Converseがベンガルールに国内最大店、靴を自分でつくる売り場へ

米スニーカーブランドのConverse(コンバース)が2026年6月19日、インド南部ベンガルールの大型商業施設「Phoenix Mall of Asia」に、インド国内で最大規模となる旗艦店を開いた。運営はインドでConverseのフランチャイズを担うBhaane Group(バーネ・グループ)。この店舗の目玉は、世界展開しているカスタマイズ・サービス「Converse By You(CBY)」がインドで初導入された点にある。

完成品の靴を棚から選ぶのではなく、来店客が自分の手でデザインを足していく売り場が、インドの主要都市に登場した。なぜスニーカーのカスタム体験がインドで「いま」始まったのか。そして、アパレル・履物・体験型物販でインド進出を考える日本企業にとって、この一店舗から読み取れる示唆は何か。順に見ていく。

目次

ベンガルールの最大店で何が始まったのか

新店はPhoenix Mall of Asiaの1階(ユニットG-11)に位置する。Converseは同店を「インド国内で最大の小売面積」と位置づけており、定番のChuck Taylor All StarやChuck 70に加え、新しいプロダクトラインを揃える。ただし売り場の性格は、商品を並べるだけの物販店とは異なる。スケートボード、アート、音楽、デザイン、ユース(若者)カルチャーを束ねた「文化的な空間」として設計されている点が、Converseの説明する狙いだ。

象徴的なのが、店内に設置された2つのアート作品である。1つはアーティストのAnsh Kumar氏による「Play for Peace」。LEDを仕込んだスケートボードを積み上げ、手曲げの鉄製フィギュアを組み合わせたインタラクティブなインスタレーションだ。もう1つはベンガルール拠点のBenson Diengdoh氏による大型ミューラル(壁画)で、地元のランドマークやストリートカルチャーをモチーフにしている。買い物の動線そのものを「見て・触れて・撮る」体験に作り替えているのがわかる。

「Converse By You」というカスタム体験の中身

今回インドに初上陸したConverse By Youは、来店客がConverseの靴を自分仕様に仕立てられるカスタマイズ・プラットフォームだ。キュレーションされたデザイン要素、限定パッチ、そして地域に着想を得たアートワークを組み合わせて、一足を「自分のもの」に変えていく。既製品を買う行為が、共創(co-creation)のプロセスに置き換わる仕組みである。

ここで重要なのは、カスタム機能を単なるオンライン上の選択ツールではなく、旗艦店という物理空間に組み込んだ点だ。世界で展開してきたCBYを、あえてインド最大の実店舗とセットで出すことで、Converseは「インドの若者は、出来合いの靴より自分で意味を足せる靴を選ぶ」という賭けに出ている。商品を売る場所から、ブランドと客が一緒に何かをつくる場所へ。その転換が、ベンガルールという都市で試されている。

なぜ「いま」「ベンガルール」だったのか

Converseはこれまで、ECと実店舗を組み合わせてインドでの存在感を段階的に広げてきた。ムンバイやチェンナイでの出店、コルカタのSouth City Mallへの進出も、いずれもBhaane Groupとのパートナーシップによるものだ。今回のベンガルール店は、その積み上げの上に置かれた「国内最大」という到達点にあたる。

立地にも意味がある。ベンガルールはインドのIT産業の中心地で、可処分所得の高い若年層が集積する都市だ。新しいモノやデジタル体験への感度が高く、カスタム靴のような「語れる買い物」が成立しやすい土壌がある。Converseが同じBhaane Groupとの運営でムンバイ・チェンナイ・コルカタと店舗網を広げてきた延長線上に、若年高所得層とモール立地がそろうベンガルールを「国内最大」の場所として選んだ流れは、ブランドの出店戦略として筋が通る。地場スペシャルティコーヒー二強が同市で拡大しているのと同様、完成品を安く買う段階から体験や自己表現にお金を払う段階へという消費の移行を、Converseの店づくりも前提にしていると読める。

確認できた事実の整理

本記事で裏取りできた一次的な事実を一覧にまとめる。面積・価格・店舗総数など、各ソースで明示されていない数値は意図的に記載していない。

項目 内容
店舗 Converse 旗艦店(インド国内最大の小売面積)
場所 Phoenix Mall of Asia 1階・ユニットG-11(ベンガルール)
開業日 2026年6月19日
運営パートナー Bhaane Group(インドでのConverseフランチャイズ運営)
新サービス Converse By You(カスタマイズ)をインド初導入
主力ライン Chuck Taylor All Star / Chuck 70 ほか
店内アート 「Play for Peace」(Ansh Kumar)/壁画(Benson Diengdoh)

