ケララ州を本拠とするインドのベビー用品チェーン「Popees Baby Care(ポピーズ・ベビーケア)」が、2026年6月19日にチャンディーガルへ北インド初の店舗を開いた。場所はSCO 7, Sector 30-D, Main Market。チャンディーガル市長サウラブ・ジョシ氏が開店式に立ち会い、この店が世界109店目の節目になった。地味なニュースに見えるかもしれないが、ここには「インドの地場チェーンがどうやって面で広がっていくのか」という設計図が詰まっている。インド市場でベビー・キッズ、あるいは生活消費財を売ろうとする日系企業にとって、進出の順番と立地の選び方を学べる素材だ。
北インドへの第一歩、続く三都市
Popeesはチャンディーガルを「北インドへの入り口」と位置づけている。会長兼マネージングディレクターのShaju Thomas氏は開店に際し「チャンディーガルは戦略的に重要な市場であり、北インドへの理想的なゲートウェイだ」とコメントしている。チャンディーガル・モハリ・パンチクラからなるトライシティ圏を当面の商圏とみなし、ここを橋頭堡にする構えだ。
同社は続けてジラクプル(Zirakpur)、カルナール(Karnal)、ヤムナーナガル(Yamuna Nagar)への出店を予定していると公表した。いずれもチャンディーガルから車で動ける距離にある中規模都市で、州都クラスの大都市ではない。最初に拠点都市へ1店を置き、そこから周辺の地方都市へ点を増やしていく。地場チェーンの広がり方の典型がそのまま現れている。
創業2003年、ケララから全国・中東へ
Popeesは2003年創業。新生児用品、0〜4歳向けのベビー服、竹素材(バンブー)由来の衣類・ケア用品、紙おむつ、おしりふき、シャンプー、入浴用品、オーガニックのベビーケア商品、そして幅広い育児小物を扱う。同社は1製品あたり28項目の品質チェックを掲げ、品質・着心地・手頃さの組み合わせで親世代の支持を集めてきたとしている。販売網はインド国内に加え中東にも及ぶ。
ケララという南端の州から出発し、20年あまりで100店超まで広げ、そのうえで今回ようやく北インドに足を踏み入れた。南で密度を作り、横へ伸ばし、最後に飛び地へ跳ぶ。じっくり面を埋めてから新地域へ移るこの順序は、後述する日系企業の進出設計にそのまま響いてくる。
市場の追い風、ベビー用品と地方都市
Popeesの北上は、インドの育児関連市場と地方消費の伸びという二つの追い風の上に乗っている。調査会社の推計では、インドのベビーケア用品市場は2026年に55.7億ドル規模で、2031年には97.2億ドルへ、年率11.78%で拡大するとされる。キッズアパレルも調査会社により幅はあるが、2025年で110億〜225億ドル規模と見積もられ、いずれも右肩上がりだ。子ども一人あたりにかける支出が増え、ブランド品への意識が高まっていることが背景にある。
もう一つの追い風が地方都市の購買力だ。複数の小売レポートは、2024年の新規出店のうち64%がTier2・Tier3都市に集中したと指摘する。インドール、スーラト、ジャイプール、パトナー、ランチー、ブバネーシュワル、コインバトールといった中堅都市で、都市化と所得上昇、ブランド志向が同時に進んでいる。ある不動産系レポートは、Tier2・Tier3都市が2030年までに約1億人の新規消費者を組織的小売へ取り込むと見込む。地方こそが伸びしろ、という見立てが業界の共通認識になりつつある。
業界が見る「地方が主戦場」という潮目
Popees単独の動きではなく、インド小売全体が地方へ重心を移している。第一に、不動産サービス各社のレポートは、Tier2・Tier3都市で2029年までに2,500万平方フィート超の新規商業床が供給されると予測する。第二に、その供給の44%を北インドが占め、ルディヤーナー・ジャイプール・ラクナウが牽引するという。チャンディーガル周辺はちょうどこの北インド供給増の中心圏にあたり、Popeesの立地選択は床供給のトレンドと噛み合っている。
第三に、業界誌は「Tier2都市が新しいフロンティアになり、メトロが伸び悩む一方で地方が成長を主導する」という構図を繰り返し報じている。2020年以降、Tier2市場が加えたグレードA級の優良商業床はTier1の3倍超に達したとの分析もある。受け皿となるモールが地方に整い、そこへ地場ブランドも外資も同時に入ってくる。Popeesのチャンディーガル出店は、この潮目を象徴する一例として読める。
日系企業への示唆 ── Tier2-3をどう攻めるか
ここがこのニュースの肝だ。Popeesの動き方を分解すると、日系企業がインドの地方市場を攻めるときの手順が見えてくる。
第一に、いきなり全国ではなく「拠点都市→周辺の地方都市」という順序を踏むこと。Popeesはチャンディーガルという拠点を先に押さえ、そこからジラクプル・カルナール・ヤムナーナガルへ点を足していく。商圏が地理的につながっているため、物流・人材・ブランド認知を共有しやすい。日系企業が「まずデリーかムンバイ、次に全国へ」と考えがちなところを、地域単位でクラスターを作る発想に切り替えると、投資効率が大きく変わる。
