中国で4万店超を展開するコンビニ最大手・美宜佳(Meiyijia)が、海外ブランド「Ohmee」としてベトナムに初上陸した。2026年3月にハノイ市内3カ所に出店し、マレーシアと並ぶ東南アジア初進出を果たした。ベトナムのコンビニ市場ではWinMart+が約4,500店で首位を独走するが、中国で培ったフランチャイズ拡大力と物流効率を武器に参入したOhmeeは、GS25やCircle Kとも直接競合することになる。
Ohmee――中国最大チェーンの海外ブランド
美宜佳は1997年に広東省で創業し、フランチャイズモデルで急拡大した中国最大のコンビニチェーンだ。2020年時点で約2万店だった店舗網は5年で倍増し、2025年半ばに4万店を突破。中国国内では7-ElevenやLawsonの店舗数を大幅に上回る。年間売上は約80.5億ドル(約1.2兆円)に達する。
海外展開では「Ohmee」という新ブランドを立ち上げ、ベトナムとマレーシアを第一弾に選んだ。中国ブランドのまま出すのではなく、現地向けに再設計した点が特徴だ。ハノイの3店舗は、Tran Kim Xuyen通り、Trieu Khuc通り、Vinhomes Smart Cityの3地点に位置する。
ベトナム・コンビニ市場の現状と競争環境
ベトナムのコンビニ・ミニスーパー市場は2025年末時点で約7,800店舗に拡大し、前年の7,362店から増加した。年率13%超の成長が2028年まで続くと予測されている。
最大手のWinMart+(Masan Group傘下)は約4,500店を持ち、2026年にはさらに1,000店を新規オープンする計画だ。韓国系のGS25は南部を中心に400店超、2027年までに700店を目指している。Circle Kはハノイだけで190店超を展開し、ホーチミン市周辺への拡大を続けている。日系のFamilyMartと7-Elevenも都市部で存在感を示す。
Ohmeeが参入するのは、この激戦のただ中だ。
ベトナム主要コンビニチェーン比較
| チェーン名 | 母体 | 店舗数(2025〜2026年) | 展開エリア | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| WinMart+ | Masan Group(ベトナム) | 約4,500店 | 全国 | 最大手、2026年に1,000店追加計画 |
| Circle K | Alimentation Couche-Tard(カナダ) | ハノイ190超+全国展開 | ハノイ・HCMC中心 | 24時間営業・都市型に強い |
| GS25 | GS Retail(韓国) | 400超(南部中心) | HCMC・南部 | 2027年に700店目標、北部拡大中 |
| FamilyMart | 伊藤忠商事(日本) | 約200店 | HCMC中心 | 日系ブランドの信頼感 |
| 7-Eleven | Seven & i(日本) | 約100店 | HCMC | 遅発参入、じわじわ拡大 |
| Ohmee(美宜佳) | 美宜佳(中国) | 3店(ハノイ) | ハノイ | 中国4万店の物流ノウハウ |
※ 為替は1ドル=約150円(2026年5月時点)で換算
現地・業界の反応
ベトナム小売業界のアナリストは「美宜佳の強みはフランチャイズ展開の速度と垂直統合型の物流だが、ベトナムの所得水準や都市構造は中国と異なる。ローカライゼーションの巧拙が成否を分ける」と指摘する。
ハノイの小売関係者は「WinMart+の1,000店追加計画がある中で、新規参入者がどれだけ商圏を確保できるかは未知数。ただし中国式の効率経営は脅威だ」と警戒感を示す。
消費者の初期反応としては、Vinhomes Smart City店を中心に「品揃えがCircle Kと似ているが、価格はやや安い印象」という声がSNSで見られる。ただしまだ3店舗のため、本格的な評価はこれからだ。
日本企業にとっての意味
Ohmeeの参入は、ベトナムのコンビニ市場に「中国発の大規模フランチャイズモデル」が持ち込まれることを意味する。FamilyMartや7-Elevenにとっては、WinMart+やCircle Kに加えて新たな競合が増えた形だ。
日本の食品メーカーやサプライヤーにとっては、Ohmeeが中国で実績のある自社PB商品をベトナムに持ち込む可能性がある点に注意が必要だ。中国産PB商品がベトナムのコンビニ棚を占めれば、日系メーカーの棚獲得競争はさらに厳しくなる。一方で、Ohmeeが現地調達を増やす段階で日本品質の食材・包材を売り込む余地もある。
コンビニ業界への波及
美宜佳のベトナム進出は3つの波及効果をもたらす。第一に、フランチャイズ加盟店の争奪。美宜佳の中国でのフランチャイズモデルは低投資・高回転で知られており、ベトナムの個人事業主にとって既存チェーンとの比較対象になる。第二に、PBサプライチェーンの変化。中国4万店の購買力を背景にした低コストPBが流入すれば、価格競争が激化する。第三に、Shopee×Meta連携のようなO2O(Online to Offline)機能をコンビニが取り込む流れの加速。Ohmeeが中国で実装済みのデジタル決済・ミニアプリ連携をベトナムに持ち込めば、業界全体のデジタル化が進む。
出店検討に使えるデータ
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| ベトナムのコンビニ・ミニスーパー総数 | 約7,800店(2025年末) | 業界統計 |
| 同セクター年間成長率 | 13%超(2023〜2028年予測) | 市場調査 |
| WinMart+ 2026年新規出店計画 | 1,000店(Q1で300店超オープン済) | Masan Group |
| 美宜佳の中国店舗数 | 4万店超(2025年半ば) | 企業発表 |
| 美宜佳の年間売上高 | 約80.5億ドル(約1.2兆円) | 業界推計 |
| コンビニ市場シェア(モダンリテール内) | 32.3%(2025年) | 業界統計 |
まとめ
中国4万店超を擁する美宜佳が「Ohmee」としてハノイに進出したことで、ベトナムのコンビニ戦争は新章に入った。WinMart+の1,000店追加、GS25の北部拡大、Circle Kの都市部深耕が同時進行する中、中国式フランチャイズの速度と効率が通用するかが焦点だ。MINISOのベトナム展開のように、中国発ブランドのアジア進出は加速しており、日系コンビニ・食品メーカーにとっては競合分析の優先度を上げるべきタイミングだ。