※価格・面積・国内店舗数は複数ソースで確認できなかったため非掲載。円換算が必要な金額情報も今回は公表されていない(参考レートは1ルピー≒1.7円)。

現地の受け止めと課題

地元アーティスト2人を店内制作に起用した点は、現地での好意的な反応を呼びやすい。Ansh Kumar氏のLED作品「Play for Peace」もBenson Diengdoh氏の壁画も、ベンガルールのストリートカルチャーを取り込んでおり、外資ブランドでありながら「この街のための店」という印象を演出している。SNSで共有したくなる空間そのものが、広告費を使わずに来店動機をつくる装置になっている。

一方で、カスタム体験が話題先行で終わらず、実際の購買とリピートに結びつくかは、これから問われる。インドの履物市場は価格感度の高い層が依然として厚く、体験価値に対価を払う消費は都市部の一部にとどまる、という慎重な見方もある。Converseの賭けは、ベンガルールの若年層がその「一部」を十分な厚みで構成しているかどうかにかかっている。

日本企業への示唆:売り場を「つくる場所」に変える発想

インド進出を検討するアパレル・スニーカー・体験型物販の日本企業にとって、このConverse店から読み取れる実務的な論点は3つある。

1. 旗艦店は「広告」として設計する

ベンガルール店は、商品陳列より文化空間としての設計が前面に出ている。日本企業が同じ規模の出店をいきなり狙う必要はないが、1号店を「売上の場所」ではなく「ブランドを知ってもらい、SNSで拡散される場所」と割り切る発想は移植できる。ユニクロがプネーとバンガロールへ進出したように、まず都市の若年層が集まるモールで体験価値を打ち出すアプローチは、検討に値する。

2. カスタム・共創をローカライズの入り口にする

Converse By Youの肝は、地域に着想したアートワークやパッチを選べる点にある。これは「日本の製品をそのまま売る」のではなく、「インドの客が自分で意味を足せる余白を残す」という設計思想だ。日本のアパレルや雑貨でも、刺繍・名入れ・地域モチーフの選択といったカスタム要素を、現地の感性に合わせて用意することで、画一的な輸入品との差別化が図れる。

3. パートナー選定がチャネル設計を左右する

Converseはムンバイ・チェンナイ・コルカタ・ベンガルールと、一貫してBhaane Groupという同一パートナーで店舗網を広げてきた。複数都市での連続出店を、信頼できる現地運営パートナー1社に集約する形だ。インドは州ごとに商習慣や流通が異なるため、出店都市を増やすほど運営の標準化が効くパートナー構造が強みになる。日本企業も、単発の代理店契約ではなく、複数店舗を任せられる運営パートナーを早期に見極める視点が要る。

市場への波及:カスタム店が呼ぶ追随

インドでは大手小売が大量出店を続け、モールという受け皿の整備が進んでいる。その器が整うほど、外資ブランドは出店場所より「店で何を体験させるか」で差がつく段階に入る。Converseのカスタム店が数字を出せば、同じユースカルチャー領域のスポーツ・ストリート系ブランドが、カスタマイズやアート連動の店舗で追随する展開が考えられる。逆に伸び悩めば、インドの体験型小売はまだ早いという判断材料にもなる。ベンガルールの一店舗は、その試金石の位置にある。

よくある質問

Converse By Youでは具体的に何をカスタマイズできますか

キュレーションされたデザイン要素、限定パッチ、地域に着想を得たアートワークを組み合わせて、Converseの靴を自分仕様に仕立てられます。完成品を選ぶのではなく、来店客がデザインを足していく共創型のサービスです。なお価格は今回のソースでは公表されていません。

新店舗はどこにありますか

ベンガルールの大型商業施設Phoenix Mall of Asiaの1階(ユニットG-11)です。2026年6月19日に開業し、Converseが「インド国内で最大の小売面積」と位置づける旗艦店です。

日本企業がこの事例から学べる最大のポイントは何ですか

旗艦店を「売上の場所」ではなく「ブランド体験を伝え、SNSで拡散される広告」として設計し、現地の感性に合わせたカスタム・共創の余白を残すことです。あわせて、複数都市の出店を任せられる現地運営パートナーを早期に見極めることが、チャネル拡大の前提になります。

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引用元:

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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