日本を代表する老舗百貨店・高島屋が、2026年中にハノイへの初出店を計画していることが明らかになった。2016年のホーチミン進出から10年——ベトナムの中間層拡大を背景に、同社は「8年ぶりの海外出店」に踏み切る。その狙いと日系企業への示唆を読み解く。
何が起きているのか
高島屋は2026年、ハノイ市内に新たな複合商業施設をオープンする計画だ。投資額は百貨店部分だけで約20億円(1,290万ドル)に上り、売り場面積は約1万平方メートルを予定。食品・化粧品・子供服を中心に日本人テナントの誘致も検討している。
同施設は商業ゾーンだけでなく、住宅・オフィス・商業の複合開発となっており、日常生活から高級消費まで一体的に取り込む設計だ。高島屋の村田善郎社長は「生活水準の向上に伴う日本製品の品質ニーズに応えたい」と語っており、ベトナムの富裕・中上流層を主要ターゲットに据えている。
同社のホーチミン店(2016年開業)はすでに約150の専門店を擁する一大商業拠点として定着。ベトナム事業の営業利益と配当収益を2027年2月期までに44億円へ倍増させる計画で、ハノイ出店はその核心施策となっている。
なぜこれが注目に値するのか
ハノイへの百貨店進出が特に注目される理由は、「ホーチミン中心だった日系小売の地図が塗り替わる」可能性を示しているからだ。ハノイは政治・外交の中心地であり、公務員・知識層・外資系ビジネスパーソンが多く居住。消費行動はホーチミンより保守的だが、ステータス消費への感度は高い。
競合環境も激化している。ロッテグループ(韓国)やイオンモール(日本)がすでにハノイに複数拠点を持つ中で、高島屋は「百貨店」という業態——つまり高品質・高級感・接客サービス——で差別化を図る戦略だ。
また、日本国内の百貨店業態が構造的な苦境に立たされている中、東南アジアへの経営資源シフトは業界全体のトレンドになりつつある。高島屋の決断は、「内需依存から脱却し、成長市場に賭ける」日本企業の新たな生存戦略を象徴している。
日系企業が学べること
- ホーチミン一極集中からハノイへの分散を検討する——日系企業の多くがホーチミンに偏在しているが、ハノイの中上流層市場は未開拓領域が多い。高島屋の進出を「アンカー」として活用し、テナント・連携・ブランド露出の機会を探ることができる。
- 「百貨店クオリティ」というブランド傘を活用する——高島屋ハノイ店にテナント出店することは、日本ブランドにとって現地での「品質保証ラベル」になり得る。特に食品・コスメ・子供服分野での出店機会を早期に打診する価値がある。
- 複合開発の住宅・オフィス住民を狙う——同施設の居住者・オフィスワーカーは購買力の高いターゲット層。BtoB(オフィス向けサービス・食材供給)とBtoC(日用品・食品)の両面でアプローチできる。