三谷産業、ダクラク省で農産物深加工を検討——コーヒー殻・胡椒・カシューナッツから天然成分抽出

創業約100年の総合商社・三谷産業(金沢市)が、ベトナム中部高原ダクラク省で農産物の深加工事業を検討している。2026年5月、同社の三谷充特別顧問(前会長)がダクラク省人民委員会のド・フー・フイ主席およびグエン・ティエン・ヴァン副主席と会談し、コーヒー殻・胡椒・カシューナッツ殻から高付加価値の天然成分を抽出する構想を示した。

目次

三谷産業のダクラク省投資構想

三谷産業がダクラク省で検討する事業は大きく2軸ある。第1に、コーヒー殻・胡椒・カシューナッツ殻といった農産副産物から機能性食品向けの天然成分を抽出する深加工事業。第2に、IT・建築・建設分野の人材育成だ。三谷充特別顧問が直接ダクラク省幹部と会談したことから、グループ全体としての本気度がうかがえる。

ダクラク省側はこの提案に前向きな姿勢を示し、「農産副産物を再生可能資源に転換し、循環経済を推進する有効なアプローチだ」と評価した。排出削減・環境課題への対応・地域住民の収入向上にもつながるとして、技術移転を含む協力を提案している。

背景:三谷産業のベトナム事業30年の蓄積

三谷産業は1994年にベトナム事業を開始し、30年以上にわたって事業基盤を構築してきた。化学品、プラスチック・電子部品製造、IT・ソフトウェア開発、建設ソリューション、人材コンサルティングと、事業領域は多岐にわたる。ベトナム国内に7つの子会社と15拠点を展開し、約2,400人を雇用している。

一方、ダクラク省はベトナム最大のコーヒー産地として知られる。カシューナッツや胡椒の主要産地でもあり、これらの作物から発生する大量の副産物(殻・枝・葉など)は、従来ほとんど廃棄されてきた。三谷産業の化学品・天然成分抽出の知見と、ダクラク省の豊富な農産副産物は、補完性が高い。

三谷産業ベトナム事業の概要

項目内容
進出年1994年
子会社数7社
拠点数15カ所
従業員数約2,400人
主要事業化学品、プラスチック・電子部品、IT、建設、人材
ダクラク省検討事業農産副産物の天然成分抽出、人材育成
対象農産物コーヒー殻、胡椒、カシューナッツ殻

現地の反応

ダクラク省人民委員会 ド・フー・フイ主席は、三谷産業の農産加工技術と循環経済アプローチに期待を表明。省として先端加工技術の技術移転と、コーヒー・胡椒・カシューナッツなど主要農産物の付加価値向上に向けた協力を提案した。

グエン・ティエン・ヴァン副主席は、農産副産物を再生可能資源へ転換する取り組みを「排出削減と地域住民の収入向上を同時に実現するアプローチ」と評価し、歓迎の意を示した。

地元農業関係者の間では、コーヒー殻などの副産物に対価が付く可能性に関心が集まっている。ダクラク省のコーヒー生産量はベトナム全体の約3割を占め、発生する副産物量も膨大だ。

日本企業のベトナム進出視点での影響

三谷産業の動きは、ベトナムにおける日系企業の投資トレンドに2つの示唆を与える。第1に、「製造拠点」から「高付加価値加工拠点」への転換だ。従来のベトナム進出は安価な労働力を活かした組立製造が主流だったが、三谷産業は農産副産物の「廃棄物」から高付加価値成分を抽出するという、技術集約型の事業モデルを検討している。

第2に、中部高原という「第三の選択肢」の浮上だ。日系企業のベトナム進出はホーチミン・ハノイ周辺の工業団地に集中してきたが、原料産地に直結する地方への投資は、物流コスト削減と原料調達の安定化を同時に実現できる。極洋のベトナム水産加工工場のように、原料産地と生産拠点を近接させる戦略が加速している。

業界への波及効果

ベトナムの農産副産物活用は、国全体のアジェンダとして浮上しつつある。コーヒー産業だけでも年間数百万トンの殻・パルプが発生するが、大半は焼却か放置されてきた。三谷産業のような外資が天然成分抽出の技術を持ち込めば、バイオマス燃料、機能性食品原料、化粧品原料など複数の出口が開ける。

HOYAのベトナム新工場コクヨのThien Long買収など、日系企業のベトナム投資は製造業を中心に活発化しているが、農産加工・循環経済領域への本格参入は先行事例が少ない。三谷産業の検討が実現すれば、同業他社にとってのベンチマークとなる可能性が高い。

実用情報

項目詳細
企業名三谷産業株式会社(本社:石川県金沢市)
対象地域ダクラク省(ベトナム中部高原)
検討事業農産副産物からの天然成分抽出、IT・建築人材育成
ベトナム事業歴1994年〜(32年)
現地体制7子会社・15拠点・約2,400人
ダクラク省主要農産物コーヒー(全国生産量の約30%)、胡椒、カシューナッツ
投資額未公表(検討段階)

まとめ

三谷産業のダクラク省での農産物深加工検討は、「安い労働力」を求める従来型のベトナム進出とは異なる方向性を示している。30年かけて7子会社・2,400人体制を築いた同社だからこそ踏み込める領域であり、コーヒー殻やカシューナッツ殻という「廃棄物」を高付加価値原料に変える循環経済モデルは、省レベルの環境政策とも合致する。具体的な投資額やスケジュールは今後の発表を待つ必要があるが、農産加工×循環経済という切り口は、ベトナム進出を検討する日本企業にとって新たな参入モデルになり得る。

出典:The Investor

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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