インド会社設立の基本フレームワーク
インドで現地法人(Private Limited Company)を設立する手続きは、MCA(Ministry of Corporate Affairs)が管轄しています。2020年に導入されたSPICe+(Simplified Proforma for Incorporating Company Electronically Plus)フォームにより、設立手続きは以前よりも大幅に簡素化されました。
JETROの調査によるとインド進出日系企業は1,434社に上り、多くがPrivate Limited Company形態で設立しています。IMFが予測するインドの2025年度GDP成長率6.5%を背景に、新規設立を検討する企業は増加傾向にあります。
参考情報:
設立前に必要な準備書類
親会社(日本側)で準備する書類
- 取締役会決議書(Board Resolution):インドに子会社を設立することを承認する決議書。公証人認証とアポスティーユが必要
- 親会社の登記簿謄本:日本法務局発行の登記事項証明書。英訳・公証・アポスティーユ必須
- 親会社の定款(Articles of Association):英訳・公証・アポスティーユ必須
- 代表取締役の委任状(Power of Attorney):インドでの設立手続きを委任する文書。公証・アポスティーユ必須
取締役(個人)の準備書類
- パスポート:全取締役のパスポートコピー(公証済み)
- 住所証明:銀行明細書・公共料金領収書など(発行3ヶ月以内)
- 写真:パスポートサイズの証明写真
- PAN(外国人の場合は不要、ただしDIN取得後に推奨)
SPICe+申請に必要な書類と手続き
SPICe+フォームは以下の要素を統合した一括申請システムです。
Part A:会社名予約
最大2つの希望名を申請。名称は他社と類似していないこと、MCAのガイドラインに準拠していることが要件です。承認には通常2〜3営業日かかります。
Part B:設立申請
以下の書類をMCAポータルにアップロードします。
- MoA(Memorandum of Association / INC-33):会社の目的、所在地、授権資本等を記載
- AoA(Articles of Association / INC-34):会社の運営規則を記載
- INC-9(宣誓書):取締役・株主の宣誓書
- Agile-PRO:GST、ESIC、EPFO、銀行口座開設の同時申請
DSC(Digital Signature Certificate)の取得
全取締役がClass 3 DSCを取得する必要があります。外国人取締役はパスポートを身分証明書として使用し、認定認証局(Certifying Authority)から取得します。取得には通常3〜5営業日を要します。
DIN(Director Identification Number)の取得
DINはSPICe+フォーム内で同時申請が可能です。最大3名分のDINを一度に取得できます。
RBI(インド準備銀行)への報告義務
外国企業がインドに子会社を設立する場合、以下のRBI報告が必要です。
FC-GPR(Foreign Currency – Gross Provisional Return)
外国からの出資金受領後30日以内にRBIへ報告する義務があります。AD銀行(Authorized Dealer Bank)を通じて提出します。
FCGPR(Annual Return on Foreign Liabilities and Assets)
毎年、外国資本に関する年次報告書をRBIに提出する義務があります。
食品事業特有の追加書類
食品関連事業を行う場合、追加で以下の書類・認証が必要です。
- FSSAI License:食品安全基準局のライセンス。Central License(輸入食品取扱い)の場合、申請から取得まで60〜90日
- Import Export Code(IEC):DGFT(Director General of Foreign Trade)から取得。食品を輸入する場合は必須
- 製品別の検査証明:一部食品は輸入時にCBIC(Central Board of Indirect Taxes and Customs)の検査を受ける必要あり
設立スケジュールの目安
- 準備期間(日本側書類準備):2〜4週間
- DSC取得:3〜5営業日
- SPICe+申請・承認:7〜15営業日
- 銀行口座開設:2〜4週間
- RBI報告:出資金受領後30日以内
- FSSAI認証取得(食品事業の場合):60〜90日
トータル所要期間:約2〜4ヶ月(書類準備から事業開始まで)
参考情報:
- LegalWiz – Subsidiary Registration India: Guide, Docs, Fees
- Acclime – How to Incorporate a Subsidiary Company in India
日系企業が陥りやすい3つの落とし穴
1. アポスティーユの不備
日本で作成した書類のアポスティーユ(外務省認証)が不備だと、MCA申請が却下されます。事前に現地パートナーや法律事務所と要件を確認してください。
2. 取締役の居住要件
インドのPrivate Limited Companyは、最低1名のインド居住取締役が必要です。前年度にインドに182日以上居住した人物を取締役に選任する必要があるため、現地採用の人材確保も早期に検討すべきです。
3. 授権資本の設定ミス
授権資本を過小に設定すると、後の増資時に変更手続きと追加費用が発生します。将来の事業拡大を見据えた適切な設定が重要です。
まとめ:インド会社設立を確実に進めるために
インドでの会社設立は、SPICe+フォームの導入により手続き自体は簡素化されていますが、外国企業特有の書類要件(アポスティーユ、RBI報告等)への対応が重要です。
食品事業の場合はFSSAI認証の取得も並行して進める必要があるため、トータル2〜4ヶ月のスケジュールを見込んでおきましょう。インド市場への進出は、信頼できる現地パートナーや法律事務所との連携が成功の鍵です。文化ギャップを理解しつつ、着実に準備を進めてください。