三井化学や住友化学など日本の化学大手が、中国市場への依存から脱却し、インドへの戦略的シフトを加速させている。地政学リスクと中国市場の構造変化を受け、新たな生産・販売拠点としてインドへの投資計画が相次いで発表されている。
何が起きているのか
三井化学は、インドの太陽光パネル市場向けに使用されるポリオレフィンエラストマー(EVA)の現地生産を2030年までに開始することを目指している。同社はすでにグルガオンにコーティング技術センターを設立し、2027年までにポリオレフィン・ポリウレタン分散体のフルフォーミュレーション開発能力の確立を計画している。一方、住友化学は2024年4月に中国での大型液晶ディスプレイ偏光フィルム事業を現地メーカーに譲渡するなど、中国撤退を着々と進めている。インドに拠点を持つ日系企業数は2024年10月時点で1,434社に達し、前年比35社増となっている。
なぜこれが注目に値するのか
日本の化学メーカーがインドに注目する背景には、インド政府の「メイク・イン・インディア」政策による製造業誘致策の強化と、インドの太陽光発電市場の急拡大がある。インドは2030年までに再生可能エネルギー容量500GWを目標とし、太陽光パネルの国産化を推進しており、日系化学メーカーの素材・部材ニーズと合致している。また、中国での競争激化と価格下落圧力が日系企業の収益を直撃する中、インドでは日本製品へのブランド信頼性が高く、プレミアム価格での展開が可能だ。
日系企業が学べること
①インドの製造業政策(PLIスキームなど)を活用した補助金・税優遇の取得を検討する。②グルガオン・プネー・チェンナイなど日系企業集積地での技術センター設立から始めることで、リスクを抑えた段階的進出が可能。③インドの再生可能エネルギー・EV関連バリューチェーンへの参入は、素材・化学・部品メーカーにとって今が最大のチャンスといえる。まずはJETROのインド拠点や在インド日本大使館の情報を活用し、業界別の市場調査から始めることを推奨する。