第二に、価格帯と商品設計を地方の所得水準に合わせること。Popeesの訴求軸は高級路線ではなく「品質・着心地・手頃さ」だ。地方都市の消費者は確かにブランドを求め始めているが、その中身は「身の丈に合う安心感」であって、必ずしもプレミアムではない。日系企業が日本の中価格帯をそのまま持ち込むと地方では割高になりやすい。現地の可処分所得に合わせた商品ラインを別に設計する必要がある。
第三に、物理店舗とECを組み合わせること。あるレポートは、地方浸透のための実店舗と堅実なオンライン網を統合したオムニチャネル戦略が、顧客獲得コストを15%超下げ得ると指摘する。ベビー用品のように「実物を見て触れて選びたい」カテゴリーでは、地方の小型店が信頼の入り口になり、ECがリピート購入を支える。日系企業がインドの地方を狙うなら、店舗単体でもEC単体でもなく、両者の役割分担を前提に設計すべきだ。
小売市場全体への波及
Popeesのような地場チェーンが地方都市へ広がると、その都市の小売生態系そのものが厚くなる。一つの専門店が入ると、同じ商圏に競合や周辺カテゴリーの店が呼び込まれ、消費者の「ここで買える」期待値が底上げされる。育児用品という生活密着カテゴリーが地方に根づくことは、その都市が組織的小売を受け入れる成熟度を上げ、後続のブランドが入りやすい土壌を作る。
日系企業にとっての意味は二つある。一つは、地場チェーンが先に地方を耕してくれることで、後から入る側のリスクが下がること。もう一つは、その地方で先に信頼を築いた地場ブランドが手強い競合になり得ること。地方は「空白だから簡単」ではなく、地元の信頼を持つプレイヤーが先行している前提で攻める必要がある。Popeesの北上は、地方市場が空白から競争の場へ変わりつつある合図でもある。
進出視点での実用的な学び
このニュースから持ち帰れる実務ポイントを整理する。
立地は「拠点都市の中心商業地区」から。Popeesはチャンディーガルの目抜き通り(Main Market, Sector 30-D)を選んだ。地方であっても、まずは人通りと認知の取れる中心地で旗を立て、そこから周辺へ広げる。郊外や未成熟な立地から始めない。
展開は地理クラスター単位で。チャンディーガル→ジラクプル→カルナール→ヤムナーナガルのように、移動可能圏でまとめて出すと、サプライチェーンと販促を共有できる。出店計画を「都市リスト」ではなく「地域の塊」で描くこと。
そして、地方の購買力を過小評価も過大評価もしないこと。Tier2・Tier3は確かに伸びるが、伸び方は「手頃なブランド品」への需要であって高級品の一足飛びではない。市場規模の数字は調査会社ごとに幅があるため、特定の予測を鵜呑みにせず、自社カテゴリーの実需を現地で確かめてから投資判断に落とすのが安全だ。
まとめ
Popees Baby Careのチャンディーガル出店は、世界109店目という数字以上に、インドの地場チェーンが地方都市から面を広げていく手順を見せてくれる。拠点都市を押さえ、周辺の中堅都市へクラスターで伸ばし、手頃な価格帯と店舗・ECの組み合わせで地方の信頼を取りにいく。インドのTier2・Tier3を狙う日系企業にとって、これは新規参入の順序設計と価格戦略を見直す格好の教材になる。地方はもう空白地ではない。先行者が土壌を耕し終える前に、自社の攻め方を地域単位で描けるかどうかが問われている。
よくある質問
Popees Baby Careはどんな企業ですか
2003年にインド・ケララ州で創業したベビー用品チェーンです。新生児用品、0〜4歳向けのベビー服、竹素材の衣類、おむつ、入浴・ケア用品などを扱い、インド国内と中東で店舗を展開しています。チャンディーガル店が世界109店目にあたります。
なぜチャンディーガルが最初の北インド出店先なのですか
同社はチャンディーガルを北インドへの入り口と位置づけ、チャンディーガル・モハリ・パンチクラからなるトライシティ圏を商圏とみています。続いてジラクプル、カルナール、ヤムナーナガルへの出店を予定しており、拠点都市を起点に周辺の地方都市へ広げる狙いです。
日系企業がこの事例から学べることは何ですか
拠点都市から地理的にまとまった地方都市へクラスターで広げる出店順序、地方の所得に合わせた手頃な価格帯の商品設計、そして実店舗とECを組み合わせたオムニチャネルの3点です。インドのTier2・Tier3市場を、空白地ではなく地場競合が先行する前提で攻める視点が重要になります。
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引用元:
- LatestLY: Popees Baby Care Enters North India with First Store in Chandigarh
- Big News Network: Popees Baby Care Enters North India
- Chandigarh City News: Popees Enters North India with 1st Chandigarh Store
- Mordor Intelligence: India Baby Care Products Market
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