松屋がベトナムで3店舗まで急拡大——コムタムをメニュー化した「現地化戦略」の全貌

牛丼チェーン「松屋」が2024年11月にホーチミンへ初上陸してから1年余り——すでに3店舗を展開し、2027年までに100店舗以上を目指す急拡大ぶりに、日系外食業界から熱い視線が注がれている。その成功の鍵は「日本らしさを保ちながらも、ベトナムの食文化を取り込む」メニュー戦略にある。

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何が起きているのか

松屋フーズは2024年11月、ホーチミン1区のmPlazaサイゴンにASEAN初出店。12月には2号店(Bình Thạnh区)、2025年6月には日本人街の中心地・Saigon Sky Gardenに24時間営業の3号店をオープンした。2025年中に計4店舗、2027年までに10店舗、最終的には100〜1,000店舗規模を目指すという大胆な計画だ。

注目すべきは、単なる日本食の輸出にとどまらない点だ。松屋ベトナムは「コムタム(Cơm tấm)風ポークライス」を独自メニューとして投入。ベトナムを代表する「砕き米に炭火焼き豚肉+ヌックマム」という組み合わせを、松屋流にアレンジして提供している。ベトナム人客が自国の味に親しみを感じながら、日本の調理技術と品質を体験できる構成だ。

なぜこれが注目に値するのか

ベトナムでは「ハノイやホーチミンの人はコムタムを毎日食べる」と言われるほどの国民食。そこに日本のファストフードチェーンが切り込んだのは、単なる「異文化コラボ」ではなく、現地化(ローカリゼーション)の本質を突いた戦略だ。

また、出店場所の選定も巧みだ。1号店はビジネス街のオフィスワーカー、2号店は住宅街のファミリー層、3号店は日本人駐在員コミュニティと、ターゲットを分散させながら着実にブランド認知を広げている。ホーチミン在住の日本人からは「牛めしの味は日本とほぼ同じ」「調味料コーナーが面白い」と好評で、現地の若者にも「新しい体験」として受け入れられている。

日系企業が学べること

松屋の事例から得られる教訓は3つある。

  • 核心は守り、周辺で現地化する——牛めしの品質・価格設定は日本水準を維持しつつ、ローカルメニューを追加することで「日本の本物感」と「親近感」を両立させた。
  • エリア特性に合わせた出店戦略——1店舗目でブランドイメージを確立し、以降は異なるターゲット層にリーチする立地を選ぶ「ゾーニング戦略」が効果的だ。
  • 長期視点での100店舗計画——短期黒字より市場シェア獲得を優先し、2027年10店舗→最終100〜1,000店舗という明確なロードマップを持つことで、投資家・パートナーへの説明力が生まれる。

飲食・小売業でベトナム進出を検討している企業にとって、松屋の「ハイブリッド現地化」モデルは最も参考になる成功事例の一つだ。

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この記事を書いた人

株式会社 SoJapanのアバター 株式会社 SoJapan 代表取締役

大手総合商社にて約8年間、グループ子会社の経営改革や出資先スタートアップとのJV設立を担当。その後インド駐在として、日系大手飲食チェーンのインド展開に従事し、現地に合わせたメニュー開発やマーケティングを推進。

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