NEWMEが1年で店舗倍増、Tier2都市を先に取る出店術

オンライン発のZ世代ファッションブランドNEWME(ニューミー)が2026年7月2日、グジャラート州バドダラに25店目を開いた。これで店舗は14都市25店に達し、同社は年内にさらに25店超を積み増すと表明した。狙う先はVizag(ヴィシャカパトナム)、Ludhiana、Bhopal、Agartala、Kolkataといった大都市ではない地方都市と、北東部の新興都市群だ。オンラインで立ち上がった若いブランドが、旗艦店を都心に構えるより先に地方へ面を張る。この順番の逆転は、インド市場で「まず一等地に1店」と考えがちな日本企業にとって、出店設計を見直す具体的な材料になる。

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バドダラ25店目、1年で店舗数を倍にする宣言

今回開いたのはバドダラ・アルカプリ地区の商業施設Kanha Capital。共同創業者兼CEOのSumit Jasoria氏は「25店目は単なる小売のマイルストーンではなく、インドのZ世代が新世代のファッションブランドを求めている証拠だ」とコメントした。店内はセルフィー向けのコーナーや創作文化を意識した体験区画を設け、単に服を並べる場ではなく「来て撮って共有する」場として設計されている。

注目すべきは規模ではなく速度と方向だ。25店から年内に25店超を足すとは、1年弱で店舗数を実質倍にする計画である。しかもその増分の多くが、外資や大手が後回しにしがちな地方都市に向かう。

「データとテック企業が服を売る」という自己定義

NEWMEは2022年6月に、Sumit Jasoria氏らZ世代向けの服の空白に目をつけた4人の共同創業者によって立ち上がった。同社は自らを「ファッション企業でもD2C企業でもなく、服を売るデータ・テック企業」と位置づける。実際、毎週500以上の新デザインを金曜に投入し、プラットフォーム上には常時1万2000以上のスタイルが並ぶ。SNSで見た服を最短で手に入れたいという需要を、投入点数と回転速度で取りにいく設計だ。

この高速回転を実店舗とつなぐのがクイックコマース「NewMe Zip」である。2025年初頭にベンガルールで始まり、60分以内配送をうたう。デリーではクイックコマース経由の注文が1日の約2割を占めるという。オンラインの即時性を店舗網と束ねる、この「面と速度」の二重構造が同社の核にある。

3年で売上18億ルピー、その伸び方を数字で見る

成長の勢いは決算にも表れている。NEWMEの売上はFY23(2022〜23年度)の3.42 crore(3420万ルピー)から、FY24に61.1 crore(6億1100万ルピー)、そしてFY25には180 crore(18億ルピー・速報かつ未監査)へと駆け上がった。crore(クロール)は1000万を指すインドの単位で、180 croreは18億ルピー。1インドルピーを約1.8円とすれば約32億円規模だが、為替は変動するため目安として捉えたい。

年度 売上 前年比の目安
FY23 3.42 crore(3420万ルピー)
FY24 61.1 crore(6億1100万ルピー) 約18倍
FY25(未監査) 180 crore(18億ルピー) 約3倍

資金面では累計3560万ドルを調達し、Accel Indiaが主導したシリーズAで1800万ドルを集めた。直近の評価額は約988 crore(98.8億ルピー・約1億1200万ドル)規模とされる。2030年には売上5000 crore(500億ルピー)、店舗100店、そしてIPOを見据えるという目標も掲げている。数字の桁が大きいだけに、crore(1000万)とlakh(10万)の読み違いには注意したいが、ここで示した売上・調達額はいずれも複数媒体で一致している。

現地・業界の受け止め

インドの小売業界メディアは、NEWMEを「4年足らずでデジタル発スタートアップから国内最速級のオムニチャネル・ファッションブランドへ成長した」と評する。ある業界紙は、同社がメトロだけでなくTier2・Tier3市場にも強い存在感を築いた点を成長の軸として挙げている。

店舗体験を巡る評価も好意的だ。各店が街ごとの空気を反映し、内装や撮影スポットを都市に合わせて変える手法は、Z世代を「集客の対象」ではなく「共に場をつくる参加者」として扱う姿勢として受け止められている。一方で、週500点超の投入と急速な店舗増を両立させる在庫・物流の負荷をどう捌くかは、同社が繰り返し問われている論点でもある。

日本企業への示唆──「旗艦1店」の前に問うべきこと

インド進出を検討する日本のブランドが最初に描きがちなのは、デリーやムンバイの一等地に旗艦店を1店構え、そこから徐々に広げる絵だ。NEWMEの動きはその常識を裏返す。同社はグジャラート州だけで4店(Surat2店、Ahmedabad1店、Vadodara1店)を持ち、次の増分をVizagやAgartala、北東部へ向ける。都心の家賃と競争が最も激しい場所で1店を磨くより、競合が薄い地方都市に面を先に張り、ブランド認知と配送網を同時に育てる設計だ。

ここから引き出せる具体的な一手は、「進出初手を一等地の旗艦店に置く前提を一度外す」ことだ。オンラインで需要データが取れる自社ブランドなら、まず検索・購入が集まる地方都市を特定し、そこに小型の体験店を置いて配送圏を作る順番が成立する。インドの地方都市攻略は本メディアでも繰り返し論点になっており、たとえばSnitchが地方都市を「データ網」に変える出店術や、Livpureが350平米未満の小型店を17店一斉に展開した事例は、NEWMEと同じく「小さく速く面を取る」思想で共通する。

クイックコマースが変える「棚の取り方」

NEWMEのもう一つの示唆は、店舗とクイックコマースを最初から一体で設計している点にある。60分配送のNewMe Zipは、店舗を在庫拠点兼配送起点として使う。実店舗を「売る場」だけでなく「その街に速く届けるための倉庫」として二役で回す発想だ。インドでは即配が服や家電まで飲み込みつつあり、アマゾンの数分配送が家電・服まで広げる動きと合わせて読むと、店舗網の意味が「集客装置」から「配送インフラ」へと移りつつあることが見えてくる。

日本のD2Cが地方都市に出るとき、店舗を単独の売上責任単位で見るのではなく、その街の即配圏を成立させる結節点として評価すれば、1店あたりの採算計算そのものが変わる。

実用情報・関連リンク

インドの地方都市で面を取る出店・配送戦略を検討する際は、業種の近い先行事例を横断して読むと設計の解像度が上がる。ファッション以外でも、地方都市を起点に全国展開へ向かう地場QSRの動き(グジャラート発Ajay’sの165店からの全国化)は、NEWMEのグジャラート集中と同じ「地元濃度を先に上げてから外へ」という順番を示している。自社ブランドで進出を狙うなら、まず対象都市のオンライン需要データと即配可能圏を重ねて、出店候補を絞り込むところから始めたい。

まとめ──次の一手

NEWMEが示したのは、「旗艦店を都心に1店」ではなく「地方都市に小さく速く面を張り、配送圏ごとブランドを育てる」という順序の逆転だ。インド進出を検討する日本企業がすぐ着手できる次のアクションは3つある。ひとつ、進出初手を一等地の旗艦店に固定せず、地方都市の候補を並べて検討する。ふたつ、自社ECの検索・購入データから需要の濃い地方都市を特定する。みっつ、店舗を「売り場」と「即配拠点」の二役で採算計算し直す。この3点を踏むだけで、インドでの1店目の置き方は大きく変わる。

参照元

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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