Thaco、6月にベトナム第2の自国ブランド「ミニバス」投入——VinFastに挑む

ベトナム複合企業 Thaco(チュオンハイグループ)の Tran Ba Duong 会長は2026年2月23日、「Thaco Auto は2026年6月に Thaco ブランドのミニバスを発売し、2027年には Thaco ブランドの乗用車を市場投入する」と表明した。クアンナム省 Chu Lai 工業団地の年産能力約12万台の生産拠点を背景に、VinFast に次ぐベトナム第2の自国ブランドが立ち上がることになる。Mazda・Kia・Peugeot・BMW・MINI を組立販売してきた最大手が「組立屋」から「ブランドビルダー」へ転換する歴史的な節目となる。

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ニュース詳細

theinvestor.vn と vietnamnet.vn の報道によれば、Tran Ba Duong 会長は2026年2月の社内メッセージで「商用車(バス・トラック)で蓄積した独自ブランド運営の経験を、ミニバスと乗用車に展開する」と述べた。Thaco Auto は2026年に96,600台の販売、売上高 VND65.5 兆(約2.51〜2.58億ドル=約3,800億円規模)、輸出額3,050万ドルを目標に掲げている。2027年には売上高 VND72 兆を見込む。商用車では既に最大70%の現地調達率を達成しており、その知見を乗用車セグメントに横展開する構想だ。

背景

ベトナム政府は2030〜2045年に国内自動車部品の現地調達率を80〜85%に引き上げる方針を掲げており、自国ブランドの育成は国家戦略でもある。VinFast が EV 専業として先行する一方、内燃機関を含む量販車ブランドが空白だったため、Thaco の参入は政策と市場の両面に呼応する形だ。Chu Lai 拠点には19の機械加工・部品工場が集積しており、サプライチェーン統合による価値捕捉を狙う。Thaco グループの2026年自動車市場シェアは Mazda・Kia などを合算して30〜35%を占めるが、すべて外国ブランドであり「自国旗艦」が欠けている状況だった。

数値で見る Thaco の自動車事業(2026年計画/円換算 1JPY=170VND)

指標 2026年計画 備考
販売台数 96,600台 商用・乗用車合計
売上高 VND 65.5 兆(約3,853億円) 約2.51〜2.58億米ドル相当
輸出額 3,050万米ドル(約46億円) 商用車中心
従業員数 約13,000人 Thaco Auto セグメント
年間生産能力 約120,000台 VinFast・Hyundai に次ぐ国内3位
商用車現地調達率 最大70% 乗用車に横展開

業界・現地反応

theinvestor.vn は社説で「Thaco の決断は、外国ブランド組立に依存してきた既存ビジネスモデルからの離脱を意味し、サプライチェーン全体での価値捕捉を目指す垂直統合戦略の表明」と評した。VietnamNet は「Thaco は組立屋からブランドビルダーへ移行する」との見出しで、商用車での独自ブランド成功体験が乗用車展開を後押しすると分析する。Seasia.co は「ベトナムが2027年に第2の自国ブランドを獲得することは、ASEAN 自動車地図を塗り替える」と指摘した。一方、現地フォーラム VOZ では「中国ブランド流入のなか、Thaco がどこまで価格競争力を確保できるか」と懐疑的な投稿も見られる。

日系企業/日本人読者への意味

Thaco は Mazda・Kia・Peugeot・BMW・MINI に加え、2026年に Jeep・RAM の組立も開始する予定で、日系・欧米系ブランドのパートナーとしての地位を維持しつつ、自社ブランドを並行開発する「二刀流」戦略を採る。日本の自動車部品メーカーにとっては、Thaco が「組立委託先」だけでなく「自社ブランド向け部品の発注主」として性格を変えることを意味する。Tier1〜Tier2 サプライヤーは、価格・QCD(品質・コスト・納期)の見直しと、Thaco ブランド向け新規金型・治具の供給機会を同時に検討する必要がある。一方、Mazda・三菱自動車・日産・ホンダなど現地で組立を委託している完成車メーカーにとっては、生産能力の食い合いやエンジニアリングリソース配分の競合が今後論点になる。

業界への波及

Thaco のミニバス参入は、既に商用車セグメントで競合する Hyundai Thanh Cong(韓国系)、Isuzu、日野、いすゞなどに直接的な圧力を与える。乗用車では VinFast の EV 路線とは対照的に、Thaco は内燃機関・ハイブリッドを含む幅広いラインアップを示唆しており、価格帯では中国系(BYD・Wuling・Chery)との競合が予想される。クアンナム省を中心に部品サプライヤーの集積が一段と進む可能性が高く、ハノイ・ホーチミン両大都市圏に偏っていた自動車産業地図の再編が起こりうる。輸出戦略では、ASEAN 自由貿易協定(AFTA)の関税優遇を活かし、ラオス・カンボジア・ミャンマーなど近隣市場への右ハンドル/左ハンドル混在の輸出展開も視野に入る。

実用情報

項目 内容
企業名 Thaco Group(Truong Hai Auto Corporation)
会長 Tran Ba Duong
主要拠点 クアンナム省 Chu Lai 工業団地(敷地面積489,000㎡超)
ミニバス発売 2026年6月
乗用車発売 2027年(9人乗り未満)
取扱外国ブランド Mazda、Kia、Peugeot、BMW、MINI、Jeep、RAM(2026年〜)
サプライヤー集積 機械加工・部品工場19拠点

まとめ

Thaco の自社ブランド化は、ベトナム自動車産業が「組立輸入」から「自国設計・自国輸出」へと脱皮する象徴的な動きだ。VinFast の EV 路線、Thaco の内燃機関・商用車路線、中国勢の格安 EV 流入という三つ巴の構図が固まりつつある。日本の完成車・部品メーカーは、現地パートナーとしての関係維持と、新興自国ブランド向けサプライ戦略の両立をいま設計し直すタイミングに来ている。とりわけ Tier1 各社は、Thaco ブランド向け部品供給の引き合いにどう応じるかが、2026〜2027年のベトナム事業の成否を分ける。VinFast の海外展開と並行して、自国第2ブランドの動きを継続的に注視したい。

参考リンク

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この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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