ベトナム産モバイルゲームの年間ダウンロード数が67億回に達し、中国を抜いて世界1位となった。Googleが公式に確認した数字だ。2026年1月に始動した「Vietnam GameVerse 2026」は「Do local, go global」をテーマに掲げ、ベトナムを「ゲーム輸出国」として国際的に位置づける宣言となった。
67億DL――ベトナムが中国を超えた瞬間
Google公式データが証明
Googleが「Vietnam Game Connect 2025」で公表したデータによると、ベトナム産モバイルゲームの2024年グローバルダウンロード数は67億回。中国を約7億DL上回り、世界最多となった。シミュレーション・パズル・アーケードの3ジャンルでは33億DL(世界シェア10.93%)を記録し、中国(8.48%)、香港(8.28%)、米国(7.20%)を上回っている。
3ジャンルがDL全体の66%
ベトナムのモバイルゲームDL全体のうち66%がシミュレーション・パズル・アーケードに集中。中でも「次世代パズルゲーム」は成長率83.04%を記録し、アプリ内課金(IAP)収益の38%を占める主力カテゴリだ。
| 国 | 年間DL数(2024年) | 3ジャンルシェア |
|---|---|---|
| ベトナム | 67億 | 10.93% |
| 中国 | 約60億 | 8.48% |
| 香港 | 非公表 | 8.28% |
| 米国 | 非公表 | 7.20% |
Vietnam GameVerse 2026――「輸出国」宣言の中身
4本柱のイベント構成
2026年1月29日に始動したGameVerse 2026は、放送・テレビ・電子情報局、VnExpress、FPT Corporation、Vietnam Game Allianceの共催。2月〜5月にかけて4つの活動群を展開する。
- Vietnam Game Awards(21部門)
- Vietnam Game Forum
- GameHub コンペティション(第3シーズン)
- エンターテインメント&eスポーツイベント
5月にホーチミン市で開催される大規模展示会は来場者6万人を見込む。初の「東南アジアeスポーツカップ」も併催される。
国際参加企業
AWS、Google、TikTok、AppLovinが国際パートナーとして参加。King、Rollic、Ludus、Supercentなどグローバルスタジオの知見共有セッションも組まれている。
ベトナムゲーム産業のデータ全容
収益とマネタイズの課題
| 指標 | 数値 | 通貨換算 |
|---|---|---|
| ベトナムゲーム産業収益(2025年見込み) | 16.6億USD | 約2,573億円 |
| 2026年予測(Google推計) | 27億USD | 約4,185億円 |
| 2029年目標(政府) | 24.2億USD | 約3,751億円 |
| DAUあたり収益(ベトナム) | 0.06USD | 約9.3円 |
| DAUあたり収益(世界平均) | 0.70USD | 約109円 |
| マネタイズ格差 | 約10倍 | DL数1位 vs 収益力は課題 |
DL数では世界1位だが、DAU(デイリーアクティブユーザー)あたり収益は世界平均の約10分の1。「DLは取れるが稼げない」構造がベトナムゲーム産業最大の課題だ。
主要スタジオと代表タイトル
- iKame(Screwdom) ― プレイ時間100分超/日。Candy Crush(66分)、Royal Match(88分)を凌駕
- ABI Games Studio
- Falcon Game Studio
- Amanotes
- Zego Studio / XGame Studio
ハイブリッドマネタイズへの移行
ベトナムのスタジオの73%がIAP(アプリ内課金)と広告のハイブリッドモデルを採用。2025年以前にリリースされたタイトルから新規ユーザーの78%を獲得しており、「短命のハイパーカジュアル」から「長寿命のリテンション型」への戦略転換が進んでいる。
政府の支援と規制
文化産業12分野の一つに指定
2025年11月、Pham Minh Chinh首相の「国家文化産業戦略」でゲームが12の重点文化産業の一つに指定された。政府は2030年までにゲーム収益10億ドル、開発者5,000人の育成を目標に掲げている。
規制強化も同時進行
2024年12月25日施行の政令147号は、カジノ型ゲームの禁止、全ゲームカテゴリへのプレイ時間制限、電話番号認証の義務化、無許可タイトルのアプリストア排除権限を規制当局に付与した。「成長と規律」の両立を目指す姿勢だ。
現地・業界の反応
放送・電子情報局のLe Quang Tu Do局長
GameVerse 2026の発足式典で、ベトナムのゲーム産業を「国際市場に送り出す」という方針を明言した。
iKameの技術力
iKameはGoogle Cloud・Looker・Python・Airflowによる4層テックスタックを自社構築。30日・180日・365日の広告費回収率(ROAS)を予測するシステムを運用している。ただし、このレベルの技術基盤を持つのは「上位1%のスタジオのみ」とされ、産業全体の底上げが課題だ。
グローバル企業の注目
Vietnam Game Connect 2025には700人超が参加。GrabのAI事業と同様、ベトナムのテック人材がグローバル企業を引き付ける磁場になりつつある。
日本企業・ベトナム進出組への影響
ゲームパブリッシングのパートナー候補
DL数世界1位のベトナムスタジオは、アジア市場向けカジュアルゲームの開発委託先として有力だ。日本のIPをベトナムのスタジオでモバイルゲーム化する座組は、マネタイズノウハウを日本側が補完することで成立する。
広告プラットフォームとしてのベトナムゲーム
ホーチミン市のVCファンド設立が示すように、ベトナムのデジタルエコシステムは拡大中。67億DLのリーチを持つベトナム産ゲームは、東南アジア向けモバイル広告の出稿先として検討に値する。
業界への波及
「DL大国」から「収益大国」への転換が焦点
DL数の優位を収益に転換できるかが、ベトナムゲーム産業の今後を左右する。DAUあたり収益が世界平均の10倍ある中国・日本のマネタイズ手法を学ぶ需要は高く、日本のゲーム企業にとってはコンサルティングやパブリッシング提携の機会になる。
ゲーム人材の争奪
ベトナムのゲーム開発者は英語力と技術力を兼ね備え、人件費は日本の3分の1程度。リモート開発チームの調達先として、ベトナムの存在感は今後さらに高まる。
実用情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Vietnam GameVerse 2026 | 2026年2月〜5月、5月にホーチミン大規模展示(6万人見込み) |
| 主催 | 放送・テレビ・電子情報局 / VnExpress / FPT / Vietnam Game Alliance |
| ベトナム産モバイルゲームDL数 | 67億回/年(2024年、Google公表) |
| 産業規模 | 16.6億USD(2025年見込み)→ 27億USD(2026年Google推計) |
| 政府目標 | 2030年までにゲーム収益10億USD、開発者5,000人育成 |
| 主要規制 | 政令147号(カジノ型禁止・プレイ時間制限・電話番号認証) |
まとめ
ベトナム産モバイルゲームがDL数で中国を抜いた事実は、ベトナムのデジタル産業の競争力を象徴する出来事だ。課題はマネタイズ――DAUあたり収益の10倍の差を埋める過程で、日本のゲーム企業がIP提供・パブリッシング・広告運用で関与する余地は大きい。ベトナムは「安いオフショア開発先」から「ゲーム輸出大国」へ、自己認識を書き換えつつある。