ベトナム中部の古都フエに、イオンモールが259億円を投じた大型商業施設をオープンした。同施設内にはユニクロも中部ベトナム初の店舗を出店し、日系小売業の「地方都市攻略」が本格化している。ホーチミンとハノイの二大都市に集中してきた日系企業のベトナム展開が、新たなフェーズに入ったことを象徴する動きだ。
イオンモールフエの概要——中部ベトナム最大の商業施設
イオンモールフエは、ベトナムにおけるイオンモールグループの7番目の商業施設として開業した。トゥアティエン・フエ省フエ市のアンヴァンズオン新都市区画に位置し、フエ市内最大規模のショッピングモールとなっている。総投資額は約259億円に達し、イオンモールのベトナム事業における大型投資案件の一つだ。
特筆すべきは、同施設がベトナムで初めてベトナムグリーンビルディングカウンシル(VGBC)の「LOTUS認証」を取得したショッピングモールであることだ。環境配慮型の施設設計は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視するグローバルトレンドに合致しており、イオンモールのベトナム事業が単なる商業開発にとどまらず、持続可能性を重視したアプローチを採っていることを示している。
ユニクロの中部初出店——ベトナム全土展開の完成
イオンモールフエのオープンとともに、ユニクロが中部ベトナム初の店舗を出店した。売り場面積約1,000平方メートルの同店舗は、LifeWearの全ラインナップを取り揃え、フエ市民にとって初の本格的なグローバルファストファッション体験を提供する。
ユニクロはこれまでベトナムでホーチミン市とハノイ市を中心に店舗を展開してきたが、今回のフエ出店により、北部(ハノイ)・南部(ホーチミン)・中部(フエ)の3地域すべてにプレゼンスを確立した。ベトナム全土をカバーする小売ネットワークの完成は、同社のベトナム事業における重要なマイルストーンだ。
開店日には大勢の来店客が詰めかけ、フエの消費者がグローバルブランドに対して高い関心を持っていることが実証された。中部ベトナムは一人当たり所得がホーチミンやハノイに比べて低いものの、若年層のブランド意識は急速に高まっており、潜在市場としてのポテンシャルは大きい。
なぜ「地方都市攻略」が始まったのか
日系小売業がベトナムの地方都市に目を向け始めた背景には、二大都市の競争激化がある。ホーチミン市とハノイ市では、イオンモール、ロッテマート、ビンコムメガモールなどの大型商業施設が乱立し、出店余地が限られつつある。加えて、不動産賃料の高騰も利益率を圧迫する要因だ。
一方、フエ、ダナン、ハイフォンなどの地方主要都市は、急速な都市化と中間所得層の拡大が進んでいる。ベトナム政府の地方インフラ投資により、高速道路や空港の整備が進み、物流アクセスも改善されている。フエは世界遺産の古都として観光客も多く、商業施設の集客力が高い立地条件を持っている。
イオンモールのベトナム戦略——7モールから二桁展開へ
イオンモールはベトナムで現在7つのモールを展開しており、ホーチミン市(3カ所)、ハノイ市(2カ所)、ハイフォン市(1カ所)、そして今回のフエ市(1カ所)というポートフォリオだ。同社はベトナムを東南アジア事業の中核と位置づけており、2030年までにベトナム国内で20モール以上の展開を目指している。
イオンモールの戦略は、単なるショッピングモールの運営にとどまらない。モール内にスーパーマーケット(MaxValu)、専門店、飲食店、エンターテインメント施設を集約し、周辺住民の生活インフラとしての役割を果たすことを目指している。ベトナムでは「週末のお出かけ先」としてモールが定着しており、ファミリー層を中心とした高い集客力が強みだ。
日系テナントの地方進出——イオンモールが「出店プラットフォーム」に
イオンモールの地方展開は、日系テナント企業にとって地方進出のプラットフォームとしての意味を持つ。ユニクロのように、単独で地方都市に出店するのはリスクが高いが、イオンモールという集客力のある施設内に出店することで、初期リスクを大幅に軽減できる。
今後、フエのイオンモールには日系の飲食チェーンやコスメブランド、生活雑貨ブランドなどが追随して出店する可能性が高い。イオンモールがベトナムの地方都市で開発するモールは、日系企業がベトナムの地方市場をテストするための「実験場」としての機能を果たすことになるだろう。
課題と注意点
もちろん、地方都市への展開には課題もある。第一に、購買力の問題だ。フエの一人当たりGRDP(域内総生産)はホーチミン市の約半分であり、高単価商品の販売には限界がある。テナント企業は価格帯の調整や、地方消費者のニーズに合った品揃えの工夫が必要だ。
第二に、人材確保の課題がある。小売業の店舗運営にはトレーニングを受けたスタッフが不可欠だが、地方都市ではサービス業の経験者が限られている。採用した人材の育成に時間とコストがかかることを前提とした計画が求められる。
第三に、物流コストだ。ホーチミンやハノイの物流拠点から地方都市への配送は、距離とインフラの制約によりコストが嵩む。現地での調達・配送体制の構築が中長期的な課題となる。
今後の展望
イオンモールフエの開業とユニクロの中部初出店は、日系小売業のベトナム展開が「二大都市集中」から「全国展開」へと移行する転換点を示している。ベトナムの地方都市は、2030年に向けて急速に消費市場としての存在感を高めていくことが予想され、早期に進出した企業が先行者利益を享受できるだろう。
ベトナムの地方都市での事業展開にご関心のある方は、SoJapanまでお気軽にお問い合わせください。高島屋のハノイ進出計画や、ダナンのハイテク産業誘致に関する記事も併せてご覧ください。