めて重要な示唆を含んでいる。

第一に、商品をそのまま輸出するのではなく、現地のフレーバーとの「融合」を前提にした商品開発が有効だ。抹茶×ヤシジュースのように、日本の素材を現地の食文化と組み合わせることで、新しいカテゴリが生まれる。この「コラボレーション型」のアプローチは、ベトナムの消費者に「自分たちの文化も尊重されている」という感覚を与えるため、受容性が高い。

第二に、SNSマーケティングの重要性だ。ベトナムでの食品・飲料マーケティングにおいて、TikTokとInstagramはもはや「あると良い」ではなく「必須」のチャネルだ。商品の味だけでなく、ビジュアル面での訴求力(色、パッケージデザイン、盛り付け)がSNS拡散の鍵を握っている。

第三に、高島屋やイオンモールなどの日系小売チャネルの活用だ。これらの店舗はベトナムの中上流層にとって「信頼できる日本製品が手に入る場所」としてのブランドを確立しており、新商品のテストマーケティングの場として最適だ。

第四に、価格戦略の精緻化だ。ベトナムのZ世代はプレミアム商品に対して一定の支払い意思があるが、その上限は日本国内の価格よりもかなり低い。現地の購買力に合わせた価格設定と、それでも利益を確保できるサプライチェーンの構築が必要だ。

今後の展望

ベトナムにおける日本味ブームは、抹茶と梅酒にとどまらない広がりを見せる可能性がある。日本酒、柚子関連製品、わさびフレーバー商品など、日本固有の味覚素材はまだベトナム市場での開拓余地が大きい。また、ベトナムのカフェ文化が成熟するにつれて、より本格的な日本茶(煎茶、ほうじ茶)への関心も高まることが予想される。

このトレンドを活かしたベトナム市場への展開をご検討の方は、SoJapanまでお問い合わせください松屋のベトナム現地化戦略や、高島屋のハノイ進出に関する記事も併せてご覧ください。

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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