米PepsiCoがベトナムに約4億ドル(約620億円)を投じ、2つの新工場を建設する。ロンアン省には3億ドル超(約465億円)規模の飲料工場、ハナム省には9,000万ドル(約139.5億円)の食品加工工場を配置し、いずれも再生可能エネルギーで稼働させる計画だ。合弁パートナーのサントリーペプシコベトナムビバレッジが運営を担う。
2工場の投資計画
ロンアン省の飲料工場は投資額3億ドル超で、年間生産能力は約8億リットル。精製水、ミルク飲料、その他の飲料を生産する。サントリーペプシコベトナムビバレッジが2023年7月にロンアン省人民委員会から投資証書を取得済みで、同社にとってアジア最大規模の工場となる見通しだ。
ハナム省の食品加工工場は投資額9,000万ドル。ズイティエン社のドンヴァンI拡張工業団地に立地し、敷地面積は80,000平方メートル。スナック菓子を年間23,000トン以上生産し、ベトナム国内とカンボジア市場に供給する。2023年12月に投資証書を取得し、2024年初頭に着工、2025年下期の完成を目指して建設が進む。
背景:PepsiCoのベトナム30年と拡大投資
PepsiCoがベトナムに進出したのは1994年。IBC International Beverages Companyとの合弁でPepsiと7 Upの生産を開始した。現在はホーチミン市、ドンナイ省、カントー市、バクニン省、クアンナム省の5カ所に工場を持ち、飲料と食品の両分野で事業を展開している。
今回の約4億ドルの追加投資は、ファム・ミン・チン首相と60社以上の米国企業代表団との会談で発表された。ベトナム政府がFDI誘致を加速するなかで、PepsiCoの大型投資は米越経済関係の象徴的な案件として位置付けられている。
両工場とも再生可能エネルギーで稼働する設計だ。PepsiCoはグローバルで「pep+(PepsiCo Positive)」戦略を掲げ、バリューチェーン全体のサステナビリティ転換を進めており、ベトナム新工場はその具体的実装となる。
投資の全体像
| 項目 | ロンアン省(飲料) | ハナム省(食品) |
|---|---|---|
| 投資額 | 3億ドル超(約465億円) | 9,000万ドル(約139.5億円) |
| 生産品目 | 精製水・ミルク飲料・その他飲料 | スナック菓子 |
| 年間生産能力 | 約8億リットル | 23,000トン以上 |
| 敷地面積 | 非公表 | 80,000㎡ |
| 立地 | ロンアン省 | ドンヴァンI拡張工業団地 |
| 供給市場 | ベトナム国内 | ベトナム+カンボジア |
| エネルギー | 再生可能エネルギー | 再生可能エネルギー |
| 投資証書 | 2023年7月取得 | 2023年12月取得 |
| 運営 | サントリーペプシコベトナムビバレッジ | PepsiCo |
現地の反応
ロンアン省当局は、サントリーペプシコの飲料工場が省内最大級のFDI案件の一つになると期待を示した。南部メコンデルタ地域のインフラ整備が進むなか、大型工場の誘致は周辺産業の集積を加速させる。
ハナム省の工業団地関係者は、PepsiCoの食品加工工場がドンヴァンI拡張工業団地の入居率向上に貢献するとコメント。スナック菓子の生産ラインは高度な自動化が見込まれ、現地のスマートファクトリー人材育成にもつながるとの見方がある。
ベトナム飲料業界では、年間8億リットルという生産能力がベトナム飲料市場の競争構図を変える可能性が指摘されている。ベトナムの清涼飲料市場は人口1億人・若年層の多さを背景に拡大が続いており、PepsiCoの大型投資は成長余地への強い確信を反映している。
日本企業のベトナム進出視点での影響
PepsiCoの4億ドル投資は、日本の食品・飲料メーカーにとって3つの示唆を持つ。第1に、サントリーとの合弁モデルだ。サントリーペプシコベトナムビバレッジはサントリーホールディングスとPepsiCoの合弁企業であり、日本企業が米国大手のグローバルブランド力とベトナムの製造インフラを同時に活用している好例だ。
第2に、ロンアン省とハナム省という「南北2拠点」戦略。北部は首都ハノイと中国向け陸路に近く、南部はホーチミン・メコンデルタの消費市場に直結する。極洋のベトナム水産加工工場もカマウ省(南部)に立地しており、南部への食品製造拠点集中は加速傾向にある。
第3に、再生可能エネルギーの標準化だ。PepsiCoの2工場が再エネ稼働する設計であることは、今後ベトナムに進出する食品メーカーにとって「グリーン工場」が差別化ではなく前提条件になることを示唆している。
業界への波及効果
ベトナムの食品・飲料セクターへの大型FDIは加速している。HOYAの約500億円投資はハイテク製造業だが、PepsiCoの動きは消費財製造でも同規模の投資が入り始めたことを意味する。ベトナムは人口1億人超の国内市場に加え、カンボジア・ラオスへのASEAN域内輸出拠点としての機能も期待されている。
PepsiCoの既存5工場に2工場が加わり計7工場体制になれば、ベトナムは同社にとってASEAN最大の生産拠点となる。この動きは、コカ・コーラやネスレなど競合の追加投資を誘発する可能性が高い。イオンモールの4施設一斉推進とあわせ、ベトナム消費市場への外資の関心は過去最高水準に達している。
実用情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 投資企業 | PepsiCo Inc.(米国)/ サントリーペプシコベトナムビバレッジ |
| 総投資額 | 約4億ドル(約620億円) |
| ベトナム進出年 | 1994年 |
| 既存工場 | 5カ所(ホーチミン市、ドンナイ省、カントー市、バクニン省、クアンナム省) |
| 新工場(飲料) | ロンアン省 / 3億ドル超 / 年間8億リットル |
| 新工場(食品) | ハナム省ドンヴァンI / 9,000万ドル / 年間23,000トン |
| エネルギー | 再生可能エネルギー(両工場) |
まとめ
PepsiCoの約4億ドル・2工場建設は、ベトナム食品・飲料セクターへの外資投資が新たなフェーズに入ったことを示す。1994年の進出から30年以上をかけて5工場体制を構築した同社が、一気に2工場を追加する判断の背景には、ベトナム1億人市場の成長性と、ASEAN域内輸出拠点としてのポテンシャルがある。日本企業にとっては、サントリーとの合弁モデル、南北2拠点戦略、再生可能エネルギーの標準化という3つの視点で注目すべき案件だ。
