現地CEOを「共同創業者」に。GOPIZZAが韓流3ブランドで100店を狙う訳

韓国発のピザチェーンGOPIZZA(ゴーピザ)が、インド事業のトップを務めてきたMahesh Reddy氏を「共同創業者(Co-Founder)」に格上げした。同氏は2022年のブランド投入以来インドCEOとして指揮を執り、店舗を60超まで広げてきた人物だ。今回の肩書き変更と同時に打ち出されたのが、ピザのGOPIZZA・韓国屋台飯のGochujang・韓国デザートのDalkomiという3ブランドを1店舗に束ねる「3-in-1ハブ型」で、2026年度中に100店へ拡大するという計画である。単なる出店加速の話ではない。現地パートナーに実質的な経営権限を渡し、そこにブランドを束ねる設計を組み合わせるという、インド進出の「型」がここに現れている。日本の食品・外食ブランドがインドに出るとき、何を現地に渡し、何を本社に残すか——その判断材料として読み解きたい。

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起点:CEOを「共同創業者」に引き上げた意味

報道によれば、GOPIZZAの創業者Jay Lim(イ・ジェウォン)氏は、Mahesh Reddy氏の共同創業者就任について「彼がすでに築き上げてきたものすべてを反映した決断だ」と述べている。Reddy氏は食品・飲料業界で26年超の経験を持ち、2022年のインド本格投入からブランドを60店超へ育ててきた。CEOという「雇われ経営者」の肩書きから、事業の当事者を意味する「共同創業者」への変更は、単なる名誉職ではない。現地の意思決定スピードと、パートナー自身のコミットメントを同時に引き上げる狙いが透ける。Reddy氏自身は「インドの消費者に、韓国の食と文化をまとめて体験してもらいたい」と語っており、料理単品ではなく体験の束を売る発想が根底にある。

背景:韓流フードがインドで伸びている

この一手の追い風になっているのが、インドで進む韓国食のブーム(Kフード)だ。ある調査では、麺類をはじめとする韓国系食品のインド国内の流通額が、FY20の150万ドル規模からFY24には1,200万ドル規模へと数年で大きく伸びたとされる。牽引役はKドラマとKポップで、俳優がラーメンやビビンバ、屋台飯を食べる場面を見た若い層が、そのまま実店舗の需要に転じている。写真映えするビジュアルがSNSと相性が良く、デリバリーにも乗せやすい点も普及を後押しした。GOPIZZAがピザだけでなく屋台飯とデザートを揃えるのは、この「韓国=総合的な食文化」という消費者の期待に、店舗の品揃えで正面から応える構えといえる。

データ:GOPIZZAの規模と今回の計画

今回の計画で押さえるべき数字を、確認できた範囲で整理する。

項目 内容
インド現在店舗数 60店超(ベンガルール・ハイデラバード・チェンナイ中心)
目標店舗数 2026年度中に100店(3ブランド統合型)
ブランド構成 GOPIZZA(ピザ)/Gochujang(韓国屋台飯)/Dalkomi(韓国デザート)
拡大手法 マスターフランチャイズ方式
次の重点都市 デリーNCR・プネ・アーメダバード
インド参入 2019年(グローバルでは1,000店超を展開)

グローバルでは韓国・シンガポール・タイ・インドネシアなどで1,000店を超え、インドは同社にとって主要市場のひとつと位置づけられている。金額ベースの投資額や個別ブランドの売上は今回の発表では明示されていないため、本稿では推測を避け、公表された店舗数と手法のみを扱う。

業界の受け止め

外食業界の見方は、おおむね次の3方向に分かれる。第一に、韓国食は「専門店だけのもの」から、カフェ・クラウドキッチン・フードコートへと広がる段階に入っており、GOPIZZAの多ブランド化はこの流れに沿うという評価。第二に、既存のピザ店内にデザートや屋台飯を同居させる方式は、1店舗あたりの客単価と来店頻度を押し上げやすいという実利面への注目。第三に、拡大をマスターフランチャイズに委ねる以上、味と体験の均質性をどう保つかが問われるという慎重論だ。GOPIZZAが本国で使うAI搭載オーブン「Goven」など、調理を標準化する仕組みを持つ点は、この均質性への一つの答えとして受け止められている。

日本の食品・外食ブランドへの示唆

この事例からインド進出を検討する日本企業が持ち帰れる具体策は、大きく二つに絞れる。

一つ目は「現地トップへの権限移譲を、肩書きで可視化する」こと。日本企業のインド法人は、本社が意思決定を握り、現地代表が実行部隊にとどまる形になりがちだ。GOPIZZAはCEOを共同創業者へ引き上げることで、現地の裁量とコミットを同時に強めた。出店ペースが勝負を分けるインド市場では、現地に「決めさせる」設計そのものが競争力になる。飲料でカルピスがインド初上陸を果たした際、アサヒが自社工場を建てず現地体制を活用した判断も、同じ「何を本社に残さないか」という問いの延長線上にある。

二つ目は「単品ではなく体験の束で棚を取る」こと。日本の食品ブランドがインドに単品で入っても、Kフードのような文化的な文脈を背負えなければ想起されにくい。GOPIZZAは韓国という一つの文化圏を、食事・軽食・デザートの3ブランドで丸ごと差し出している。日本食であれば、たとえば主菜・甘味・飲料を一つの「日本体験」として設計し直せるかが問われる。タイ料理のミシュラン店がハイデラバードのようなIT都市に単独で出て文脈ごと売る動きも、同じ発想の変奏だ。

市場への波及

3-in-1ハブ型が機能すれば、インドの外食に「一店舗で一つの国の食文化を完結させる」という業態が定着していく可能性がある。実際、ムンバイでは東南アジア6カ国の屋台料理を1店に束ねる動きも出ており、地域や国をテーマに品揃えを設計する店舗は増えている。この潮流は、日本ブランドが単独で戦うのではなく、日本食全体を一つの体験パッケージとして共同で打ち出す余地があることを示す。マスターフランチャイズという現地資本を巻き込む手法が広がれば、進出時の初期投資を抑えつつ拡大速度を確保する道も現実味を帯びる。

実用情報・関連リンク

GOPIZZAの次の重点都市はデリーNCR・プネ・アーメダバードとされ、いずれも若年層の可処分所得とデリバリー網が伸びる市場だ。日本ブランドが同種の多ブランド・体験束ね型を検討するなら、まずは1都市・1旗艦店で「日本食の束」を試し、フランチャイズ拡大は標準化の仕組みが整ってからという順序が現実的だろう。インドでの出店戦略・現地パートナー活用については、以下の関連記事も参考になる。

まとめ:次の一手

GOPIZZAの動きが日本企業に突きつけるのは、「インドの現地トップに、どこまで本気で任せるか」という問いだ。次のアクションは三つ。第一に、自社のインド代表に肩書きと裁量をどう与えるかを、進出設計の初期段階で決める。第二に、自社の商品を単品でなく「日本の食体験」として束ね直せないかを棚卸しする。第三に、拡大手法をマスターフランチャイズに委ねる前提で、味と接客を標準化する仕組み(マニュアル・調理の自動化・研修)を先に用意する。この3点を出店計画に織り込めるかが、韓流ブランドが先行するインド外食市場で日本ブランドが遅れを取らないための分岐点になる。

参照元

この記事を書いた人

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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